視覚 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その155)

更新日

投稿日

技術マネジメント

 

私が好きなNHK BSの番組に「中井精也の絶景!てつたび」があります。この番組は、中井さんという写真家が日本中や時に海外を旅して、ローカル線の鉄道の写真を撮る番組です。この番組でいつも感心するのが、動いている鉄道車両を自然などを背景に撮影するのですが、いずれの写真もその構図や色彩の組み合わせがすばらしく感動的なのです。

 

現在、イノベーション実現に向けての「思考の頻度を高める方法」を解説していますが、そのための2つ目の要素「同じ一つの行動をするにしても思考の頻度を増やす」さらにはその中の3つの視点の内、前回は、味覚についてでした。今回は視覚を対象とします。

【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その154)へのリンク】

◆関連解説記事 行動を起こすことで得られるのは、情報や経験だけでなく、そのコンテキストや新たな感覚・感情や充実感

 

11.視覚は最も活用されている感覚

(1)なぜ写真家は数少ないシャッターチャンスを捉え、感動的な写真がとれるのか?

中井さんの話に戻ると、鉄道車両は常に動いていて、また刻々移り行く自然(雲の動きや日照)を背景としていて、またローカル線なので本数も限られているため、多くの場合撮影のために与えられた時間の中では撮影の瞬間は2度と決ません。しかし、その瞬間を切り取り、感動を生み出す鉄道写真を撮るのです。なぜ中井さんはそれができるのでしょうか?

 

中井さんは、どういう構図で撮るのかを含め、撮る写真をそれが実際の写真の画像として物理的に生まれる前に(鉄道車両が実際にその場に登場する前に)、頭の中で事前に明確に再現できているはずです。なぜ中井さんにはそれができるのでしょうか?

 

(2)3つの要因

これは私の想像ですが、中井さんは、人に感動を与えるまた自分が感動する鉄道写真がどういうものが感覚として持っている(写真理論は当然のこと)。その感覚を生み出すために、過去の観察から得た膨大な鉄道車両や周りの風景・環境のイメージを、頭(心?)の中に持っている。また、その膨大な鉄道車両や周りの風景・環境のイメージを材料に、事前に頭の中でバーチャルな映像を作り上げることができる。つまり、まだ現実に存在していないものを、事前に頭の中で映像の形で思考し再構成しているのです。

 

実は、これらは中井さんのような写真家でなくても、普通の人も日常生活の中で、多かれ少なかれ実際に行っていることです。しかし、創造的な人たちは、このような能力、すなわち頭の中で映像的に発想し、それをシミ...

技術マネジメント

 

私が好きなNHK BSの番組に「中井精也の絶景!てつたび」があります。この番組は、中井さんという写真家が日本中や時に海外を旅して、ローカル線の鉄道の写真を撮る番組です。この番組でいつも感心するのが、動いている鉄道車両を自然などを背景に撮影するのですが、いずれの写真もその構図や色彩の組み合わせがすばらしく感動的なのです。

 

現在、イノベーション実現に向けての「思考の頻度を高める方法」を解説していますが、そのための2つ目の要素「同じ一つの行動をするにしても思考の頻度を増やす」さらにはその中の3つの視点の内、前回は、味覚についてでした。今回は視覚を対象とします。

【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その154)へのリンク】

◆関連解説記事 行動を起こすことで得られるのは、情報や経験だけでなく、そのコンテキストや新たな感覚・感情や充実感

 

11.視覚は最も活用されている感覚

(1)なぜ写真家は数少ないシャッターチャンスを捉え、感動的な写真がとれるのか?

中井さんの話に戻ると、鉄道車両は常に動いていて、また刻々移り行く自然(雲の動きや日照)を背景としていて、またローカル線なので本数も限られているため、多くの場合撮影のために与えられた時間の中では撮影の瞬間は2度と決ません。しかし、その瞬間を切り取り、感動を生み出す鉄道写真を撮るのです。なぜ中井さんはそれができるのでしょうか?

 

中井さんは、どういう構図で撮るのかを含め、撮る写真をそれが実際の写真の画像として物理的に生まれる前に(鉄道車両が実際にその場に登場する前に)、頭の中で事前に明確に再現できているはずです。なぜ中井さんにはそれができるのでしょうか?

 

(2)3つの要因

これは私の想像ですが、中井さんは、人に感動を与えるまた自分が感動する鉄道写真がどういうものが感覚として持っている(写真理論は当然のこと)。その感覚を生み出すために、過去の観察から得た膨大な鉄道車両や周りの風景・環境のイメージを、頭(心?)の中に持っている。また、その膨大な鉄道車両や周りの風景・環境のイメージを材料に、事前に頭の中でバーチャルな映像を作り上げることができる。つまり、まだ現実に存在していないものを、事前に頭の中で映像の形で思考し再構成しているのです。

 

実は、これらは中井さんのような写真家でなくても、普通の人も日常生活の中で、多かれ少なかれ実際に行っていることです。しかし、創造的な人たちは、このような能力、すなわち頭の中で映像的に発想し、それをシミュレーションをする能力に長けていると考えられます。

 

(3)これら能力は先天的か、後天的か

これら能力が先天的なものなのか、後天的なものなのかについては、確かに先天的な部分もかなりあると思います。しかし、人間である以上誰でもこのような能力はある程度は必ず「先天的」に持っていて、かつ後天的にこのような能力を活用することで、大いに創造性を高めることができるように思えます。

 

次回から後天的に視覚を使って、創造性を高める方法について解説します。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
AIを活用する前に決めておくべきこととは 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その16)

        今回は「AI技術を活用する前に決めておくべきこと」について解説します。以前、記事にした「トレ...

        今回は「AI技術を活用する前に決めておくべきこと」について解説します。以前、記事にした「トレ...


「期」について 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その64)

 今回も、前回に引き続き、「思い付く」ための「知識・経験を整理するフレームワーク」の中の、知識・経験を時系列で整理する「期」ついて解説します。 ◆関...

 今回も、前回に引き続き、「思い付く」ための「知識・経験を整理するフレームワーク」の中の、知識・経験を時系列で整理する「期」ついて解説します。 ◆関...


「潜在ニーズを先取りできる社員を育てるには?」~技術企業の高収益化:実践的な技術戦略の立て方(その37)

【目次】 ▼さらに深く学ぶなら!「技術マネジメント」に関するセミナーはこちら! ▼さらに幅広く学ぶなら!「分野別のカリキュラム」に...

【目次】 ▼さらに深く学ぶなら!「技術マネジメント」に関するセミナーはこちら! ▼さらに幅広く学ぶなら!「分野別のカリキュラム」に...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
材料研究、最適化のワナと温故知新の事例

  1.  材料研究と最適化  材料研究の場合、「最適化」という言葉でモノを考えない方がいいでしょう。  若い人、時にはおじ...

  1.  材料研究と最適化  材料研究の場合、「最適化」という言葉でモノを考えない方がいいでしょう。  若い人、時にはおじ...


プロジェクトの進捗管理 プロジェクト管理の仕組み (その4)

 前回のその3プロジェクトの計画策定に続いて解説します。最後は、プロジェクトの監視と制御、そして、測定と分析です。まとめて進捗管理といっても問題ないと思い...

 前回のその3プロジェクトの計画策定に続いて解説します。最後は、プロジェクトの監視と制御、そして、測定と分析です。まとめて進捗管理といっても問題ないと思い...


擦り合わせ型と組み合わせ型、目指すべき開発体制とは(その3)

【目指すべき開発体制 連載目次】 目指すべき開発体制とは(その1)擦り合わせ型と組み合わせ型 目指すべき開発体制とは(その2)日本企業文化を引きず...

【目指すべき開発体制 連載目次】 目指すべき開発体制とは(その1)擦り合わせ型と組み合わせ型 目指すべき開発体制とは(その2)日本企業文化を引きず...