前回までは、知識や経験を時系列で整理するという話をしてきましたが、当然時系列以外の物理量という軸があります。今回からは「知識・経験を物理量で整理する」をテーマに、解説します。
1. イノベーションに結び付く物理量
ネットで調べると物理量とは、「物質系の物理的な性質・状態を表現する量。普通、一個の数値または一組の複数個の数値によって表され」とあります。ただし、ここでは物質系だけでなく、感覚や心理など非物質的なものも含めたものと、もう少し広く捉えたものとして議論していきたいと思います。
またその対象も、この連載の大きなテーマが「普通の組織をイノベーティブにする処方箋」ですので、もっぱらイノベーションに結び付く物理量を対象にすることとします。
2. イノベーションに結び付く物理量:3つの視点
イノベーションの定義は、このメルマガの連載を通じて、企業を対象として「今まで存在していない大きな顧客価値」と定義しています。私のセミナーにご参加いただいた経験のある方は、いつもセミナーの最初でご説明しているものです。
従って、市場側の話にしても、技術側の話にしても、イノベーションに結びつく物理量とは、大きな顧客価値、競争の回避(「今まで存在していない」に相当)に結び付くものとすることができます。
それに加え、このイノベーションの定義はコスト面の要素が入っていないので(すなわち大きなコスト低減をもたらすもの)、もう一つコスト低減を加え、大きな顧客価値、競争の回避、大きなコスト低減の3つに貢献する物理量と考えたいと思います。
3. 物理量が多い、少ないを議論するための対象の分割
物理量の多い、少ないで知識・経験を整理するには、複数の対象のセグメントを決めないといけません。そのためには切り口が必要です。切り口を考える上では、以下の2点を考える必要があります。
(1)「3つの視点」への貢献の物理量の大小
あるセグメントの物理量は大きいが、別のセグメントの物理量は小さい、あるセグメントの物理量はその中間といったようなものです。その物理量の差が際立つような切り口が適正な切り口となります。
例えば、市場での議論であれば、あるポイントについての困り具合の差などがあります。ある市場セグメントの人達はその点について大変困っている、別の市場セグメントの人達は全然困っていない、とったものです。この場合物...