市場を各グループ、セグメントに分割する 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その69)

更新日

投稿日

技術マネジメント

 前々回から「知識・経験を物理量で整理する」議論を始めていますが、今回も前回に引き続き「整理の為に考える要素」の解説をします。

1. 「知識・経験を物理量で整理する」ための4つの要素

  • 要素1:分析の対象の領域を定義する
  • 要素2:物理量の大小で対象をセグメントに分割
  • 要素3:選択する物理量は高収益を生み出す「3つの視点」(大きな顧客価値、競争の回避、大きなコスト低減)への貢献
  • 要素4:同じ水準の物理量でも、物理量をドライブする要因が異なればセグメントを分割する

 今回は市場についての情報・経験の整理を例に、もう少し具体的な解説をしたいと思います。

 前回上の「要素2:物理量の大小で対象をセグメントに分割」という解説をしましたが、まさにマーケティングの基本のSTP(Segmentation、Targeting、Positioning)の最初のセグメンテーションは、様々な市場の情報や知識を集めて、それを整理するために市場を各グループ、すなわちセグメントに分割する活動です。

2. クレイトン・クリステンセンのジョブ理論と市場セグメンテーション

 「イノベーションのジレンマ」で有名なハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセンは、市場セグメンテーションに関して、ジョブの視点を持ってセグメンテーションをしなければならないと言っています。

 2016年同教授は「ジョブ理論」を上梓し、本書は日本でも注目を浴びました。クリステンセンは、ミルクシェークを例に、ミルクシェークを買う顧客は、ジョブでセグメンテーションをすべきと主張しています。

 ジョブというとすぐにはピンと来ないかもしれませんが、彼は「全ての顧客は用事(ジョブ)を片付けるために製品を雇っている」という発想からこのような言葉を使っています。

 ミルクシェークの場合は、退屈しのぎという「ジョブ」を片付けるためにミルクシェークを「雇っている」(すなわち買っている)市場セグメントが存在するという説明がなされています。

 もちろんその他の、例えば喉の癒すジョブ、甘いものを摂取するジョブを雇うなど、他の市場セグメントも存在します。

3. 「ジョブ」と顧客価値

 クリステンセンの言うジョブは、私が言う顧客価値に相当します(私自身は「ジョブ」という言葉より、顧客価値の方がストレートに理解できると思うのですが。)そのために、「要素3:選択する物理量は高収益を生み出す「3つの視点」への貢献」の中で、「大きな顧客価値」をあげています。

 つまり、顧客が雇っているジョブ(自社が提供している顧客価値)によって市場をセグメンテーションするということです。

 ここで「大きな(顧客価値)」と言っている理由は、実はその製品で提供している顧客価値は大小複数あるため...

技術マネジメント

 前々回から「知識・経験を物理量で整理する」議論を始めていますが、今回も前回に引き続き「整理の為に考える要素」の解説をします。

1. 「知識・経験を物理量で整理する」ための4つの要素

  • 要素1:分析の対象の領域を定義する
  • 要素2:物理量の大小で対象をセグメントに分割
  • 要素3:選択する物理量は高収益を生み出す「3つの視点」(大きな顧客価値、競争の回避、大きなコスト低減)への貢献
  • 要素4:同じ水準の物理量でも、物理量をドライブする要因が異なればセグメントを分割する

 今回は市場についての情報・経験の整理を例に、もう少し具体的な解説をしたいと思います。

 前回上の「要素2:物理量の大小で対象をセグメントに分割」という解説をしましたが、まさにマーケティングの基本のSTP(Segmentation、Targeting、Positioning)の最初のセグメンテーションは、様々な市場の情報や知識を集めて、それを整理するために市場を各グループ、すなわちセグメントに分割する活動です。

2. クレイトン・クリステンセンのジョブ理論と市場セグメンテーション

 「イノベーションのジレンマ」で有名なハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセンは、市場セグメンテーションに関して、ジョブの視点を持ってセグメンテーションをしなければならないと言っています。

 2016年同教授は「ジョブ理論」を上梓し、本書は日本でも注目を浴びました。クリステンセンは、ミルクシェークを例に、ミルクシェークを買う顧客は、ジョブでセグメンテーションをすべきと主張しています。

 ジョブというとすぐにはピンと来ないかもしれませんが、彼は「全ての顧客は用事(ジョブ)を片付けるために製品を雇っている」という発想からこのような言葉を使っています。

 ミルクシェークの場合は、退屈しのぎという「ジョブ」を片付けるためにミルクシェークを「雇っている」(すなわち買っている)市場セグメントが存在するという説明がなされています。

 もちろんその他の、例えば喉の癒すジョブ、甘いものを摂取するジョブを雇うなど、他の市場セグメントも存在します。

3. 「ジョブ」と顧客価値

 クリステンセンの言うジョブは、私が言う顧客価値に相当します(私自身は「ジョブ」という言葉より、顧客価値の方がストレートに理解できると思うのですが。)そのために、「要素3:選択する物理量は高収益を生み出す「3つの視点」への貢献」の中で、「大きな顧客価値」をあげています。

 つまり、顧客が雇っているジョブ(自社が提供している顧客価値)によって市場をセグメンテーションするということです。

 ここで「大きな(顧客価値)」と言っている理由は、実はその製品で提供している顧客価値は大小複数あるためで、それら提供している顧客価値の中で中核の顧客価値を「大きな顧客価値」と定義しています。

 

4. 物理量をドライブする要因が異なればセグメントを分割

 それから「要素4:同じ水準の物理量でも、物理量をドライブする要因が異なればセグメントを分割する」という議論をしましたが、「退屈しのぎにミルクシェーク」を買う顧客の中には、長距離のドライブから生まれる退屈をしのぐために買う顧客もいれば、スマホを見るという退屈しのぎとの組み合わせで買う顧客もいるかもしれません。

 この場合は、これらの原因別に市場セグメントを更に分割して整理することは意味のあることです。

 次回に続きます。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
強みは未来志向で設定 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その46)

        前々回からKETICモデルのK(Knowledge)の知識の3つの要素の内、「自社の強み」を...

        前々回からKETICモデルのK(Knowledge)の知識の3つの要素の内、「自社の強み」を...


自社の存在価値 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その114)

  現在、知識や経験を整理するフレームワークとして、本質とそれ以外という区別があるという理解から、「本質とは何か」を解説しています。また、...

  現在、知識や経験を整理するフレームワークとして、本質とそれ以外という区別があるという理解から、「本質とは何か」を解説しています。また、...


テーマの評価 技術企業の高収益化:実践的な技術戦略の立て方(その7)

  ◆ もうかる理由は「重要技術」の抽出にある  今回は、儲(もう)かるための重要技術の抽出についてお話します。これを読んで頂くことで、...

  ◆ もうかる理由は「重要技術」の抽出にある  今回は、儲(もう)かるための重要技術の抽出についてお話します。これを読んで頂くことで、...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
仕組み見直しとグローバル化(その2)

◆「気づき」能力向上のカギは製品開発経験の活用    前回のその1に続いて解説します。「気づき」能力は、擦り合わせ型開発を行う上で技術者が備...

◆「気づき」能力向上のカギは製品開発経験の活用    前回のその1に続いて解説します。「気づき」能力は、擦り合わせ型開発を行う上で技術者が備...


プラント建設業者の効率的・効果的な探し方とは

        今回は、配管、土木建築、電気・計装、機器の設計を担当する設計業者に設計を注文する事例で、大型プラント建設に対応できるような業者を効率...

        今回は、配管、土木建築、電気・計装、機器の設計を担当する設計業者に設計を注文する事例で、大型プラント建設に対応できるような業者を効率...


システム設計1 プロジェクト管理の仕組み (その33)

 コンサルタントとして多くの開発現場に入ると、普段使っている単語、もしくは意味しているものが開発現場によって想像以上に違うことを実感します。たとえば、「レ...

 コンサルタントとして多くの開発現場に入ると、普段使っている単語、もしくは意味しているものが開発現場によって想像以上に違うことを実感します。たとえば、「レ...