現在イノベーションにおける行動の重要性を解説していますが、前回は行動を起こすことで得られる価値は、情報や経験だけでなく「そのコンテキストや新たな感覚・感情や充実感」をお話しました。その後、もう一つあるなと思い付き、今回はその解説をします。
4つ目の行動の価値として「積極的な行動により複数の対象物に触れる機会が増加し、イノベーションを誘発する」を付け加えたいと思います。以下にその追加の理由を含めて解説します。
【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その147)へのリンク】
1.共通するパターンと異なるパターンの同時発見の必要性
イノベーションのためのスパークを起こすには、経験したり触れたりする複数の対象物の底辺にある次の2点を同時に発見する必要があるのではないかと思います。
- (1)同じ一つのグループ内で共通するパターン
- (2)異なるグループ間での異なるパターン
(1)同じ一つのグループ内で共通するパターン
まずある一つのグループ内で、そこに共通するパターンを発見することが必要です。そのためパターンの発見は、一つの対象物だけに触れるだけでは絶対に発見することはできません。なぜならパターンとはそもそも複数の対象物に共通する事項のことを言うからです。(ここで言っている対象物とは、ものだけではなく、五感で感じる対象すべてを含むものです。)
対象物は様々な複数の特性を必ず持っています。一つの対象物しかない場合は、そのどの特性に目を付けなければ良いのかがわかりません。似たようなもの(同じグループの属するもの)に複数それも数多く触れる機会を持ち(すなわち積極的な行動により)、そしてその中に共通する特性を見つければ、それはパターンの発見になります。
(2)異なるグループ間での異なるパターン
実は同じ一つのグループ内で共通するパターンだけではなく、異なるグループ間で、異なるパターンを見つけることにより、それらパターンの発見は促進されます。
あるグループではある特性に関してはAでした(パターンA)、別のグループではその特性がBでした(パターンB)ということが発見できれば、パターンAとパターンBはより明確に意識されます。また同時にそのパターンの違いを生み出している原因も、2つのグループの特性を比較することで、発見することができます。
2.ダーウィンのビーグル号での観察
ダーウィンは1835年に有名なビーグル号に乗船し、ガラパゴス諸島に調査にでかけます。そこで発見したのは、島ごとに動物の特性が異なることです。たとえば、フィンチ(小鳥)のくちばしの形状が、島によって微妙に異なることを発見しました。そこから、ダーウィンはそのおかれた環境により、動植物はその特性が異なるということを発見し、後に進化論に発展させていきます。
ある島の一匹のフィンチを見るだけでは、この発見は絶対にありません。ある島のフィンチの共通のパターンを見つけたことと(同じ一つのグループ内で共通するパターン)、...