今回は、KETICモデルの「思考」の中の、「知識・経験を関係性で整理する」の下記(4)「環状構造」で整理するについて解説します(普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その71) 参照)。
◆ 原因と結果
イノベーションに必要な5つの要素として知識(Knowledge)、経験(Experience)、思考思考(Thought)、意思(Intention)、好奇心(Curiosity)を挙げ、それら英語の頭文字をとってKETICモデルと呼ぶことにしました。この連載では、KETICを一つひとつ順番に解説してきましたが、今回は「思考」の中の「知識・経験を関係性で整理する」から、原因と結果の数の組み合わせによる次の(4)に焦点をあてます。
- (1) リニア(1つの原因→1つの結果):「風が吹けば桶屋がもうかる」構造
- (2) ピラミッド(1つの原因→複数の結果):1つの原因が様々な結果を生む構造
- (3) 逆ピラミッド(複数の原因→1つの結果):ある結果は複数の原因からもたらされる。
- (4) 『環状構造』:原因と結果の連鎖が環状に循環している構造で、結果がその結果を生み出している原因の原因になっている構造。
1. 原因と結果が環状に連鎖する
上記の(4)『環状構造』は、ある結果がそのもともとの同じ、もしくは同じ種類の原因となり、そしてその結果を生み...とぐるぐる循環する関係性を持つ構造です。
例えば、あるニーズ(原因)があるとすると、そのニーズを充足するための方策を講じ、その結果一時的には満足をするものの、それが当たり前となってしまうと次はその状況に飽き足らず、新なニーズ(原因)が生まれるというような状況です。そしてそのニーズを充足する方策をまた講じ...と延々とその循環を続けます(実はそのような循環する構造が人類の文明を発展させてきました)。
似たような例に、カイゼン活動があります。日々の活動の中で何等かの問題を見つけ、その問題を解決すると、次の問題が見えてきます。そしてその問題を解決すると、次の問題が見えてくる...と言ったことが起こります。日々の活動の前提である周りの環境は刻々と変化しているために、枯れることのない泉のごとく、新な問題の前提を作り続けていますので、このカイゼン活動は永遠に続くものとなります。
地球温暖化に例えると、環境温度が高くなり、それを冷やすためにエネルギーを使って冷やすことで、結果的に二酸化炭素が増え、更に環境温度が上昇する…。といった原因の結果が環状的に循環します。
2. 環状構造はインパクトが大きい
環状構造は良くも(好循環)、悪くも(悪循環)生み出すインパクトは、それが長期にわたり(※)、重層的に同じ方向に展開することで、大きなインパクトをもたらす可能性があります。そういう意味で、あまり関係性の整理の中で頻繁に出てくる概念ではありませんが、極めて重大な関係性といえます。
(※):短期ということもありえますが、延々と続くという性質から、長期にわたることが多いように思えます(ただし、そもそも短期、長期は相対的なもので、物理的というよりむしろ心理的に長く感じるといったものかもしれません)。
3. 環状構造のインパクトを考えてみる
思考の整理として環状構造を考えるだけでなく、その環状構造の循環の外側にも...