TQMとは?TQCとの違い、考え方、事例を紹介
経営環境の変化に適した効果的かつ効率的な組織運営を実現する活動としてTQM(総合的品質管理)があります。顧客及び社会のニーズを満たす製品・サービスの提供と、働く人々の満足を通した組織の長期的な成功を目的とし、プロセス及びシステムの維持向上・改善・革新を全部門・全階層の参加を得て様々な手法を駆使して行います。今回は「TQMとは、TQCとの違い、考え方、事例」を解説します。
1. TQMとは何か
TQMとは、Total Quality Manegementの略語のことで、経営管理手法の1つです。日本語では、「総合的品質管理」とも訳すことが多いですが、企業活動において、品質の維持と向上を図っていくことが目的であり、そのための取り組み方、考え方、方法などのプロセスの全てを意味しています。TQMはTQCが発展してできたものです。近年、成果主義の考え方が社会に広がっていく過程で、TQCの問題が多く出てきてしまうことになりました。そのために、新しくTQMが利用されるようになってきています。TQCは元々、製造業に特化した品質管理の手法でしたが、TQMは品質管理全般を意味しており、範囲が限定されない特徴があります。
(1)TQCとの違い
TQMが、組織全体で品質向上を目指すマネジメント手法であるのに対して、TQCはTotal Quality Control(トータル・クオリティ・コントロール)の略で、品質管理を中心に品質向上を目指す手法です。TQMは組織全体の取り組みを重視し、TQCは品質管理部門が中心となって品質向上を図る点が異なります。どちらも品質向上を目指す手法ですが、アプローチや重点が異なります。
(2)TQMの概念の変化
TQMの概念は、いくつかの変化をしてきました。最初は品質管理の手法として始まりましたが、次第に組織全体の取り組みとして捉えられるようになりました。その後、顧客満足やプロセス改善などの要素が重視されるようになり、現在では組織文化やリーダーシップの重要性が強調されています。つまり、TQMは単なる品質管理の手法ではなく、組織全体を巻き込んだ継続的な改善活動として位置付けられるようになっています。
(3)TQMのメリット
以下がTQMの代表的なメリットです。
①顧客満足度向上
TQMの手法を用いることで、顧客のニーズや要求を正確に把握し、それに応えることができ、顧客満足度を向上させることができます。
②チームワーク強化
TQMは組織全体での協力やコラボレーションを促進し、チームワークを強化することができます。
③品質向上
TQMは組織全体で品質意識を高め、製品やサービスの品質を向上させることができます。
④組織の競争力強化
TQMを取り入れることで、組織の競争力を強化し、市場での地位を向上させることができます。
⑤生産性向上
TQMはプロセスの改善や効率化を促進し、無駄を削減することで生産性を向上させることができます。
2. TQMの柱になるもの
以下が、TQMを支える基本的な柱であり、重要な要素です。
(1)顧客中心のアプローチ
TQMでは顧客のニーズや要求を理解し、それに合わせて製品やサービスを提供することが重要です。顧客満足度を向上させるために、顧客中心のアプローチがTQMの柱となります。
(2)従業員の参加と教育
TQMでは従業員が積極的に参加し、品質向上に貢献することが重要です。従業員の教育やトレーニングを通じて、品質意識を高めることがTQMの柱となります。nnこれらがTQMの柱になる重要な要素です。
(3)プロセス改善と効率化
TQMでは絶えずプロセスを改善し、効率化することが重要です。品質や生産性を向上させるために、プロセス改善と効率化がTQMの柱となります。
上記以外のにもさまざまな要素がありますが、品質を柱とした場合を下図に示します。
3. TQMとISO9001の違い
ISO9001は、品質マネジメントシステムの国際規格であり、特定の品質基準を満たすための要件やプロセスが規定されています。TQMは、これまでも述べたように組織全体が品質向上に取り組む経営手法です。従って、組織内の全てのプロセスや従業員が品質に貢献することを重視しています。つまり、TQMは組織文化や経営手法に焦点を当てているのに対し、ISO9001は品質管理のための具体的な基準を提供しているという違いがあります。
4. TQMの手順と用いられる手法
(1)TQMを全社で推進する手順
TQMを全社で推進する手順は以下の通りですが、企業の状況に合わせてカスタマイズすることが重要です。
- ①トップマネジメントのコミットメント:まずは経営陣がTQMの重要性を理解し、その実践をリードすることが必要です。経営陣がTQMにコミットメントを示すことで、社内の関係者も取り組みやすくなります。
- ②教育とトレーニング:全社員に対してTQMの理念や手法について教育とトレーニングを行います。TQMの基本的な概念やツール、改善活動の方法などを徹底的に理解させることが重要です。
- ③目標設定と計画立案:TQMの目標を設定し、具体的な計画を立てます。目標は全社員が共有しやすいものであることが望ましいです。
- ④プロセス改善と品質管理:各部署やチームが自らの業務プロセスを見直し、改善活動を行います。品質管理の仕組みを整備し、品質向上に取り組みます。
- ⑤チームワークとコミュニケーション:TQMは全社員の協力と連携が不可欠です。チームワークを重視し、情報共有やコミュニケーションを円滑に行うことが重要です。
- ⑥継続的な改善:TQMは一時的な取り組みではなく、継続的な改善を目指すことが重要です。PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を回し、常に業務や品質の向上を目指します。
(2)TQMに用いられる手法
TQMに用いられる手法を以下に示します。これらの手法を組み合わせて、TQMの実践を行うことで、組織全体の品質向上を図ることができます。
- ①PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act):問題の特定、計画の立案、実行、結果の評価と改善を繰り返すサイクルを通じて品質を向上させる手法です。
- ②5W1H分析法:課題や問題を解決するために、Who(誰が)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どのように)という6つの質問を使って分析し、原因を特定する手法です。
- ③フィッシュボーンダイアグラム:問題の原因を明らかにするために、問題を中心に魚の骨のような図を描き、その要因を分析する手法です。
(3)TQMを全社で推進する際の注意点。
TQMの手順と用いられる手法の理解と並行して、以下のポイントに留意しながら、TQMを全社で推進することで、組織全体の品質向上や業績の向上につなげることができます。
- ①経営陣がTQMの重要性を理解し、積極的に推進することが必要です。
- ②全従業員がTQMの理念を理解し、参加できるように教育やトレーニングを行う必要があります。
- ③業務プロセスや品質管理プロセスを定期的に見直し、改善を行うことが重要です。
- ④データに基づいた意思決定を行うために、適切なデータ収集・分析手法を導入することが必要です。
- ⑤顧客のニーズや要求を理解し、それに応えるための取り組みを行うことが重要です。
5. TQMの成功事例
最後にTQMの成功事例を2つ挙げます。
(1)モトローラ社
モトローラはTQMを取り入れ、製品の品質向上と生産プロセスの効率化に成功しました。これにより、製品の信頼性が向上し、市場での評判を高めることができました。
(2)トヨタ自動車
トヨタTQMを導入し、品質管理とプロセス改善に重点を置いたことで、製品の品質と信頼性を向上させ、市場での競争力を強化しました。
6. まとめ
TQMは、経営管理手法の1つで、企業活動において、品質の維持と向上を図っていくことが目的であり、そのための取り組み方、考え方、方法などのプロセスの全てを意味しています。TQMはTQCが発展してできたものです。近年、成果主義の考え方が社会に広がっていく過程で、TQCの問題が多く出てきてしまうことになりました。そのために、新しくTQMが利用されるようになってきています。TQCは元々、製造業に特化した品質管理の手法でしたが、TQMは品質管理全般を意味しており、範囲が限定されない特徴があります。
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