-1 QCによる「新型コロナ危機への対応・・第2波入口戦略」(その3)

 <QCの基本に立ち返って考える>

 2020年5/28に(その1)で(最悪のシナリオ)変異した強力なウィルスによる第2波を避ける「戦略」について、6/22には(その2)で “ものづくりの土台”である<安心>が得られる「全員検査」の必要性(首都圏等自治体トップへの働き掛け)について述べました。

 新型コロナウィルス感染症についてはhttps://youtu.be/y6W83Y85zJs を信頼できる情報源の一つとして参照されたい(6/2版;全員検査でコロナ克服へ、6/24版;ワクチン神話を疑え)。6/30、東京都は第2波に備える“新指標”を発表し、“指標をモニターして云々”とアナウンスしました。しかし、7/2から5日続けて100人超の感染者、半数が感染経路不明。なかでも若者(発症しにくく怖さ知らずで行動範囲が広いといわれる)の感染者が増え、益々<不安>が募る中にあります。

 新型コロナウィルスの特徴は、無症状感染者が無意識のうちに次々と感染させてしまうことで、変異した強烈ウィルスに感染した人が2週間も無症状で多くの人に接していたら感染が拡大して(既にそうなっているかもしれない)「恐怖の第2波」になってしまいます。そんな中、神奈川県ではPCR検査拡大の神奈川モデルを発信し検査体制の飛躍的拡充を図っています。 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/ga4/covid19/ms/hybrid_20200703.html

 今回の(その3)-1~-3では、第2波入口戦略として「染拡大を未然に防ぎ(と考えていたが既に感染拡大が始まってしまっているので感染拡大を最小限に抑え)、見えざる感染者が何処かにいるという<不安>を解消し、経済を復興させる」という(ものづくりで重要な)マネジメントの観点から、日本のQCの極意である「事象を虚心坦懐に観察して事実を知る」と「問題を原点で捉える源流検査」をベースにした「全員検査大作戦」について考察します。

QCによる「新型コロナ危機への対応・・第2波入口戦略3」の結論

 第2波入口戦略の「キーワード」は「感染拡大の防止と<不安>の解消」。(徹底した入国管理に加え)「コロナが街中にいない<安心>街づくり」をビジョンに、「全員検査大作戦」を実行することで、感染拡大防止と医療従事者の負荷軽減と経済復興を実現することです。「全員検査」は無理といわれていましたが、検査方法が進歩し自治体の長が「決断」すれば可能になってきました。感染拡大防止の3つの課題の内、必要性が十分に認識されていないのが、下記(2)の住民と滞在者の「全員検査大作戦」です。

「全員検査大作戦」の内容

(1) 2段階検査で検査能力向上・精度向上

 1次検査;医療従事者にもやさしい唾液検体を使って、従来のPCR検査や千葉県企業開発のPCR全自動検査装置や神奈川モデルのPCR検査機器で、20人1ロットの混合検体による検査をして、可及的速やかに全員検査し陽性者を分離します。

 2次検査;1次検査で陽性になったロットの20人を一人ずつ全自動PCR検査装置や神奈川モデルのPCR検査機器や抗原検査などで検査し感染者を隔離する。注)最善の検査方法については専門家の指導が必要です。

(2) ロードマップ(特定地区から全体へ)

① 特定地区の選択

  東京ではまず感染者の多い新宿区、人口34万なので1次検査は(340,000/20=) 17,000回、最初は全ホストクラブから始め、病院、老人ホーム、学校と進める。ここで重要なことは出入り業者など(+α)を含めた関係者全員を対象にすることです。次に豊島区、・・・と広げていくのです。

② 資源の集中投入

 1次検査は可及的速やかに。あちこち分散している検査機器を「選択した特定地区に集中投入する」ことが肝要です。

(3) 一石三鳥;感染拡大防止と医療従事者の負荷軽減と経済復興

 以下、QCの基本に立ち返って、なぜ「全員検査大作戦」が重要なのかについて考察します。

 QCの基本は以下に示す12項目(12ヶ条)です。

① 先入感に捉われず、事象を虚心坦懐に観察して事実を知る
② 分けて考える(層別)
③ 工程(プロセス)で考える
④ 見える化
⑤ 目的を正しく認識し適切な目標を設定する
⑥ 源流検査(不良が発生する前に異常を検知し行動する)とポカヨケ
⑦ PDCAを回す(新型コロナの怖さを知り検査・隔離をプラスに感じるインセンティブ)
⑧ 受入で不良を入れない
⑨ 4つのM*ベストな状態にする. *原材料・機械設備・人(作業者)・方法(製造・検査)
⑩  バラツキを減らす
⑪(社会的)損失を減らす
⑫ 自由度を増す


 以下、項目ごとに考察します。

① 先入感に捉われず、事象を虚心坦懐に観察して事実を知る(西堀・磯部)

 西堀榮三郎氏は、ある会社で20年間解けなかった製品不良問題を「不良データを虚心坦懐に観察」することで、不良の背景にある真実を見付けて解決しました。また、米国で品質管理を学んでいる時にアメリカと日本では現場の人の品質に対する行動が違うことに気付いて、日本的品質管理を確立する道を開きました。

 以下、新型コロナウイルスの3つの点について考察します。

①-1、公開されているデータについて

 

 新型コロナウイルス感染症の人口100万人当り(感染者数より信頼できる)死亡者のデータ(前回の掲載事例からハイライト)をつぶさに観察すると、アジアと欧米では例えば日本7.2に対し米国353と50倍近い差があります。しかしアジアではベトナム0、台湾0.3、日本は7.2で台湾の20倍以上。日本民族云々の先入観を捨て、台湾が日本の1/20以下なのは何故か?を考えるべきです。また国民の多数が欧米人のオーストラリア4.0、ニュージーランド4.4、についても“アジア人は免疫的優位性云々の先入感を捨て、欧米との1/100に近い差はどこから来るのかを考えるべきです。

 台湾との差について、“台湾はSARSの経験があったから”という言い訳ではなく、具体的に「どんな施策で第一波を抑え込むことができたか」が重要です。台湾は(WHOに加盟できず情報収集に敏感)武漢の情報が入るや否やSARSの経験から学んだ臨戦態勢(指揮センター設置;指揮官は陣医師で首相より上の権限)を取って厳しい入境管理、検査・隔離、ITを駆使した見える化システムの戦略で感染拡大を食い止め、感染者ゼロを継続した後に規制を解除し、今は<安心>して社会・経済活動ができ、経済も順調に回復しています。

 また欧米ではドイツがトップレベルだが人口100万人当り死亡者が日本の15倍です。検査・隔離も厳しく医療レベルの高いドイツで何故なのか?仮説の一つは入国制限をする前に多くの無症状感染者が入ってきてしまって、発症前の2週間もの間に多くの人に接して感染させ、気付いた時には感染拡大が止められない状態になってしまった*ということでしょうか。

 *新型コロナウィルスの患者数は“欧州株”患者数が“武漢株”患者数の3倍あり、ウィルスの量も“欧州株”患者の方が多いという(米ロスアラモス国立研究所論文)。“武漢株”ウィルスが欧米に入って強烈なウィルスに変異し、これと日常の濃いスキンシップが急激な感染拡大を引き起こしたのかもしれないのです。

 日本はクルーズ船と武漢帰国者に対応している間に、欧米から旅行者や帰国者が入ってきてその中に無症状感染者がいて見えない形で(これまでの“感染は発症者”からという常識を超えた“無症候性キャリア”の存在に虚を突かれた感じで)二次感染が発生し、4/7首...

都圏などに緊急事態宣言を発令したものの感染者数は急増し*医療崩壊寸前になってしまったのを現場の努力で何とか食い止めた、ということではないでしょうか。

 *感染から発症までのタイムラグを考えるとこの1週間前(志村けん氏死亡)の時点で検査を受けてない見えない感染者数はすでにピークに達していました(朝日新聞6/21 知る新コロナvol.3)。

①-2、病気・感染症と自然治癒力について

 “病気は治すもの”という既成概念と“指定感染症は即入院”という規則が、新型コロナウィルスでは事態悪化の要因になった。野口整体創始者の野口晴哉氏は「風邪は治すべきものではない、経過するものである」(風邪の効用;筑摩書房)と自然治癒力の重要性を喝破(かっぱ)している。新型コロナウィルスは「指定感染症」に指定されて、感染=即入院=治療という規則(先入観)のため収容能力不足で医療崩壊寸前になったのを、感染しても自然治癒する人が多いことに気付いて規則を変え(ホテル等に隔離)切り抜けることができました。

 “病気=治すもの”という先入観に捉われずに“病気=自然治癒+治療”と2段階のフェーズに分けて考えるのが大事です。

①-3、感染拡大防止か経済復興か、両立できる策は?

 殆どの国が、感染拡大防止の強硬策or経済を回す規制緩和、というジレンマに陥っている中で、台湾は初期段階から“感染の元を抑える戦略”で両立させています。

 次回、QCによる「新型コロナ危機への対応・・第2波入口戦略(その3)-2」へ解説を続けます。

 

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