【顧客の声から顧客の価値へ、連載記事へのリンク】
- ボイス・オブ・カスタマー
- 目的やゴールを達成するためのプロセス
- 顧客フィードバックの重みとは
- 顧客満足度と顧客ロイヤルティ
- 「顧客満足度」の調査
- 顧客満足度を高めるためのアクション
- VOCについて、Q&Aの形式で
- VOCの第三段階、市場における企業価値の向上
- 品質ギャップ分析とは
- パワー・ブランドによる市場の独占
前回は、VOC発展段階の最初の段階として、提供する製品やサービスの品質を向上させるために「お客様の声」を活かす方法について記しました。今回からは次の段階として、顧客満足の向上について説明してみたいと思います。最近は「顧客満足度」という言葉に加えて、「顧客ロイヤルティ」という言葉が多く使われるようになりました。「顧客満足度」も「顧客ロイヤルティ」も似たような言葉ですが、内容は少し異なります。
「顧客満足度」は、購入した製品やサービスに対して顧客が感じる満足感を表す指標です。顧客が製品やサービスに期待した価値(機能や品質)よりも提供された価値の方が高ければ、「顧客満足度」は高まります。
一方「顧客ロイヤルティ」は、製品やサービス、または企業に対して顧客が感じる信頼や愛着を表す指標です。心理的な信頼や愛着が継続的な購買行動に繋がること分かってきたため、顧客に提供する製品やサービスを総合的に評価する指標として、「顧客ロイヤルティ」が使われるようになりました。
一般的に「顧客満足度を高めても継続的な購買には繋がらないが、顧客ロイヤルティを高めれば継続的な購買行動に繋がる」とされています。しかし一旦「顧客満足」を高めなければ「顧客ロイヤルティ」を得ることができません。また一旦「顧客ロイヤルティ」を得たとしても、一度でも顧客の期待を裏切ってしまえば、せっかく得た「顧客ロイヤルティ」を失ってしまいます。
消費財と生産財の違いもあります。一般消費者に消費される消費財(製品やサービス)は心理的な影響を受けやすいため、より「顧客ロイヤルティ」が重要になります。しかし企業によって消費される生産財は心理的なものよりも、経済性とプロセスが重視されるため、より「顧客満足度」が重要になります。いずれにせよ、「顧客満足度」は「顧客ロイヤルティ」を得るための重要な指標なので、今後はどちらかと言えば「顧客満足度」を中心に話を進めていきます。
顧客満足の向上
1. 使用するデータと測定対象の違い
まず最初に、「顧客満足度」と「顧客ロイヤルティ」の位置づけを、使用するデータと測定対象の違いから確認します。「顧客満足度」も「顧客ロイヤルティ」も、既存の顧客から集めたデータを基にして、自社の評価を分析するための指標です。しかし既存の顧客から自社の評価を聞く限り、競合他社のことや、市場のことは基本的には分かりません。(例外はベンチマークが利用できる場合、例えば業界のネット・プロモーター・スコアなど)。別の言い方をすれば、「顧客満足度」と「顧客ロイヤルティ」だけに頼っていては、競合他社の変化や市場の変化に取り残される可能性があります。それを理解したうえで、まずは「顧客満足度」と「顧客ロイヤルティ」の測定方法を考えていきましょう。
使用するデータと測定対象の違い
2. ネット・プロモーター・スコア(NPS)
恐らく誰でも「この製品やサービスを友人や家族に薦める可能性はどのくらいありますか?」というアンケートに答えたことがあるのではないでしょうか。この「他者に薦める度合い」を測定することがネット・プロモーター・スコアの特徴です。このネット・プロモーター・スコアは「顧客ロイヤルティ」を測定するものとして2000年代初頭にアメリカで開発されて以来、急速に普及しました。今ではインターネットやスマートフォンの普及と相まって、ネット・プロモーター・スコアは様々な方法を使いながら、幅広い産業・業界に浸透しています。
ネット・プロモーター・スコアを解説したページがインターネット上にはたくさんありますので、詳しくはそれらを検索して下さい。ここではいくつかのメリットとデメリットについて考えてみます。
◆ ネット・プロモーター・スコアのメリット
- シンプル(直観的)で分かりやすい
- 簡単にデータの収集と測定ができる(回答者の負担も少ない)
- 業績との相関性がある
- ベンチマーク(競合他社との比較)がしやすい
- 管理が簡単
企業の成長を考える時、業績との相関性があるとされるネット・プロモーター・スコアは経営にとって重要な指標になります。なぜなら「信頼・愛着」そして「推奨」は、業績の安定と拡大の両方の可能性が測定できるからです。ネット・プロモーター・スコアは既存顧客が対象の調査なので、基本的には競合他社や市場のことは分かりません。しかし、もし業界のベンチマークが利用可能であれば、自社と競合他社との比較ができるようになります。ベンチマークができるとき、ネット・プロモーター・スコアは競争戦略の道具として使えるでしょう。
◆ ネット・プロモーター・スコアのデメリット
- 理由が特定できない
- 具体的なアクションを起こせない
- 産業生産財(BtoB)には向かない
ネット・プロモーター・スコアは「顧客ロイヤルティ」が低い時(または高い時)、それが何故なのか、その具体的な理由が掴めません。具体的な理由が分からないので、具体的な対策(アクション)が起こせません。つまりネット・プロモーター・スコアは「顧客ロイヤルティ」を直観的に把握したいと思う企業経...
ネット・プロモーター・スコア
3. 顧客満足度の調査へ、
例えばネット・プロモーター・スコアを使って「顧客ロイヤルティ」を調査した結果、競合他社に比べて「顧客ロイヤルティ」が低いことが分かったとします(ベンチマーク)。そしてその企業の経営者は怒って、「どうしてうちの顧客ロイヤルティは他社よりも低いのか!至急何とかしろ!」と部下に向かって指示を出したとします。実務を担当する部下は一体どうすればよいのでしょうか。肝心のネット・プロモーター・スコアは具体的な情報を提供してくれません。
具体的な問題点を把握し、具体的な対策(アクション)を起こすためには、さらに詳細な情報が必要になります。それが顧客満足度調査です。次の投稿からはジョブ・マッピングや消費チェーンを使った顧客満足度の調査について解説します。