MTシステム超入門(その21)

投稿日

1.パターン認識とは

 今回はMTシステムと密接な関係にあるパターン認識について考えてみます。グリム童話に、「狼と七匹の子山羊」がありますが、これが典型的なパターン認識の例です。 留守番をしていた子山羊たちを食べようとやってきた狼が、「お母さんですよ」と言うのですが、声が違うと見破られます。狼は声をやさしく変えてやってきますが、足が違うと見破られます。足を小麦粉で白く見せて、子山羊たちはとうとうドアを開けてしまします。 「優しい声」「白い足」という二つの情報を示すことで、お母さん山羊と信じこませたのです。

 年老いた母親に電話をかけ、息子になりすましてお金をだまし取るオレオレ詐欺は、子山羊に対する狼の手口と全く同じです。 「母さん、オレだよ」から始まり、「声がおかしい」と言われると「風邪をひいた」と言い、その次には警察官を名乗る別の人間が電話に出て信じ込ませます。グリム童話と驚くほどそっくりです。

 悪事のたくらみほど脳はよく働くようで、いろいろな手口が発明されます。指紋の偽造では、他人の指紋の型をとり、シリコンで凹凸をコピーして自分の指先に貼り付けるのです。 そんな手口を回避するために、静脈認証という方法も開発されました。しかし、静脈認証すらも破る“技術”が開発されるかもしれません。三次元プリンタがどのような悪事に使われるか、善良な私たちも考えておく必要があるでしょう。

 

2.認証技術のこれから

 先日の日経新聞に「歩く姿をコンピュータは識別できる」という記事が出ていました。 大阪大学の八木康史教授らが開発した技術の紹介です。防犯カメラに映った歩く姿から、歩幅・姿勢・腕の振りの幅と速さ・左右の対称性などの特徴を取り出し、異なる2つの映像の人物が同じかどうかを94%の精度で判定するそうです。 街のあちこちに防犯カメラがありますが、将来は「この歩き方をする人間をリストアップする」というところまで開発が進むでしょう。

 さらには、個人認証技術の進歩に...

1.パターン認識とは

 今回はMTシステムと密接な関係にあるパターン認識について考えてみます。グリム童話に、「狼と七匹の子山羊」がありますが、これが典型的なパターン認識の例です。 留守番をしていた子山羊たちを食べようとやってきた狼が、「お母さんですよ」と言うのですが、声が違うと見破られます。狼は声をやさしく変えてやってきますが、足が違うと見破られます。足を小麦粉で白く見せて、子山羊たちはとうとうドアを開けてしまします。 「優しい声」「白い足」という二つの情報を示すことで、お母さん山羊と信じこませたのです。

 年老いた母親に電話をかけ、息子になりすましてお金をだまし取るオレオレ詐欺は、子山羊に対する狼の手口と全く同じです。 「母さん、オレだよ」から始まり、「声がおかしい」と言われると「風邪をひいた」と言い、その次には警察官を名乗る別の人間が電話に出て信じ込ませます。グリム童話と驚くほどそっくりです。

 悪事のたくらみほど脳はよく働くようで、いろいろな手口が発明されます。指紋の偽造では、他人の指紋の型をとり、シリコンで凹凸をコピーして自分の指先に貼り付けるのです。 そんな手口を回避するために、静脈認証という方法も開発されました。しかし、静脈認証すらも破る“技術”が開発されるかもしれません。三次元プリンタがどのような悪事に使われるか、善良な私たちも考えておく必要があるでしょう。

 

2.認証技術のこれから

 先日の日経新聞に「歩く姿をコンピュータは識別できる」という記事が出ていました。 大阪大学の八木康史教授らが開発した技術の紹介です。防犯カメラに映った歩く姿から、歩幅・姿勢・腕の振りの幅と速さ・左右の対称性などの特徴を取り出し、異なる2つの映像の人物が同じかどうかを94%の精度で判定するそうです。 街のあちこちに防犯カメラがありますが、将来は「この歩き方をする人間をリストアップする」というところまで開発が進むでしょう。

 さらには、個人認証技術の進歩に関する記事も掲載されていました。技術の進歩は良いのですが、「頼みもしないのに、自分がいつどこに居たかが分かってしまう」ことへの不安もあります。 歩き方と顔認証によって、カメラ映像だけで個人をほぼ特定できるそうですから、プライバシーが心配になります。日経記事のまとめは「利便性との折り合いをどうつけるか、合意形成に向けて丁寧な議論が必要」となっています。技術者は一生懸命技術の開発に務めますが、合意形成を担当する当事者でもあります。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

手島 昌一

データ解析やパターン認識をしてみたいけれど難しそう、と考えていませんか? MTシステムは“分かった”,“使える”への最適解です。

データ解析やパターン認識をしてみたいけれど難しそう、と考えていませんか? MTシステムは“分かった”,“使える”への最適解です。


「MTシステム」の他のキーワード解説記事

もっと見る
MTシステム超入門(その3)

13.MTシステムで認識・予測する  右上図は、MTシステムにおけるパターン距離を模式的に示しています。  いくつかのモナリザの集団が左にあります。こ...

13.MTシステムで認識・予測する  右上図は、MTシステムにおけるパターン距離を模式的に示しています。  いくつかのモナリザの集団が左にあります。こ...


MTシステム超入門(その2)

7.天気予報もパターン認識  天気予報も、複数の情報から明日の天気を当てるという、パターン認識の問題です。気圧配置、いろいろな場所での風向きや温度などを...

7.天気予報もパターン認識  天気予報も、複数の情報から明日の天気を当てるという、パターン認識の問題です。気圧配置、いろいろな場所での風向きや温度などを...


監視や検査のリアルタイムな処理、MTシステムとは

人間とコンピュータの能力の違い  ・文字を読むことができる  ・声を聞いて誰かがわかる  ・株の上がり下がりの予測ができる  これらは、人間が持つ...

人間とコンピュータの能力の違い  ・文字を読むことができる  ・声を聞いて誰かがわかる  ・株の上がり下がりの予測ができる  これらは、人間が持つ...


「MTシステム」の活用事例

もっと見る
MT(マハラノビスタグチ)法などのAI手法を活用した故障予測

◆ MT法などを活用した故障予測 (1)洗濯機のモータ 工程や製造装置ではMT(マハラノビスタグチ)法などのAI手法を活用した故障予測が一般的にな...

◆ MT法などを活用した故障予測 (1)洗濯機のモータ 工程や製造装置ではMT(マハラノビスタグチ)法などのAI手法を活用した故障予測が一般的にな...


半導体製造プロセスにおけるパラメータ設計とT法の併用による超効率的条件最適化

これは2010年の品質工学研究発表大会で、東芝の岡川宏之さんが発表した「半導体製造プロセスにおけるT法活用による超効率的プロセス条件最適化」を要約したもの...

これは2010年の品質工学研究発表大会で、東芝の岡川宏之さんが発表した「半導体製造プロセスにおけるT法活用による超効率的プロセス条件最適化」を要約したもの...


イプシロンロケットとMTシステム

1.イプシロンロケット打上げ成功とMTシステム  先月9月14日午後2時に、JAXAのイプシロンロケットが無事打上げに成功しました。成否を左右する「ロケ...

1.イプシロンロケット打上げ成功とMTシステム  先月9月14日午後2時に、JAXAのイプシロンロケットが無事打上げに成功しました。成否を左右する「ロケ...