関係性の種類、協調とは 普通の組織をイノベーティブにする処方箋(その99)

更新日

投稿日

技術マネジメント

 現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」をテーマに解説しています。今回は前回に続き「協調」について考えてみます。

 

1. 既存の低位の「協調」関係を壊す

 通常「協調」は良い意味にとられますが悪い面もあります。お互いが現状に妥協し、低い状態で平衡している状態などです。したがってそのような「協調」状況を打破すれば、より良い状況や関係を生み出す可能性があります。

2. 緊張によりダイナミズムを生み出す:イワシとナマズ

 本当のことかどうか分かりませんが、よく組織の活性化法の比喩(ひゆ)としてイワシとナマズの議論がされます。イワシを活魚輸送しようとすると、輸送の過程で弱って死んでしまうのですが、生け簀(す)の中にナマズ(ナマズは塩水中でも生きる)を入れると、イワシは逃げ回るため、生きた状態で輸送ができるという話です。組織もそれと同じで、異質でエネルギッシュな人材が入ると、組織が生き返るというものです。

3.「協調」関係は、コストや制約でもある

 組織以外に協調を壊すことで、より良い状況や関係が生まれる例があるのでしょうか。協調関係をコストや制約と捉えると、ダイナミズムを生みだすという想定がより普遍化されます。例えば、今日本は世界情勢の中で、米国と協調関係を保っています。

 第二次大戦後は旧ソ連に対し、現在では中国や北朝鮮からの軍事的脅威に対し、日米同盟という協調関係で対応しようとしています。しかし現実には、米国と「協調」関係を持つということは、コストや制約でもあります。

 例えば、在日米軍の基地を許容するとか、予算の一部を負担しなければならいといったコストほか、中国と良好な関係を築くことの制約になるといったことです。しかし一つの思考実験として、米国との協調関係を解消して、日本がスイスのように、永世中立国となる選択肢を考えてみるということもあるかもしれません。

 事物においては「協調」関係というのはあるのでしょうか。

 今、私の目の前には、机に載ったランプがあります。ランプは机によって支えられていますし、机はランプを載せることでその役割を果たしているので、両者は協調関係にあるといえます。しかしランプは机上で15cm×15cm位の面積を占有していますので、それはコストや制約でもあります。両者の協調関係を変えて、なんらかの方法でランプを宙に浮かすことで、そのコストと制約を解消するということも考えられます。

 このように「協調」...

技術マネジメント

 現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」をテーマに解説しています。今回は前回に続き「協調」について考えてみます。

 

1. 既存の低位の「協調」関係を壊す

 通常「協調」は良い意味にとられますが悪い面もあります。お互いが現状に妥協し、低い状態で平衡している状態などです。したがってそのような「協調」状況を打破すれば、より良い状況や関係を生み出す可能性があります。

2. 緊張によりダイナミズムを生み出す:イワシとナマズ

 本当のことかどうか分かりませんが、よく組織の活性化法の比喩(ひゆ)としてイワシとナマズの議論がされます。イワシを活魚輸送しようとすると、輸送の過程で弱って死んでしまうのですが、生け簀(す)の中にナマズ(ナマズは塩水中でも生きる)を入れると、イワシは逃げ回るため、生きた状態で輸送ができるという話です。組織もそれと同じで、異質でエネルギッシュな人材が入ると、組織が生き返るというものです。

3.「協調」関係は、コストや制約でもある

 組織以外に協調を壊すことで、より良い状況や関係が生まれる例があるのでしょうか。協調関係をコストや制約と捉えると、ダイナミズムを生みだすという想定がより普遍化されます。例えば、今日本は世界情勢の中で、米国と協調関係を保っています。

 第二次大戦後は旧ソ連に対し、現在では中国や北朝鮮からの軍事的脅威に対し、日米同盟という協調関係で対応しようとしています。しかし現実には、米国と「協調」関係を持つということは、コストや制約でもあります。

 例えば、在日米軍の基地を許容するとか、予算の一部を負担しなければならいといったコストほか、中国と良好な関係を築くことの制約になるといったことです。しかし一つの思考実験として、米国との協調関係を解消して、日本がスイスのように、永世中立国となる選択肢を考えてみるということもあるかもしれません。

 事物においては「協調」関係というのはあるのでしょうか。

 今、私の目の前には、机に載ったランプがあります。ランプは机によって支えられていますし、机はランプを載せることでその役割を果たしているので、両者は協調関係にあるといえます。しかしランプは机上で15cm×15cm位の面積を占有していますので、それはコストや制約でもあります。両者の協調関係を変えて、なんらかの方法でランプを宙に浮かすことで、そのコストと制約を解消するということも考えられます。

 このように「協調」関係は、拡大解釈は必要ですが、事物にも当てはまるように思えます。

4. 協調状態が本当に最適か自問する

 上記3で記述したように「協調」は多くの場合ポジティブな意味に使われるため、その意味を深く考えることなく「協調」を盲目的に受け入れていたり、過度に重視しているということはないでしょうか。現状の協調の目的や協調で得られる利益と共に協調維持のコストや制約を考え、協調状態が本当に最適なのかを自問することで、あらたなイノベーションが見つかることがあるように思えます。

 

 次回に続きます。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その165) 体感での思考とアナロジーとの関係

  これまで五感を一つ一つとりあげ、それぞれの感覚のイノベーション創出における意義と、そこに向けての強化の方法について解説してきましたが、...

  これまで五感を一つ一つとりあげ、それぞれの感覚のイノベーション創出における意義と、そこに向けての強化の方法について解説してきましたが、...


リーンシックスシグマによる生産性の高め方

   日本の生産性は、OECD加盟36カ国中21位だとか、製造業は良いがサービス業は駄目だとか、 様々な議論があるようです。生産性の定義も色々...

   日本の生産性は、OECD加盟36カ国中21位だとか、製造業は良いがサービス業は駄目だとか、 様々な議論があるようです。生産性の定義も色々...


研究者自身が感じる脅威とは 『価値づくり』の研究開発マネジメント (その21)

    今回は、オープンイノベーションに抵抗する心理として、研究者自身の能力の外部による置換の脅威について解説します。 ◆関連解説『事...

    今回は、オープンイノベーションに抵抗する心理として、研究者自身の能力の外部による置換の脅威について解説します。 ◆関連解説『事...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
ソフト開発の手戻りを小さくするには プロジェクト管理の仕組み (その8)

 前回のその7:ソフトウェア開発スケジュールと結合テストに続いて解説します。     この数回はプロジェクト管理をテーマにお話ししていますが...

 前回のその7:ソフトウェア開発スケジュールと結合テストに続いて解説します。     この数回はプロジェクト管理をテーマにお話ししていますが...


研究開発部門にスパークを起こすとは

◆市場を継続的に長く、広く、深く知る  企業の研究開発部門は、「金ばかり使って、良い技術が全然出てこない」と非難されることが多いようです。企業にとっての...

◆市場を継続的に長く、広く、深く知る  企業の研究開発部門は、「金ばかり使って、良い技術が全然出てこない」と非難されることが多いようです。企業にとっての...


プリウスの開発事例から学ぶ画期的挑戦

トヨタ・プリウスが1997年に世界初の量産ハイブリッド車として市場に出た時は大きな衝撃を社会にもたらしました。2009年に20万8876台を売り上げ、...

トヨタ・プリウスが1997年に世界初の量産ハイブリッド車として市場に出た時は大きな衝撃を社会にもたらしました。2009年に20万8876台を売り上げ、...