基本的な礼儀作法が、時代と共に形骸化 CS経営(その21)

投稿日

◆技術力で勝る海外勢が、なぜ、日本の「おもてなし」に負けるのか。

2. 見えるおもてなし、見えないおもてなし

(1) 利休七則に学ぶ

 いよいよ、「おもてなし」ですが、まずは、おもてなしという言葉の持つ意味を捉えてみましょう。「おもてなし」には、神に対する感謝の念、対応、手厚い食事・茶菓の提供、お清めの御神酒、山海の珍味(精一杯探し、捧げる)、心を込めたお世話、目に見えないおもてなし(一期一会のその瞬間に身も心も込めて精一杯行なう)などの意味が込められています。
 
 より具体的に示すと、精一杯の心、身体を精一杯駆使して限られた時間内で探し回る(走り回る)、最大の努力を行なう、熟慮する、思いやりの心、気づき、気くばり、気づかい、臨機応変、機転を利かす、知識、技能、教養、知恵、工夫、技能、努力、手を尽くすなどの意味を内包しているのです。
 
 たとえば、私なりの解釈ですが、利休七則にはおもてなしがあふれています。
 
①「茶は服のよきように」=服とは飲むこと。飲むのにちょうどよい加減にしてもてなす。
②「炭は湯の沸くように」=ほどよい火加減。炭の火力に配慮してもてなす。
③「夏は涼しく、冬は暖かに」=客人の立場に立って心からお出迎え、おもてなしする。
④「花は野にあるように」=まるで自然の中で花が咲いているように。自然の美。自然体。生命力。一所懸命に生きている姿、歓び。
⑤「刻限は早めに」=常にゆとりを持って、後れをとることはもってのほか。
⑥「降らずとも雨の用意」=常に万全の備えをしておく。
⑦「相客に心せよ」=わざとらしくなく、純粋な心と気配りでもてなす。
 
 おもてなしは、余韻・名残感・暗示も大切にします。たとえば、「風情」「味わい」「印象」「感動」「言葉に尽くせないほどの趣」「反響」「こだま」。また、「ためをつくる」という表現が適当ですが、「陰と陽」「表裏一体」「わざとらしくしない」「ムダの排除」「創造力をかきたてる」「作り込み」「糊代部分」「余裕・ゆとり」などがキーワードとなります。
 
  CSM
 

(2) なぜこの動作が大切なのか

 
・訪問時にコートを脱ぐ(武器を隠し持っていないことを表明する礼儀作法)
・畳の縁を踏まない(床下に潜んでいる武者に縁と縁の隙間から刀で斬られないように)
・座布団を勧める(床下からの攻撃に備える意味があり、一度「いや、もったいない」と少し押し戻す行為は、「私はそんなことはちっとも心配していません」という思いを伝えるため)
 
 日本では基本的な礼儀作法が大切にされてきましたが、時代と共に形骸化し、次第にそれが忘れ去られ、意味がないように捉えられて無視されるような風潮も進んでいるようです。またすでに企業、組織内にそうしたことを伝え、教える風土を持ち合わせない様子を見受ける場合もあります。
 
 しかし所詮は人と人との世界であり、世の中で大半の人々が大切にしている習慣や礼儀作法を身につけていない人がいる場合や、企業の顧客対応で失礼のないようにビジネスマナーとして身につけておかなければならない形や心を蔑ろにしてしまうと、企業として、またそこで働く人たち自身が「お客様を大切にしない」「無礼な社員」「できの悪い組織人」「企業文化の伴わないお粗末な組織」と捉えられてしまうのです。
 
 こうした場合、私は企業・組織の人たちに対して語源、由来、なぜそうすることが大切...

◆技術力で勝る海外勢が、なぜ、日本の「おもてなし」に負けるのか。

2. 見えるおもてなし、見えないおもてなし

(1) 利休七則に学ぶ

 いよいよ、「おもてなし」ですが、まずは、おもてなしという言葉の持つ意味を捉えてみましょう。「おもてなし」には、神に対する感謝の念、対応、手厚い食事・茶菓の提供、お清めの御神酒、山海の珍味(精一杯探し、捧げる)、心を込めたお世話、目に見えないおもてなし(一期一会のその瞬間に身も心も込めて精一杯行なう)などの意味が込められています。
 
 より具体的に示すと、精一杯の心、身体を精一杯駆使して限られた時間内で探し回る(走り回る)、最大の努力を行なう、熟慮する、思いやりの心、気づき、気くばり、気づかい、臨機応変、機転を利かす、知識、技能、教養、知恵、工夫、技能、努力、手を尽くすなどの意味を内包しているのです。
 
 たとえば、私なりの解釈ですが、利休七則にはおもてなしがあふれています。
 
①「茶は服のよきように」=服とは飲むこと。飲むのにちょうどよい加減にしてもてなす。
②「炭は湯の沸くように」=ほどよい火加減。炭の火力に配慮してもてなす。
③「夏は涼しく、冬は暖かに」=客人の立場に立って心からお出迎え、おもてなしする。
④「花は野にあるように」=まるで自然の中で花が咲いているように。自然の美。自然体。生命力。一所懸命に生きている姿、歓び。
⑤「刻限は早めに」=常にゆとりを持って、後れをとることはもってのほか。
⑥「降らずとも雨の用意」=常に万全の備えをしておく。
⑦「相客に心せよ」=わざとらしくなく、純粋な心と気配りでもてなす。
 
 おもてなしは、余韻・名残感・暗示も大切にします。たとえば、「風情」「味わい」「印象」「感動」「言葉に尽くせないほどの趣」「反響」「こだま」。また、「ためをつくる」という表現が適当ですが、「陰と陽」「表裏一体」「わざとらしくしない」「ムダの排除」「創造力をかきたてる」「作り込み」「糊代部分」「余裕・ゆとり」などがキーワードとなります。
 
  CSM
 

(2) なぜこの動作が大切なのか

 
・訪問時にコートを脱ぐ(武器を隠し持っていないことを表明する礼儀作法)
・畳の縁を踏まない(床下に潜んでいる武者に縁と縁の隙間から刀で斬られないように)
・座布団を勧める(床下からの攻撃に備える意味があり、一度「いや、もったいない」と少し押し戻す行為は、「私はそんなことはちっとも心配していません」という思いを伝えるため)
 
 日本では基本的な礼儀作法が大切にされてきましたが、時代と共に形骸化し、次第にそれが忘れ去られ、意味がないように捉えられて無視されるような風潮も進んでいるようです。またすでに企業、組織内にそうしたことを伝え、教える風土を持ち合わせない様子を見受ける場合もあります。
 
 しかし所詮は人と人との世界であり、世の中で大半の人々が大切にしている習慣や礼儀作法を身につけていない人がいる場合や、企業の顧客対応で失礼のないようにビジネスマナーとして身につけておかなければならない形や心を蔑ろにしてしまうと、企業として、またそこで働く人たち自身が「お客様を大切にしない」「無礼な社員」「できの悪い組織人」「企業文化の伴わないお粗末な組織」と捉えられてしまうのです。
 
 こうした場合、私は企業・組織の人たちに対して語源、由来、なぜそうすることが大切なのかの意味を解説しています。するとその背景を知ることにより素直に物事を受け容れ、身につけてくださるようになる体験を多く持っています。
 
 時にはこうした内容をとくに欧米の人たちに説明すると、「素晴らしいことだ」と感心し、以後自国に戻って人に話し、時にはそれが日常生活でも自国の人に対しても示すことから、日本に良い印象を持っていただけるきっかけとなるのです。一方、アジアの人たちの多くは同様の風習を持つことから簡単に理解し、時にはさらに白川における例を挙げてくださる場介もあり、とても良い会話と交流のきっかけとなります。
 
 次回は、第5章なぜ、あの企業の「顧客満足」はすごいのか、です。
 
【出典】 武田哲男 著 なぜ、あの企業の「顧客満足」は、すごいのか PHP研究所発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

武田 哲男

常に顧客を中核とする課題取組みにより「業績=顧客の“継続”支持率達成!」 「顧客との良質で永いご縁の創造」に取組んできた。モノづくりとサービスの融合に注力。

常に顧客を中核とする課題取組みにより「業績=顧客の“継続”支持率達成!」 「顧客との良質で永いご縁の創造」に取組んできた。モノづくりとサービスの融合に注力。


「サービスマネジメント一般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
CSは一過性のブームではない CS経営(その11)

   前回のサービスの現場崩壊(その10)に続いて解説します。   ◆本物の顧客満足の話をしよう 1. そもそも顧客満足(CS)とは何か:CS...

   前回のサービスの現場崩壊(その10)に続いて解説します。   ◆本物の顧客満足の話をしよう 1. そもそも顧客満足(CS)とは何か:CS...


実践的マニュアル作り クレーム対応とは(その52)

        前回のその51に続いて、解説します。   【マニュアル作成のヒント】 マニュアルには企業の理念や姿勢が表れる。正確な内...

        前回のその51に続いて、解説します。   【マニュアル作成のヒント】 マニュアルには企業の理念や姿勢が表れる。正確な内...


「顧客満足度」の調査 顧客の声から顧客の価値へ(その5)

【顧客の声から顧客の価値へ、連載記事へのリンク】  ボイス・オブ・カスタマー  目的やゴールを達成するためのプロセス &nb...

【顧客の声から顧客の価値へ、連載記事へのリンク】  ボイス・オブ・カスタマー  目的やゴールを達成するためのプロセス &nb...


「サービスマネジメント一般」の活用事例

もっと見る
当たり前だけでは顧客満足は得られない お客様の満足を得る(その2)

◆ 物流の顧客満足度を知る  物流の顧客満足の観点では一般消費者からは幸か不幸かそれほどの期待値を抱かれているとはいえないのではないでしょうか。何故...

◆ 物流の顧客満足度を知る  物流の顧客満足の観点では一般消費者からは幸か不幸かそれほどの期待値を抱かれているとはいえないのではないでしょうか。何故...


顧客満足度ゼロとは お客様の満足を得る(その1)

◆ 物流の顧客満足度を知る  物流はあらゆる経済活動と関わりさまざまなお客様に貢献しています。では関係するお客様に対して満足のいく物流サービスを提供...

◆ 物流の顧客満足度を知る  物流はあらゆる経済活動と関わりさまざまなお客様に貢献しています。では関係するお客様に対して満足のいく物流サービスを提供...