概要 ジャスト・イン・タイム生産(その4)

投稿日

 

【目次】

第1章 概要を理解しておこう

(1) 変化の時代に対応する
    いま、なぜジャスト・イン・タイムなのか
  中小企業にこそ効果的
  「改革」である
  「ムダ取り」である
  「流れ」である
  「実践」である

(2) 改革の全体像をみておこう
  「5S・3定」で改革の土台をつくる
  改革は3要素を中心に推進する
  改革のサイクルを繰り返す ← 今回の記事

(3) 生産の3要素を中心に改革を進める
  生産のメロディ・リズム・ハ一モニー ← 今回の記事

(4) 11の改革でJIT生産を目指す
  11の改革項目
  7つの経営課題に対応

 

第1章 概要を理解しておこう

(2) 改革の全体像を見ておこう

 ジャスト・イン・タイム(以下JIT)改革はどのように行なうのか、はじめに全体像をみておきましょう。JIT改革は、下図のような体系になっています。

 

 生産マネジメント

 

◆ 改革のサイクルを繰り返す

 JIT改革を行なうときは、以下の手順で進めていきます。

 ① 目標を設定
 ② 本来あるべき姿をイメージ
 ③ 計画を立て
 ④ 実践する
 ⑤ 改革結果の評価・検討
 ⑥ 反省点について対処する

 前回解説した3要素を中心とする13項目の改革は、④の実践に当たります。なお、実際の改革は一度の改革活動によって、すぐに目標が達成できるわけではありません。1年単位などでこの改革サイクルを繰り返すことによって、イメージした本来あるべき姿へと近づいていくのです。

 

(3) 生産の3要素を中心に改革を進める

◆ 生産のメロディ・リズム・ハ一モニー

 音楽は、3つの要素で形成されています。

 メロディ(旋律:音の流れ) ・リズム(調子:一定のテンポ)・ハーモニー(和音:音の重なり)です。この3要素が優れている音楽を名曲といい、美しい音の流れをつくり、心地よく耳に入ってきて、人々に感動を与えます。生産にもこれらに当たる3つの要素があり、これがものづくりのスムーズな流れをつくり、ムダのない生産活動を可能にするのです。

 「メロディ」は、五線譜の上の音符のつながりであり、音の流れをつくります。生産では材料や部材の段階から、それらに加工して製品を完成させるまでの「ものの流れ」に相当します。

 生産の形態はさまざまあり、ロット生産もあれば、1個ずつ流していく方法もあります。また、コンベアで流す現場もあれば、作業者が1個ずつ加工を付けていく現場もあります。生産におけるメロディとは、ものの流れとしての「流れ生産」を意味します。

 次いで「リズム」とは、一定のテンポです。音楽のリズムにもさまざまな種類があります。生産におけるリズムとは、製品ごとに要求されるものづくりの速度であり、顧客が要求する時間に合わせてつくる「タクトタイム」に相当します。生産速度(ピッチ)がバラついていては、スムーズな生産はできません。そこで、タクトタイムをもとに計画する「平準化」により、生産のリズムをつくります。

 最後に「ハーモニー」とは和音で、音と音の組み合わせを意味します。音楽が心地よく聞こえたり、不快に聞こえたりするのは、音と音の組み合わせが、うまくいっているかどうかによります。生産では、人・もの・機械の組み合わせが上手くいかなければムダ、ムラ、ムリが生じてしまいます。人・もの・機械が三位一体となって美しい和音をつくりだすことで、サ...

 

【目次】

第1章 概要を理解しておこう

(1) 変化の時代に対応する
    いま、なぜジャスト・イン・タイムなのか
  中小企業にこそ効果的
  「改革」である
  「ムダ取り」である
  「流れ」である
  「実践」である

(2) 改革の全体像をみておこう
  「5S・3定」で改革の土台をつくる
  改革は3要素を中心に推進する
  改革のサイクルを繰り返す ← 今回の記事

(3) 生産の3要素を中心に改革を進める
  生産のメロディ・リズム・ハ一モニー ← 今回の記事

(4) 11の改革でJIT生産を目指す
  11の改革項目
  7つの経営課題に対応

 

第1章 概要を理解しておこう

(2) 改革の全体像を見ておこう

 ジャスト・イン・タイム(以下JIT)改革はどのように行なうのか、はじめに全体像をみておきましょう。JIT改革は、下図のような体系になっています。

 

 生産マネジメント

 

◆ 改革のサイクルを繰り返す

 JIT改革を行なうときは、以下の手順で進めていきます。

 ① 目標を設定
 ② 本来あるべき姿をイメージ
 ③ 計画を立て
 ④ 実践する
 ⑤ 改革結果の評価・検討
 ⑥ 反省点について対処する

 前回解説した3要素を中心とする13項目の改革は、④の実践に当たります。なお、実際の改革は一度の改革活動によって、すぐに目標が達成できるわけではありません。1年単位などでこの改革サイクルを繰り返すことによって、イメージした本来あるべき姿へと近づいていくのです。

 

(3) 生産の3要素を中心に改革を進める

◆ 生産のメロディ・リズム・ハ一モニー

 音楽は、3つの要素で形成されています。

 メロディ(旋律:音の流れ) ・リズム(調子:一定のテンポ)・ハーモニー(和音:音の重なり)です。この3要素が優れている音楽を名曲といい、美しい音の流れをつくり、心地よく耳に入ってきて、人々に感動を与えます。生産にもこれらに当たる3つの要素があり、これがものづくりのスムーズな流れをつくり、ムダのない生産活動を可能にするのです。

 「メロディ」は、五線譜の上の音符のつながりであり、音の流れをつくります。生産では材料や部材の段階から、それらに加工して製品を完成させるまでの「ものの流れ」に相当します。

 生産の形態はさまざまあり、ロット生産もあれば、1個ずつ流していく方法もあります。また、コンベアで流す現場もあれば、作業者が1個ずつ加工を付けていく現場もあります。生産におけるメロディとは、ものの流れとしての「流れ生産」を意味します。

 次いで「リズム」とは、一定のテンポです。音楽のリズムにもさまざまな種類があります。生産におけるリズムとは、製品ごとに要求されるものづくりの速度であり、顧客が要求する時間に合わせてつくる「タクトタイム」に相当します。生産速度(ピッチ)がバラついていては、スムーズな生産はできません。そこで、タクトタイムをもとに計画する「平準化」により、生産のリズムをつくります。

 最後に「ハーモニー」とは和音で、音と音の組み合わせを意味します。音楽が心地よく聞こえたり、不快に聞こえたりするのは、音と音の組み合わせが、うまくいっているかどうかによります。生産では、人・もの・機械の組み合わせが上手くいかなければムダ、ムラ、ムリが生じてしまいます。人・もの・機械が三位一体となって美しい和音をつくりだすことで、サラサラとしたよどみのない生産が可能となるのです。人・モノ・機械の効率のよい組み合わせは、「標準作業」によりつくることができます。

 このように、音楽における3要素は、生産における3要素に置き換えることができます。

  • メロディ=流れ生産(ものの流れ)
  • リズム=平準化(タクトタイム)
  • ハーモニー=標準作業(人・もの・機械の組み合わせ)

 下図のようにジャスト・イン・タイムは、この3要素を柱として、美しい名曲を奏でるのです。

 

生産マネジメント

 

 次回もこのテーマで解説を続けます。

 

 【出典】古谷誠 著 『会社を強くする ジャスト・イン・タイム生産の実行手順』中経出版発行(筆者のご承諾により連載)

   続きを読むには・・・


この記事の著者

古谷 誠

「5S・3定」で改革・改善の基礎をつくり!JIT思想でムダを徹底して取り!心を生かしたモノづくりを目指す!

「5S・3定」で改革・改善の基礎をつくり!JIT思想でムダを徹底して取り!心を生かしたモノづくりを目指す!


「トヨタ生産方式」の他のキーワード解説記事

もっと見る
動作分析 流れ生産:ジャスト・イン・タイム生産(その67)

  【実践編 第4章目次】 第4章 標準作業で作業のムダを取る 1. 標準作業で作業のスタンダードを設定する2. 動作分析で作業のムダ...

  【実践編 第4章目次】 第4章 標準作業で作業のムダを取る 1. 標準作業で作業のスタンダードを設定する2. 動作分析で作業のムダ...


流れ生産:ジャスト・イン・タイム生産(その32)

    【実践編 第2章目次】 第2章 流れ生産で工場に流れをつくる 1. 流れをつくる生産のライン化の手順←今回の...

    【実践編 第2章目次】 第2章 流れ生産で工場に流れをつくる 1. 流れをつくる生産のライン化の手順←今回の...


流れ生産:ジャスト・イン・タイム生産(その39)

  【実践編 第2章目次】 第2章 流れ生産で工場に流れをつくる 1. 流れをつくる生産のライン化の手順2. 多工程持ちで少人化を実現...

  【実践編 第2章目次】 第2章 流れ生産で工場に流れをつくる 1. 流れをつくる生産のライン化の手順2. 多工程持ちで少人化を実現...


「トヨタ生産方式」の活用事例

もっと見る
トヨタ生産方式の導入はなぜ難しい

  1、トヨタ生産方式:高いハードル  トヨタ生産方式(TPS=Toyota Production Sysytem) は実によく話題にな...

  1、トヨタ生産方式:高いハードル  トヨタ生産方式(TPS=Toyota Production Sysytem) は実によく話題にな...


現場ムダ取りのはじめ方(書き起こし記事)

概要:従来から生産性を向上させる手法として用いられているインダストリアル・エンジニアリング(IE)。このセミナーではIEを知らない方でもIEに準拠した...

概要:従来から生産性を向上させる手法として用いられているインダストリアル・エンジニアリング(IE)。このセミナーではIEを知らない方でもIEに準拠した...


[エキスパート会員インタビュー記事]食品業界の改善活動から始まった多面的な改善アプローチ(小松 加奈 氏)

食品業界は、常に新たな挑戦と改善が求められる分野です。製造プロセスの最適化から新商品開発まで、その要求は終わることがありません。この複雑な業界で収益向...

食品業界は、常に新たな挑戦と改善が求められる分野です。製造プロセスの最適化から新商品開発まで、その要求は終わることがありません。この複雑な業界で収益向...