類似-3 普通の組織をイノベーティブにする処方箋(その102)

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イノベーション

 

 現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」について解説しています。今回は、引き続き「類似」について考えてみたいと思います。

 

1.『課題』先にありきのイノベーション発想

 前回の『課題』先にありきのイノベーション発想ですが、以下の3つのステップを挙げました。

  • 課題を明確にする
  • 課題を強く認識する
  • 課題の解決策を広く世の中に求める

 ここでの問題は、3つ目の「課題の解決策を広く世の中に求める」の活動において、その課題を解決することに結び付く類似性に遭遇する可能性は、高くはないということです。ある意味焦点を定めていない闇雲な活動ですので「当たるも八卦(はっけ)当たらぬも八卦」的な偶然が支配する部分があることは否定できません。

 それではどうしたらよいか。そのためには、日頃から自分で「数多く」の課題を認識し、自分の中で常に数多くの課題を持っておく、もしくは増やす活動をすることであると思います。そうすれば、3つ目の「課題の解決策を広く世の中に求める」において、いずれかの課題の類似性に遭遇する可能性が高まります。次に「そのためには何をしたら良いか」を考えましょう。

 

2. 「そのために何をしたら良いか」3つのポイント

(1)自分のpainとgain、特に後者に関心を持つ

 自分自身の課題を常に多数認識しておくことです。通常人間は生きていれば、日々さまざまなpainに遭遇するもので、そこではまさに体や心に痛みを感じるわけですので、painは敏感に感じている傾向にあります。しかし、gainを考えることには、あまり時間を費やしていないのではないでしょうか。前回、前々回で触れた島精機会長の島正博氏は「こんなことができれば」、「こんなことしたい」といった、gainのことを考える機会を多く持っており、それが類似性の発見につながり、最終的にイノベーションが起こったという面があるように思えます。つまり過去や現在のpainだけに目を向けるのではなく、未来のgainを考える時間を多く持つことが大事であると思います。

(2)周りの人のpainとgainに関心を持つ

 自分の課題の数だけでは限定的です。自分の家族や職場の同僚、友人と課題を共有することで、自分が認識する課題の数が増えます。また、それら周りの人達が持っている人的ネットワークにつながることで、類似性発見の機会が増えるという効果もあります。そのために、周りの人とのコミュニケーションの機会を多く持つことが、重要となります。しかし、さらに一歩進めて、周りの人たちと主体的な課題共有の場を持つこともあると思います。

 例えば、3M[1]には、自社の46プラットフォーム技術それぞれに沿って、テックフォーラムというグループを組織横断的に運営し、そのグループ内での活動の中で、メンバーの課題を共有するということをしています。またその他の例として、自分のテーマで抱える課題を皆に発表するなどの方策もあると思います。

(3)社会全体のpainとgainに関心を持つ

 さらには、自分の周辺だけではなく社会に広く関心を持ち、そこから社会における課題を強く認識し、課題の数を増やすことも考えられます。ユーグレナ(東京都)創業者の出雲充氏は、バングラデッシュで現地の人たちの栄養状態の低...

イノベーション

 

 現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」について解説しています。今回は、引き続き「類似」について考えてみたいと思います。

 

1.『課題』先にありきのイノベーション発想

 前回の『課題』先にありきのイノベーション発想ですが、以下の3つのステップを挙げました。

  • 課題を明確にする
  • 課題を強く認識する
  • 課題の解決策を広く世の中に求める

 ここでの問題は、3つ目の「課題の解決策を広く世の中に求める」の活動において、その課題を解決することに結び付く類似性に遭遇する可能性は、高くはないということです。ある意味焦点を定めていない闇雲な活動ですので「当たるも八卦(はっけ)当たらぬも八卦」的な偶然が支配する部分があることは否定できません。

 それではどうしたらよいか。そのためには、日頃から自分で「数多く」の課題を認識し、自分の中で常に数多くの課題を持っておく、もしくは増やす活動をすることであると思います。そうすれば、3つ目の「課題の解決策を広く世の中に求める」において、いずれかの課題の類似性に遭遇する可能性が高まります。次に「そのためには何をしたら良いか」を考えましょう。

 

2. 「そのために何をしたら良いか」3つのポイント

(1)自分のpainとgain、特に後者に関心を持つ

 自分自身の課題を常に多数認識しておくことです。通常人間は生きていれば、日々さまざまなpainに遭遇するもので、そこではまさに体や心に痛みを感じるわけですので、painは敏感に感じている傾向にあります。しかし、gainを考えることには、あまり時間を費やしていないのではないでしょうか。前回、前々回で触れた島精機会長の島正博氏は「こんなことができれば」、「こんなことしたい」といった、gainのことを考える機会を多く持っており、それが類似性の発見につながり、最終的にイノベーションが起こったという面があるように思えます。つまり過去や現在のpainだけに目を向けるのではなく、未来のgainを考える時間を多く持つことが大事であると思います。

(2)周りの人のpainとgainに関心を持つ

 自分の課題の数だけでは限定的です。自分の家族や職場の同僚、友人と課題を共有することで、自分が認識する課題の数が増えます。また、それら周りの人達が持っている人的ネットワークにつながることで、類似性発見の機会が増えるという効果もあります。そのために、周りの人とのコミュニケーションの機会を多く持つことが、重要となります。しかし、さらに一歩進めて、周りの人たちと主体的な課題共有の場を持つこともあると思います。

 例えば、3M[1]には、自社の46プラットフォーム技術それぞれに沿って、テックフォーラムというグループを組織横断的に運営し、そのグループ内での活動の中で、メンバーの課題を共有するということをしています。またその他の例として、自分のテーマで抱える課題を皆に発表するなどの方策もあると思います。

(3)社会全体のpainとgainに関心を持つ

 さらには、自分の周辺だけではなく社会に広く関心を持ち、そこから社会における課題を強く認識し、課題の数を増やすことも考えられます。ユーグレナ(東京都)創業者の出雲充氏は、バングラデッシュで現地の人たちの栄養状態の低さに遭遇したことがきっかけとなり、その解決を藻類(そうるい)からの栄養素に求めた事業を始めました。

 

 次回に続きます。

 

【用語解説】

 [1]3M Company(スリーエム)は、アメリカ合衆国ミネソタ州セントポール郊外のメープルウッドに本拠地を置く、世界的化学・電気素材メーカー。社名は2002年までMinnesota Mining & Manufacturing Co.(ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチュアリング社)が使用されていたが、その後略称である、3Mを使用した「3M Company」に変更されている。(引用:Wikipediaから、https://ja.wikipedia.org/、最終更新 2021年5月4日)。

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この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

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