クレームは大切な宝の山 クレーム対応とは(その38)

 
  
 

5. クレームが、企業を「顧客満足体質」に変える。

 前回のその37に続いて、解説します。
 

  【クレーム対応心得】

 
 お客さま相談室では、ライバル社がひだ隠しにするマイナス情報も入手できることがあります。そこでさらに考察を深めていくと、ライバル社の新商品情報から自社の商品に関する「宝物情報を発掘するヒント」が見えてきます。
 
 自社が新商品を開発するケースを想定すれば容易に理解できることですが、新商品を開発するときは、まず徹底的に顧客不満足度調査などを基礎とする各種の調査を実施して、ライバル社の商品を研究し尽くします。機能、デザイン性、耐久性など、ライバル商品を丸裸にしたうえで、圧倒的に差別化できる新商品の開発を目指すはずです。
 
 ライバル商品の研究には、当然欠陥の研究も含まれます。欠陥を克明に分析して、すべての欠陥をクリアーした自社商品を市場供給するに違いないのです。
 
 こうした開発事情は、ライバル社においても同様です。ライバル社が新商品を開発する際は、あなたの会社の商品を徹底研究し、あらゆる面で優れた新商品を誕生させます。すると、どうなるのでしょうか。
 
 ライバル社の新商品が発売された直後から、あなたの会社の商品欠陥が浮かび上がり、それまで問題にならなかったことまでが、顧客のクレーム対象になってしまうのです。なぜなら、追い越されてしまった旧性能や旧式の操作性が、「使いにくさ」を感じさせるようになるからです。
 
 新たに開発されたライバル商品との「相対比較」が、あなたの会社の商品のクレームを誘発するのです。このようなときは、ライバル商品と比較されたクレーム情報を可能なかぎり収集し、顕在化した問題点を検証することで、新商品開発のヒント=宝物を取り出すことが重要です。
 
 ライバル社の新商品が発売されたときは、それまで見過ごされてきた自社商品のクレームが指摘されます。これも、クレームから宝物を掘り起こす基本認識として、インプットしておきましょう。また、クレームにはさまざまな種類があると再三指摘してきましたが、当社が約300業種・業態の多数の企業を対象に実施した調査(1社当たりのサンプル数が平均2500に及ぶ膨大な調査)から、面白い「傾向」が浮かび上がってきました。
 
 クレームは、業界内の企業に共通するものが少なくないという事実です。業界内の各社は、お互いにライバル社を研究対象にして、ライバル社の商品を分析しながら、自社商品を作っていきます。同様にサービス面においても、ライバル社のサービスを研究、参考にして、自社のサービスを改善し、顧客に提供しているケースも多いのです。すると、どのようなことが起こるのでしょうか。
 
 極端な場合は、ライバル社どうしの商品やサービスが、すべて似たり寄ったりといった状況が生まれてしまうのです。どの商品を使ってみてもほとんど差がないのなら、消費者は別の価値観(たとえば環境配慮や低価格)で商品を選択することになるかもしれません。
 
 また、同業他社と差別化できない商品...
が多い場合は、業界内のA社商品に対するクレームとB社商品に対するクレーム、C社商品に対するクレームが、すべて共通した内容を持っていることも少なくないのです。
 
 これは、何を意味するのでしょうか。
 
 こうした共通するクレームをいち早く察知し、改良して商品化に成功した企業が、ライバル社に一歩も二歩も先んずることができるということです。業界で共通するクレームを、自社のお客さま相談室情報から分析して、すばやく商品開発・サービス開発に結びつける情報戦略が、ライバル社を振り落とす決定打になることも忘れないで下さい。
 
 次回に続きます。
 
 【出典】武田哲男 著 クレーム対応、ここがポイント  ダイヤモンド社発行
            筆者のご承諾により、抜粋を連載
 

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