今回から、お客様相談室の最大の使命について解説を進めます。
1. 顧客に高い満足を提供することに貢献せよ
ここでは、クレーム対応の最前線になる「お客さま相談室」の機能について考えます。まず、最初はこんな問い掛けからスタートします。
『 お客さま相談室とは何か 』
最近はお客さま相談室、コールセンター、カスタマーセンター、データセンターなど、さまざまな名称で呼ばれるようになりました。読者の中には、すでに相談室で日々顧客と向き合いながら奮闘されているベテランスタッフもいらっしやって、「何をいまさら……」と思われるかもしれませんが、よい機会と考えて、思考を整理し直してみましょう。
私は、お客さま相談室を次のように考えています。
【 お客さま相談室の定義 】
「企業が提供する商品・サービスならびにそこに関わるいっさいの要件(たとえば広告、宣伝、商品説明書、取り扱い説明書、容器、包装等)に関する問い合わせ、要望、提案、不満、クレーム、コンプレインなどを主として電話で受け、その対応・機能を通じて顧客に高い満足を提供することに貢献する部門」
この定義の中で最も大切なところは、「顧客に高い満足を提供することに貢献する部門」とした、お客さま相談室の役割にあります。
お客さま相談室のスタッフには、時として、その一番大切な命題をすっぽりと忘れてしまっているような人が見受けられます。
- 俺たちは所詮、クレーム処理係なんだよ
- クレームは早いうちに片づけてしまわないと大変なことになり、会社から文句を言われかねない
また、上司が部下のスタッフに向かって檄を飛ばします。
「いつまで、そんなクレームに関わっているんだ。うちの会社はボランティアじゃないんだぞ。早く始末しろ!」
現実のお客さま相談室で、このようなシーンがときどき見られます。
ところが、こうした何気なく交わされる会話の中に淮む「歪んだ意識」こそが、顧客に高い満足を提供する際の「障害要因」となっているのです。会話の中で使われていた気になる言葉を、ピックアップします。
この言葉に共通する思想は、臭いものに蓋をしてしまおうという「企業中心主義」です。顧客が受けたダメージや心理的な負担等をいっさい考慮することなく(実際は顧客の立場を尊重し、顧客本位の対応をしているというポーズを取ることが多い)、企業の論理を打ち出して、クレーム発覚を「なんとか、なかったことにしようとする発想」で覆い尽くされているといえます。
片づけられる対象の顧客は、企業にとって無益で目障りな存在にほかならないのです。
「まったく、つまらないことで文句を言う奴がいるから困るんだ。欲しいモノがあるなら適当に渡して、早く片づけちゃえ!」
クレームを申し出た顧客は、この企業にとって「うるさい奴」「文句を言う奴」や「片づける対象」になってしまいます。
はっきり申し上げて、これらの気になる言葉に象徴...
されるクレーム対応が、最も低レベルの対応であり、結果として一度のクレームが「永遠の顧客離れ」を引き起こすことになってしまいます。次回は、この事実をデータで証明して、解説を続けます。
【出典】武田哲男 著 クレーム対応、ここがポイント ダイヤモンド社発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載