1.ばらつきに注目すると低コスト化の方法が見えてくる
「まずはばらつきを減らそう」から始める。それがタグチメソッドにおける低コスト化への入り口です。 使う場所の温度や湿度が変わっても、ユーザの使い方がいろいろでも、機能や品質にばらつきが生じない設計がコンセプトです。 開発に当たっては、わざとばらつく原因を与えます。それに一番堪えた設計が「一番良い設計」です。
2.コストは品質より重要
このサブタイトルについては、多くの方が「???」と感じるでしょう。
固体燃料ロケットは、2006年で打上げ終了となったのですが、その理由はコストが高かったことです。品質や性能は世界でも群を抜いていましたが、他国の低価格ロケットが12~20億円に対して、日本は75億円です。これではビジネスになりません。「顧客がお金を払う気になる価格でなければ、宝の持ち腐れ」です。
JAXAの低コスト化(イプシロンロケット)に関する日経産業新聞(10月4日)の記事をご紹介します。 ・・・「技術水準が高く良質な製品ならば受け入れられるはずだ」という発想を捨て、通信会社などロケット打上げ発注者の要望を優先する姿勢に変わった。「顧客第一主義」への転換だ・・・
太陽光発電も日本の技術が世界一ではありますが、コストで劣るため、顧客に十分届いているとは言えません。「購入され、使われてこそ顧客に利益を提供できる」のですから、何よりコストが重要なのです。これに応えることが、製品開発に当たる技術者の宿命です。
タグチメソッドが目指しているのは、(1)競合品に対する品質を維持しながら、コストを下げる手法 、(2)向上した品質を低コスト化に振り向ける方法、 を提示することです。
「そんなうまいやり方」があれば良いですね。以降で、さわりを説明します。
3.良さ悪さの数値化
世の中のあらゆることは数値で評価されます。「なんでも鑑定団」では、骨董品に値段という数値が付けられますね。本人にとって大切かどうかではなく、本物であるかとかレアかどうかなどの客観評価で...
ものまねや歌のうまさも点数化され、視聴者はその数値に興味を持ちます。野球選手も年棒という数値で貢献度や期待度が評価されます。 我々も小学校のころから、テストの点数や通信簿の数字という逃げることのできない数値に一喜一憂していました。
何が根拠になっていようとも、良さ悪さは数値化しないと“甲乙つけがたい”ことになりますし、それは好き嫌いの問題ではないでしょう。
筆者はときどきゴルフをしますが、スコアを気にするとストレス発散になりません。思い切りクラブを振り、歩く。そのことだけを楽しみたいと思いつつ、やはりスコアに一喜一憂してしまいます...。この世の中で数値に頼らず済む事柄はないのでしょうか。
4.品質の測り方
なんでも鑑定団、野球選手の年棒、学校の成績...これらがすべて数値で表現され、その数値が(やむを得ず)良さ悪さの指標になっているわけですが、製品の品質は数値化できるでしょうか。
ここで、あなたが電器店で掃除機を購入する場面を想像してみてください。目の前にはダイソンの掃除機、向こう側には他メーカの掃除機があるとします。価格はそれぞれ8万円と3万円で、カタログ仕様は同等とします。あなたは、この5万円の差をどう考えるで...