経営理念・経営方針・事業計画の関係 中小メーカ向け経営改革の考察(その2)

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1.経営システム活性化の意義

 前回のその1に続いて解説します。inf231経営システム活性化の意義は、経営方針に掲げる目標実現のために事業計画を設定し推進する過程で、経営要素の相互間を融合調和させ、効率の良い組織活動を展開していく事です。融合調和のかなめは情報伝達のシステムです。
 
 多くの中小企業では、経営方針を年度始めに示しただけで済ませ、後は「出しっ放し」の状態です。経営方針に沿う行動をするように繰り返し要求すること、事業活動で可否判断が必要になった時、経営方針に基づいて判断すること、そして、疑問点が生じた場合には経営方針の見直しに力を注ぐことが欠かせません。
 
 経営方針で企業の将来展望を示し、その実現を図るために関連情報の収集に努め、幹部社員の間で情報交流を図り、情報感度を鍛えることで情報収集力を強化する作用が働く。しかし、そのような取組みを続け、経営方針を磨き上げる努力している企業は少ないようです。
 
 代表者は企業の将来展望を数回説いただけで、企業内の反応が乏しいと簡単に諦めています。だが実際は、経営方針に掲げている将来展望を実現するための<事業計画>の立て方に問題があり、着実な手順を踏んだ計画になっていない点が散見されます。事業計画の立て方が適正であれば、長期展望を描き出している経営方針の実現はかなり高い確率で可能になります。
 

2.経営理念・経営方針・事業計画の関係

(1)経営理念

 代表者が心がけている行動の指針など、企業人としての行動の規範として掲げる。無理に決めないで、必要性を感じた段階で決めても差し支えありません。
 
   ◆経営理念に含まれる項目
 
    ・企業の社会貢献
    ・顧客に対する考え方
    ・従業員の資質問題
    ・事業行動の規範
    ・事業を進めていく目的
 
「経営理念」は事業行動に当たっての根本的な考え方で、行動の規範を示すものです。したがって、代表者が日常から心がけている自戒の言葉、座右の銘などを中心に、代表者が実践に努力したいと考える言葉を経営理念として掲げるのが適しています。
 
 代表者が事業経営を進めていくために心がけている考え方を経営理念に掲げ、それに沿った行動を行うように努め、従業員に対しても行動の規範にするように要請します。何かの問題が発生して判断を迫られたときに経営理念に照らして行動します。そのような利用のされ方をしてこそ、経営理念の重みが出てきて、代表者の説得力が増します。
 
 体裁の良い看板代わりに経営理念を掲示していると、それが従業員の心に反映し、「実態とは別に何事も美辞麗句で飾るのが良い」というような、形式に流される社風を助長するだけです。経営理念に掲げたい言葉が心に湧いてこない時には、無理に最初から経営理念を創らなくとも、経営方針と事業計画だけでも支障はありません。
 
 代表者が事業を進めるに当たり、心がけている考え方が示されていること。経営理念は従業員の行動の規範であるので、代表者が交代しない限り、変更される事は稀です。「経営方針」はこれに続いて示されます。近い将来に実現したい企業像を示すものであって、一定期間が経過すれば内容が改められます。
 

(2)経営方針

 数年先の展望を描きます。研究開発と同じ感覚で年数をかけ修正を行い、練り上げます。代表者が心に描いている夢、志などを掲げて、企業の針路を決めます。簡単明瞭でないと事業が迷走します。経営方針の実現は事業計画で具体化し、実施の過程で方針の見直しが必要になると修正を行って磨き上げます。
 

(3)事業計画

 決算書の推移、経営環境の変化、取引先の動向等に基づき経営方針の実現を目指した計画を立てます。品質・納期・コストの問題で顧客満足度が不足している場合は、その対策を優先して損失防止を図り利益率向上を実現します。損失再発防止の生産技術が将来展望実現の基礎になります。この体験を積みながら、経営方針に掲げる将来展望の実現計画として「事業計画」を立てます。
 
 「事業計画」は経営方針を実現するために、年度別に実施する内容を示したものであって、明確な活動目標を示して事業に取組みます。そ...

1.経営システム活性化の意義

 前回のその1に続いて解説します。inf231経営システム活性化の意義は、経営方針に掲げる目標実現のために事業計画を設定し推進する過程で、経営要素の相互間を融合調和させ、効率の良い組織活動を展開していく事です。融合調和のかなめは情報伝達のシステムです。
 
 多くの中小企業では、経営方針を年度始めに示しただけで済ませ、後は「出しっ放し」の状態です。経営方針に沿う行動をするように繰り返し要求すること、事業活動で可否判断が必要になった時、経営方針に基づいて判断すること、そして、疑問点が生じた場合には経営方針の見直しに力を注ぐことが欠かせません。
 
 経営方針で企業の将来展望を示し、その実現を図るために関連情報の収集に努め、幹部社員の間で情報交流を図り、情報感度を鍛えることで情報収集力を強化する作用が働く。しかし、そのような取組みを続け、経営方針を磨き上げる努力している企業は少ないようです。
 
 代表者は企業の将来展望を数回説いただけで、企業内の反応が乏しいと簡単に諦めています。だが実際は、経営方針に掲げている将来展望を実現するための<事業計画>の立て方に問題があり、着実な手順を踏んだ計画になっていない点が散見されます。事業計画の立て方が適正であれば、長期展望を描き出している経営方針の実現はかなり高い確率で可能になります。
 

2.経営理念・経営方針・事業計画の関係

(1)経営理念

 代表者が心がけている行動の指針など、企業人としての行動の規範として掲げる。無理に決めないで、必要性を感じた段階で決めても差し支えありません。
 
   ◆経営理念に含まれる項目
 
    ・企業の社会貢献
    ・顧客に対する考え方
    ・従業員の資質問題
    ・事業行動の規範
    ・事業を進めていく目的
 
「経営理念」は事業行動に当たっての根本的な考え方で、行動の規範を示すものです。したがって、代表者が日常から心がけている自戒の言葉、座右の銘などを中心に、代表者が実践に努力したいと考える言葉を経営理念として掲げるのが適しています。
 
 代表者が事業経営を進めていくために心がけている考え方を経営理念に掲げ、それに沿った行動を行うように努め、従業員に対しても行動の規範にするように要請します。何かの問題が発生して判断を迫られたときに経営理念に照らして行動します。そのような利用のされ方をしてこそ、経営理念の重みが出てきて、代表者の説得力が増します。
 
 体裁の良い看板代わりに経営理念を掲示していると、それが従業員の心に反映し、「実態とは別に何事も美辞麗句で飾るのが良い」というような、形式に流される社風を助長するだけです。経営理念に掲げたい言葉が心に湧いてこない時には、無理に最初から経営理念を創らなくとも、経営方針と事業計画だけでも支障はありません。
 
 代表者が事業を進めるに当たり、心がけている考え方が示されていること。経営理念は従業員の行動の規範であるので、代表者が交代しない限り、変更される事は稀です。「経営方針」はこれに続いて示されます。近い将来に実現したい企業像を示すものであって、一定期間が経過すれば内容が改められます。
 

(2)経営方針

 数年先の展望を描きます。研究開発と同じ感覚で年数をかけ修正を行い、練り上げます。代表者が心に描いている夢、志などを掲げて、企業の針路を決めます。簡単明瞭でないと事業が迷走します。経営方針の実現は事業計画で具体化し、実施の過程で方針の見直しが必要になると修正を行って磨き上げます。
 

(3)事業計画

 決算書の推移、経営環境の変化、取引先の動向等に基づき経営方針の実現を目指した計画を立てます。品質・納期・コストの問題で顧客満足度が不足している場合は、その対策を優先して損失防止を図り利益率向上を実現します。損失再発防止の生産技術が将来展望実現の基礎になります。この体験を積みながら、経営方針に掲げる将来展望の実現計画として「事業計画」を立てます。
 
 「事業計画」は経営方針を実現するために、年度別に実施する内容を示したものであって、明確な活動目標を示して事業に取組みます。その結果、経営方針の見直しが必要と認識されたら、代表者の夢・志の部分は残しながら一部修正します。事業計画と経営方針の間には「今年度の実施事項」と「将来」という時間の隔たりがあります。いかにして方針に掲げている企業像に近づけるか、時間の隔たりを縮めていく事が事業計画の有り様に関わっています。将来像を意識し過ぎるために事業計画に挙げている課題が多岐にわたると、取組む力が分散して効果が得られないため、いつまでも将来像に近づいてい来ません。事業計画の立て方は非常に重要です。
 
 このような関係の下で事業を進めていくことになりますが、経営理念と称している中に、経営方針や事業計画に相当する内容が含まれている事例を見かけます。そのような企業では、日常の業務処理に当たり具体性の乏しい抽象論で行動しているように見受けられます。同様に事業計画の中に経営方針に相当する文言が示されていて、事業活動の目標設定が抽象的で具体性に欠けることから、企業内の意思をまとめるのが困難になっている事例もあります。
 

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この記事の著者

新庄 秀光

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