前回は、研究テーマの多様な情報源(その10 補完品企業)でした。今回は情報や知識を集める対象としての、「顧客の顧客」について議論をしたいと思います。
1.「顧客の顧客」を知る価値
今や顧客から明示された要求に応えるだけでは不十分であることは、研究開発活動の常識となっています。そこには大きく2つの理由があります。まず1つ目に、顧客が自社に要求するということは、他社にも要求している可能性が大きく、即競争となるからです。2つ目に、顧客は多くの場合顧客自身についての課題を明確に理解していないため、そもそも顧客が自社に関わる全ての課題をその時点で把握することは不可能だからです。従って、自社として顧客が気が付いていない課題に対する解決策を提示することが重要です。それによって顧客に対し『追加的』な価値を自社のみで提供することができ、その場合競争もなく大きな対価を得ることが可能となります。
顧客が気付いていない課題を知るための最も重要な活動の1つが、「顧客の顧客」を知ることです。「顧客の顧客」を知ることで、顧客の気付いていない課題を認識し、その解決策を提供することができます。
それにもかかわらず、多くの企業は顧客の顧客を知る活動に躊躇します。なぜなら、自社の直接の対象である「顧客」が誰かは通常明確ですが、「顧客の顧客」が誰かについて具体的レベルで把握ができていないことが多いからです。それに、「顧客」の数に比べて「顧客の顧客」の数は通常大変多く、どこから料理して良いか分からないのです。
2.他社が二の足を踏むからこそやる
しかし、いずれの産業分野でも、「競合企業と同じこと」を「よりうまく」やるだけでは、競争に勝ち残り高収益をあげ続けることはできません。むしろ他社が二の足を踏むような価値ある活動をすることが、生き残りには必要です。「顧客の顧客」を知る活動は、まさにその典型的な活動と言えましょう。
多くの企業が顧客のことも分かっていないのに、「顧客の顧客」を知る活動などは、さらに先の活動だと考えるかもしれません。しかし、その考えは間違っています。むしろ「顧客」だけを見ていては、「顧客」のことを理解することなどできません。
加えて、実は「顧客の顧客」を知る活動は、それほど難しいものではありません。もちろん、最初から理想的な活動をすることは困難でしょう。しかし、何らかの活動を行えば、それなりに「顧客の顧客」のことが見えてくるものです。それは従来の「顧客」のみに目を向けていただけでは見えなかった、目からうろこが落ちるような経験が必ずある筈です。これから終りのない長期的に積み重ねていくような活動の第一歩として、歩み始めれば良い...