‐技能と技術の融合化によるITを応用した技術開発‐ 製品・技術開発力強化策の事例(その4)

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 前回の事例その3に続いて解説します。ITの普及と共に技術者や技能者の質的内容が大きく変化しつつあります。今まで何回もの練習と経験を積む必要性が高かった業務が、ITにより短期間に習得できる様になってきました。そのような現実が3d1あるため、ややもすると安易にITに依存して事足りると考える傾向が至るところで見られるようになってきました。確かに、ITは優れものであるが、これも道具に過ぎないので、目的、限界、特徴等をしっかりと理解してこの技術を応用しないと、企業の競争力は維持できなくなる恐れがあります。
 
 ITの応用に力を入れると同時に、体で体得した技能でITでは表現できない先端部分の習得(暗黙知と言われている部分)に力を入れていく必要があります。要するに、高度の技能とデジタル化されITに組み込まれて形式知となっている技術に属する部分の融合化に巧みな企業は強い競争力を発揮していくものと考えられます。その前提になるのが、経営方針が明確になっていて、自企業の技術をどのような分野でどの方向に伸ばしていくのか、その方向付けがはっきりしていないと、技術者の努力目標が定まらず、方向性が明確でないため高度の技能を修得するに至りません。この事から、技能・技術の向上を促すために、経営方針は非常に重要な役割を果たすものです。
 
 (注) 技能は体で覚えていて感覚的に動作する事で高度な仕事が出来る事、技術は技能を分析測定して、理論的に体系化して再現性が図れるようにデジタル化されている状態で、少しの練習で再現性が可能になります。つまり、技術=(技能+理論)と、ここでは表現を簡略化します。
 

1.現場とITの融合化の事例

(1)第一の事例

 街工場で現場経験の豊富な方が、パソコンはやがて全ての分野に浸透していく時代がくることを知り、パソコンの学習から始め、パソコンの販売から事業を開始しました。売るだけでは顧客がパソコンを使い切れないことを知り、セッティングの業務も始めました。更にパソコンを使いこなす方法としてホ-ムペ-ジを開設する需要があることを知り、パソコンの販売先にこの業務の受注活動を行うようになります。相手の要求をそのまま聞き入れてホ-ムペ-ジを作成するので無く、企業の現場に入り込んで依頼者の技術的な特徴をホ-ムペ-ジに反映させるように提案していきました。依頼者の中小企業の間ではこの取り組み方が大変好評で事業が好調に推移しています。
 
 この事例は現場経験のある技術者が自己の経験にITを応用する事業を目指し、現場に入り込んで現状観察を行い、相手の要求以上の成果品を作ることが出来たものと考えられます。 つまり、ITと現場作業の融合化でシステムが作り上げられ、付加価値の高い機能が商品に付与されたのです。
 

(2)第二の事例

 熟練作業者をモデルにして溶接ロボットを開発した事例です。設計技術者が理論を駆使して溶接ロボットを開発したが、実際に使用してみると、実用になりません。社内で最も優れている溶接技能者に溶接ロボットの作業を見せたところ、「こんなやり方ではダメ」と一笑されました。そこで、彼をモデルにして溶接作業条件別にト-チの運動状況を詳細に観察し、時間、電圧、電流の計測も併せて行い、それをロボットの設計に反映させてソフトの開発を行い、実用になる溶接ロボットの開発に成功しました。熟練した技能者と技術者が互いに協力関係を保ち、技能に理論の光を当てる事で技術開発が可能になった好例です。
 

(3)第三の事例

 現場を全く知らないIT技術者がソフトの開発を依頼され、依頼先の店舗の店頭に何日も立ち、顧客の流れ、商品の配置と流れ、レジでの処理等を詳細に観察し、本社の管理部門が要求しているソフト...
 前回の事例その3に続いて解説します。ITの普及と共に技術者や技能者の質的内容が大きく変化しつつあります。今まで何回もの練習と経験を積む必要性が高かった業務が、ITにより短期間に習得できる様になってきました。そのような現実が3d1あるため、ややもすると安易にITに依存して事足りると考える傾向が至るところで見られるようになってきました。確かに、ITは優れものであるが、これも道具に過ぎないので、目的、限界、特徴等をしっかりと理解してこの技術を応用しないと、企業の競争力は維持できなくなる恐れがあります。
 
 ITの応用に力を入れると同時に、体で体得した技能でITでは表現できない先端部分の習得(暗黙知と言われている部分)に力を入れていく必要があります。要するに、高度の技能とデジタル化されITに組み込まれて形式知となっている技術に属する部分の融合化に巧みな企業は強い競争力を発揮していくものと考えられます。その前提になるのが、経営方針が明確になっていて、自企業の技術をどのような分野でどの方向に伸ばしていくのか、その方向付けがはっきりしていないと、技術者の努力目標が定まらず、方向性が明確でないため高度の技能を修得するに至りません。この事から、技能・技術の向上を促すために、経営方針は非常に重要な役割を果たすものです。
 
 (注) 技能は体で覚えていて感覚的に動作する事で高度な仕事が出来る事、技術は技能を分析測定して、理論的に体系化して再現性が図れるようにデジタル化されている状態で、少しの練習で再現性が可能になります。つまり、技術=(技能+理論)と、ここでは表現を簡略化します。
 

1.現場とITの融合化の事例

(1)第一の事例

 街工場で現場経験の豊富な方が、パソコンはやがて全ての分野に浸透していく時代がくることを知り、パソコンの学習から始め、パソコンの販売から事業を開始しました。売るだけでは顧客がパソコンを使い切れないことを知り、セッティングの業務も始めました。更にパソコンを使いこなす方法としてホ-ムペ-ジを開設する需要があることを知り、パソコンの販売先にこの業務の受注活動を行うようになります。相手の要求をそのまま聞き入れてホ-ムペ-ジを作成するので無く、企業の現場に入り込んで依頼者の技術的な特徴をホ-ムペ-ジに反映させるように提案していきました。依頼者の中小企業の間ではこの取り組み方が大変好評で事業が好調に推移しています。
 
 この事例は現場経験のある技術者が自己の経験にITを応用する事業を目指し、現場に入り込んで現状観察を行い、相手の要求以上の成果品を作ることが出来たものと考えられます。 つまり、ITと現場作業の融合化でシステムが作り上げられ、付加価値の高い機能が商品に付与されたのです。
 

(2)第二の事例

 熟練作業者をモデルにして溶接ロボットを開発した事例です。設計技術者が理論を駆使して溶接ロボットを開発したが、実際に使用してみると、実用になりません。社内で最も優れている溶接技能者に溶接ロボットの作業を見せたところ、「こんなやり方ではダメ」と一笑されました。そこで、彼をモデルにして溶接作業条件別にト-チの運動状況を詳細に観察し、時間、電圧、電流の計測も併せて行い、それをロボットの設計に反映させてソフトの開発を行い、実用になる溶接ロボットの開発に成功しました。熟練した技能者と技術者が互いに協力関係を保ち、技能に理論の光を当てる事で技術開発が可能になった好例です。
 

(3)第三の事例

 現場を全く知らないIT技術者がソフトの開発を依頼され、依頼先の店舗の店頭に何日も立ち、顧客の流れ、商品の配置と流れ、レジでの処理等を詳細に観察し、本社の管理部門が要求しているソフトウエアの内容が現場の実情に合っていないことを突き止めました。この内容を踏まえて管理部門に提案し、現場の事情と管理部門の要求している内容の両立するソフトの開発に力を注いだ。その結果、使い勝手の良いシステムで目的にも即した内容に作り上げられ、高い評価を得ています。
 
 この事例はソフトウエアの専門家が、自分の経験していない現場を理解するため、先行投資の考えに基づき長い時間を費やして現状把握を行い、要求されているシステム構築に必要な機能を現場観察と管理部門の狙っている内容との融合により実現したと実例です。
 

2.現場とITの融合化の要点

 現場観察や、熟練技能者をモデルにする事などにより、現場とITが融合化した開発テ-マが発掘出来る例は、今後増えていくものと考えられます。職人不足を補う事、職人の存在価値を見直すためにも現場観察と、熟練技能者のモデル化は大切な事です。
 

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この記事の著者

新庄 秀光

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