秘密保持契約 知財経営の実践(その24)

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  知的財産
 

1. 知財の持つ価値

 
 知財経営の実践については、その重要性が参考文献のように報告されています。〔1〕〔2〕知財の活用を、企業経営においては、常に意識しましょう。知財経営が有効となるのは、技術が自分の会社の強みとなる場合です。自社の強みを分析してみることが必要です。強みが技術にある場合は、知財戦略を考えてみましょう。
 

2. 知財経営:秘密保持契約で自社の技術を守る

 
 製品開発の目途が立ち、取引先に試作品やサンプルを提示する際には、知的財産権との関係に注意しましょう。知的財産への対処をしておかないと、製品販売後に支障がある場合があるからです。取引先に試作品やサンプルを提示する際には、当該技術について特許出願をしておきます。また対象の製品によっては、商標出願(ブランド)や意匠出願(デザイン)もしておきましょう。
 
 このような知的財産権の保護ための手段を講じる時間がない場合でも、相手方と秘密保持契約を締結しておきましょう。最低限でも自社の技術を他者に模倣される等の問題を防止するために必要です。ただし秘密保持契約を締結してからといって安心してはいけません。秘密保持契約の締結は、あくまで暫定的な措置です。速やかに特許出願等を行うことが必要です。試作品を外部の展示会に出す際や提示する際にも秘密保持契約を締結しましょう。
 
 

3. 知財経営:秘密保持契約

 
 秘密保持契約は、秘密情報の取り扱いについて、事前に当事者間で合意を確認するためのものです。企業間で守秘義務を課す目的で締結される場合が多いでものです。営業秘密の定義から、以下について規定します。
 
  • 有用性(秘密情報として管理されている生産方法、販売方法その他事業活動に有用な技術)
  • 秘密管理性(管理するべき営業上の情報)
  • 非広知性(公然と知られていないもの)のある情報
 

4. 知財経営:秘密保持契約書〔3〕

 
 秘密保持契約を締結する際には、秘密保持契約書を作成します。秘密保持契約納作成のポイントを、以下で説明します。何が秘密情報に該当するかを具体的に特定します。秘密情報といえないものについては、管理の対象外として明記します。
 
 これを秘密情報とすると、情報管理に責任が生じるため、作業が煩雑になるからです。契約締結前に情報交換をすることはできるだけ避けるべきです。
 
 しかし、契約締結前に資料のやり取りなどが始まっていた場合など、秘密情報が特定できれば、合意によりその情報の取得日に遡って秘密として取り扱うことも考えられます。逆に、契約締結日前の情報は秘密情報としないことが望ましい場合は、その旨を規定します。
 
 秘密を守る義務が、契約期間の終了によりなくなってしまうと、不都合な場合があります。このため...
 
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1. 知財の持つ価値

 
 知財経営の実践については、その重要性が参考文献のように報告されています。〔1〕〔2〕知財の活用を、企業経営においては、常に意識しましょう。知財経営が有効となるのは、技術が自分の会社の強みとなる場合です。自社の強みを分析してみることが必要です。強みが技術にある場合は、知財戦略を考えてみましょう。
 

2. 知財経営:秘密保持契約で自社の技術を守る

 
 製品開発の目途が立ち、取引先に試作品やサンプルを提示する際には、知的財産権との関係に注意しましょう。知的財産への対処をしておかないと、製品販売後に支障がある場合があるからです。取引先に試作品やサンプルを提示する際には、当該技術について特許出願をしておきます。また対象の製品によっては、商標出願(ブランド)や意匠出願(デザイン)もしておきましょう。
 
 このような知的財産権の保護ための手段を講じる時間がない場合でも、相手方と秘密保持契約を締結しておきましょう。最低限でも自社の技術を他者に模倣される等の問題を防止するために必要です。ただし秘密保持契約を締結してからといって安心してはいけません。秘密保持契約の締結は、あくまで暫定的な措置です。速やかに特許出願等を行うことが必要です。試作品を外部の展示会に出す際や提示する際にも秘密保持契約を締結しましょう。
 
 

3. 知財経営:秘密保持契約

 
 秘密保持契約は、秘密情報の取り扱いについて、事前に当事者間で合意を確認するためのものです。企業間で守秘義務を課す目的で締結される場合が多いでものです。営業秘密の定義から、以下について規定します。
 
  • 有用性(秘密情報として管理されている生産方法、販売方法その他事業活動に有用な技術)
  • 秘密管理性(管理するべき営業上の情報)
  • 非広知性(公然と知られていないもの)のある情報
 

4. 知財経営:秘密保持契約書〔3〕

 
 秘密保持契約を締結する際には、秘密保持契約書を作成します。秘密保持契約納作成のポイントを、以下で説明します。何が秘密情報に該当するかを具体的に特定します。秘密情報といえないものについては、管理の対象外として明記します。
 
 これを秘密情報とすると、情報管理に責任が生じるため、作業が煩雑になるからです。契約締結前に情報交換をすることはできるだけ避けるべきです。
 
 しかし、契約締結前に資料のやり取りなどが始まっていた場合など、秘密情報が特定できれば、合意によりその情報の取得日に遡って秘密として取り扱うことも考えられます。逆に、契約締結日前の情報は秘密情報としないことが望ましい場合は、その旨を規定します。
 
 秘密を守る義務が、契約期間の終了によりなくなってしまうと、不都合な場合があります。このため、秘密保持義務については、契約有効期間終了後も3年前後、有効とする規定が多いです。
 
 次回に続きます。
 
【参考文献】
〔1〕特許庁「中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006」(H19.3)
〔2〕「戦略的な知的財産管理に向けて「知財戦略事例集」(2007.4特許庁)
〔3〕「知っておきたい特許契約の基礎知識」(独立行政法人工業所有権情報・研修館2007.6)

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この記事の著者

立花 信一

材料技術者および特許技術者として、長年にわたって経験した知識・技術を最大限に生かし技術コンサルティング、知財コンサルティング、行政書士として契約書作成、補助金申請のお手伝いをします。

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