考課制度と能力開発 中小メーカ向け経営改革の考察(その30)

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 前回のその29に続いて解説します。人事考課制度の目的として、人材育成を主体に置く場合と、業績評価を主体に置く場合では、経営システムの活性化に影響する程度が大きく異なります。前者を目的にして目標管理制度と連動させて、目標達成の満足感を導き出し、次の課題に取り組む意欲を刺激することは、経営システムの活性化に好影響が出ます。後者を目的にした場合は、要領の良い人物を増やす事になり、活性化が図られない事例を幾つも体験しています。考課を行った場合に評価者の満足に終わらせない事が重要です。当人に内容を知らせて、向上心に結びつける配慮が特に大切です。
 

◆人事考課制度の問題点と対策

 「人事考課の目的は経営方針実現に資する能力の評価であって、その向上心を刺激することを目的に実施する」と意義を決めることにしましょう。ここでは管理者を対象にして検討します。管理者層が活性化すればその部下に好ましい影響が出てくるでしょう。目標が簡単に達成されている場合には、それが低かったのか、偶然に上手くいったのか、その内容を見極めて評価し、評価は人材育成が目的であること、その目的を明確にするのは能力開発にどの程度役立っているのか、その視点からの評価としましょう。
 
 評価する上司は、評価を通じて試されているとの認識が大切です。成果主義の人事考課で、能力向上に対する配慮が乏しい考課が行われ、考課の結果を当人に知らせない場合、評価を行った経営者の自己満足に終わります。管理者に対して育成効果が発揮されなければ、何が目的で考課が行われているのか、疑問が湧きます。一部の高い評価を受けた管理者が喜ぶだけで終わるようなことでは、考課の意義がなくなります。
 
 事業計画に含まれる課題を達成するのに必要な、問題解決の体験を積むことで能力開発が図られるので、人材育成を図る事を主目的にした考課制度の運用は結果として業績向上に結びつきます。考課制度の運用法は経営システムの活性化に大きく影響するため、人事考課制度と成果報酬制度の関係はいかにあるべきか、検討しなければなりません。
 
 前述した事業計画では数値目標を設定し、各部門が分担を決めて目標管理を推進する事で事業計画を達成するように運営する。目標管理の目標設定でも目標値を明確にすることが何よりも大切ですが、数値化が困難な改善項目の場合には、具体的な現象で改善の段階を明らかにします。
 
 評価内容で「特に悪い・悪い・良い・特に良い・非常に優れている」のような5段階評価は評価者によるバラツキが多くなりがちのため、具体的な数値、または現象で段階設定するのが適しています。 
 
・技能と技術の差異明確化
 
 「技能」と「技術」の区別が明確でなく混同しているため、技術向上を阻害している問題も少なくありません。技術者の中に技能的な考えで業務を処理している管理者があります。技術者は概ね発言力があるため、技能的な技術者が技術向上を阻害する影響は大きいでしょう。この差異を明らかにして自己啓発、相互啓発が円滑になるように導くことも大切です。
 
「技能」
 
 技能とは、体全体で習得した作業法です。理論的な説明はできないが、感覚的に適正な作業法を体得して、無意識のうちに体が動いて作業が進められます。
 
「技術」
 
 技能者の作業内容を観察して理論的な解釈を加え、手順・方法を文字にして示し、かつ、道具を考案してその利用法を決め、作業が確実に再現できるようにします。これにより、未熟者であっても、短い時間の学習で同じ作業ができるようになります。
 
 構想を固める段階は技能的な部分、つまり感覚的に作業する部分が主要な位置を占めています。ます技能が先行し、技術がこれを理論的に整理して再現性を図る事になるのです。その段階で技能的な部分がより一層磨かれて鋭い感覚が体得されます。このような循環をなしているように考えられます。
 
 言葉を替えると技術は「見える化」の作業に相当し、技能を普及させる役割があります。その様な関係を理解することで、技能者の存在価値と技術者の役割が明らかになるので、その視点での評価の方法を開発する必要があります。技能と技術の向上の段階を明確にして、評価に際しての判断に利用するために次のような段階を例示します。
 
 技能関係
 
    1段階:教えながらやらせるとできる   
    2段階:判らないことを質問させ、教えるとで...
 前回のその29に続いて解説します。人事考課制度の目的として、人材育成を主体に置く場合と、業績評価を主体に置く場合では、経営システムの活性化に影響する程度が大きく異なります。前者を目的にして目標管理制度と連動させて、目標達成の満足感を導き出し、次の課題に取り組む意欲を刺激することは、経営システムの活性化に好影響が出ます。後者を目的にした場合は、要領の良い人物を増やす事になり、活性化が図られない事例を幾つも体験しています。考課を行った場合に評価者の満足に終わらせない事が重要です。当人に内容を知らせて、向上心に結びつける配慮が特に大切です。
 

◆人事考課制度の問題点と対策

 「人事考課の目的は経営方針実現に資する能力の評価であって、その向上心を刺激することを目的に実施する」と意義を決めることにしましょう。ここでは管理者を対象にして検討します。管理者層が活性化すればその部下に好ましい影響が出てくるでしょう。目標が簡単に達成されている場合には、それが低かったのか、偶然に上手くいったのか、その内容を見極めて評価し、評価は人材育成が目的であること、その目的を明確にするのは能力開発にどの程度役立っているのか、その視点からの評価としましょう。
 
 評価する上司は、評価を通じて試されているとの認識が大切です。成果主義の人事考課で、能力向上に対する配慮が乏しい考課が行われ、考課の結果を当人に知らせない場合、評価を行った経営者の自己満足に終わります。管理者に対して育成効果が発揮されなければ、何が目的で考課が行われているのか、疑問が湧きます。一部の高い評価を受けた管理者が喜ぶだけで終わるようなことでは、考課の意義がなくなります。
 
 事業計画に含まれる課題を達成するのに必要な、問題解決の体験を積むことで能力開発が図られるので、人材育成を図る事を主目的にした考課制度の運用は結果として業績向上に結びつきます。考課制度の運用法は経営システムの活性化に大きく影響するため、人事考課制度と成果報酬制度の関係はいかにあるべきか、検討しなければなりません。
 
 前述した事業計画では数値目標を設定し、各部門が分担を決めて目標管理を推進する事で事業計画を達成するように運営する。目標管理の目標設定でも目標値を明確にすることが何よりも大切ですが、数値化が困難な改善項目の場合には、具体的な現象で改善の段階を明らかにします。
 
 評価内容で「特に悪い・悪い・良い・特に良い・非常に優れている」のような5段階評価は評価者によるバラツキが多くなりがちのため、具体的な数値、または現象で段階設定するのが適しています。 
 
・技能と技術の差異明確化
 
 「技能」と「技術」の区別が明確でなく混同しているため、技術向上を阻害している問題も少なくありません。技術者の中に技能的な考えで業務を処理している管理者があります。技術者は概ね発言力があるため、技能的な技術者が技術向上を阻害する影響は大きいでしょう。この差異を明らかにして自己啓発、相互啓発が円滑になるように導くことも大切です。
 
「技能」
 
 技能とは、体全体で習得した作業法です。理論的な説明はできないが、感覚的に適正な作業法を体得して、無意識のうちに体が動いて作業が進められます。
 
「技術」
 
 技能者の作業内容を観察して理論的な解釈を加え、手順・方法を文字にして示し、かつ、道具を考案してその利用法を決め、作業が確実に再現できるようにします。これにより、未熟者であっても、短い時間の学習で同じ作業ができるようになります。
 
 構想を固める段階は技能的な部分、つまり感覚的に作業する部分が主要な位置を占めています。ます技能が先行し、技術がこれを理論的に整理して再現性を図る事になるのです。その段階で技能的な部分がより一層磨かれて鋭い感覚が体得されます。このような循環をなしているように考えられます。
 
 言葉を替えると技術は「見える化」の作業に相当し、技能を普及させる役割があります。その様な関係を理解することで、技能者の存在価値と技術者の役割が明らかになるので、その視点での評価の方法を開発する必要があります。技能と技術の向上の段階を明確にして、評価に際しての判断に利用するために次のような段階を例示します。
 
 技能関係
 
    1段階:教えながらやらせるとできる   
    2段階:判らないことを質問させ、教えるとできる
    3段階:正味作業が標準時間内にできる 
    4段階:段取りから後始末まで全てできる  
    5段階:人に教えることができる 
 
 技術関係
 
    1段階:その都度教えないとできない
    2段階:計画を示すと実行できる
    3段階:所定のテ-マについて助言すると、活動計画を立て実行できる
    4段階:単独で活動計画を立て、実行できる
    5段階:活動計画を具体的に立て、役割分担を決めて活動を導くことができる
 
 また、技能の指導に際して手引書を作る場合、最も水準が高いと考えられる技能者を作業方法のモデルにして、作業手順書を作成する方法を講じている企業の例があります。具体的には、技能者は作業手順を言葉で示すことはできないから、ビデオカメラに取り込む、管理者が技能者の作業を観察して作業手順書にまとめ、それを技能者に示して修正する、などの方法をとっています。この作業を行う際、技能者に目的を示して協力を求め、作り上げた手引書にその技能者の姓を冠することで、技能者の誇りを示せるようにします。
 

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この記事の著者

新庄 秀光

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