‐開発に適した企業の条件、第2回‐ 製品・技術開発力強化策の事例(その23)

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 前回の事例その22に続いて解説します。研究開発が継続的に行われている企業には、共通に見られる経営行動がある。その内容としては、次に示すような経営行動が上げられる。これらの定着に務める事が、開発活動を効果的に推進する事に結び付きます。
 
研究開発が継続的に行われている企業に見られる経営行動
 
     1.日常発生している問題の掘り下げた開発
     2.危険性を予測し、リスクを恐れないで取り組む
     3.長所を意識し伸ばす発想が大切
     4.開発体験から教訓を学び取る
     5.計画立案能力の自己啓発
     6.人のしないことをする
 
前回、第1回として、1から3項を記述しました。今回は、第2回として、4から6項を記述します。
 

4.開発体験から教訓を学び取るためのチェック項目

 開発過程の体験を整理して、 成功、失敗の何れの場合でもその原因を究明し、次なる取り組みへの教訓を導き出す事は重要です。体験を生かすような取り組み方が行われていない企業が開発に取り組むと、同じようなことを何回も繰り返す事が生じて、開発費用がかさみ、かつ、開発のスピ-ドが遅くなり市場の競争に勝ち残る確立が低くなります。次に、失敗、成功の原因究明のチェックポイントを示します。 
    
 ◆開発活動の成否究明のチェックポイント
 
  a)狙いとする客層の設定は明確になっていたか、
  b)その客層の消費態度を詳細に観察したか
  c)競合品、類似品の存在の有無を調べたか
  d)想定する客層に対してどのような利点を提供できる製品か
  e)それは競合品よりも優れた特性を持つ製品で想定価格は適正であったか
  f)狙いとする客層に適した販売ル-トを検討したか
  g)保有している技術が応用できる範囲を見定めたか
  h)技術提携先の信頼性を何らかの方法で確認したか
  i)開発計画を明確にし、類似品との比較検討を同時に行ったか
  j)研究開発の過程でのデ-タ採取の項目と方法を決めていたか
  k)開発担当者に開発以外の業務を多く与えて、開発の障害要因になっていないか
  l)開発過程で中間報告をさせるタイミングは適正か
  m)試作品のテスト方法、ユ-ザ-テストの方法は妥当であったか
  n)生産コスト、流通コスト、市販価格の相互関係を検討したか
  o)流通業者、消費者の両者に歓迎される価格対策を講じたか
  p)商品の特性に基づく直販か、代理店方式か検討したか
  q)代理店契約(消費者情報吸収の方法を考慮しての)は適正か
  r)販売区域の設定について検討したか
  s)試作品から本生産に移行する過程の検討をしたか
  t)生産技術の検討をしたか、
  u)運転資金の限界を見極めたか
  v)最悪の場合を想定して撤退の限界を過程別に決めたか
 

5.計画立案能力の自己啓発

  新しい問題に取り組む場合、どのような手順と方法で取り組み、目標を何処に置くべきか、そして、開発に要する予算は幾ら見込むのか、研究開発の活動に関する計画を立てる必要があります。きちっとした計画を立てると、計画に沿って活動する様になり、直面する問題点だけに集中して取り組む事が出来るから、あれも、これも、と考えることが少なくなり、心理的な負担が軽減されます。計画を軽視する技術者は開発行動に入ってから、行きつ、戻りつ、が多くなり、開発に伴うロスが増え、かつ、開発スピ-ドが遅くなりコストが必要以上に費やされます。
 
 計画を立てる事に習熟する必要があり、何回かの計画立案の経験を経て、良い計画を立てる技術が体得出来ます。最初の間は巧く立てられないため、計画を立てても効果がないというような考えを持つ場合があります。しかし、しっかりと練り上げた計画を立てると開発活動がやり易くなります。計画を立てることが開発行動そのものである事の理解が必要です。
 
 計画を立てる時に発想の上で障害になる事として、今までに経験した事がない問題に取り組む計画を立てることは出来ません。そのような場合は、次の事を考慮する必要があります。
 
 第一に、開発対象品は幾つの要素技術で構成されるのか、その検討から着手します。全ての要素技術が新規に開発が必要とされる場合は無く、一部に未知の技術が見られ、全ての要素技術が新規開発の対象になるような事は起こり得ません。経験した事がない新規開発の対象になる要素技術が特定されたら、その技術はどのようなところに類似性のあるものが存在するのか、それらの調査をして、開発への取り組み方を考えれば計画立案の手掛かりが得られます。
 
 第二に、開発品を何時までに開発しないと競合企業に勝ち残る事が出来ないのか、または、自企業の生き残り対策として、開発に支出される費用の回収は企業の体力から考えて何時頃から開始が必要なのか、その限界の見極めが必要です。
 
 これらの状況を総合して開発計画を立てる必要があります。計画を立てると、どのようなデ-タを何時、何処で取るべきか、開発活動の内容を充実させることに役立ち、技術が蓄積出来ます。技術開発のノウハウはこのような過程を経過して蓄積されます。
 
 ◆計画を立てる時に必要な事項
 
 ・目的とする成果物が得られる最終期限の設定(品質、性能、原価の目標)
 
 ・要素技術に分解してそれぞ...
 前回の事例その22に続いて解説します。研究開発が継続的に行われている企業には、共通に見られる経営行動がある。その内容としては、次に示すような経営行動が上げられる。これらの定着に務める事が、開発活動を効果的に推進する事に結び付きます。
 
研究開発が継続的に行われている企業に見られる経営行動
 
     1.日常発生している問題の掘り下げた開発
     2.危険性を予測し、リスクを恐れないで取り組む
     3.長所を意識し伸ばす発想が大切
     4.開発体験から教訓を学び取る
     5.計画立案能力の自己啓発
     6.人のしないことをする
 
前回、第1回として、1から3項を記述しました。今回は、第2回として、4から6項を記述します。
 

4.開発体験から教訓を学び取るためのチェック項目

 開発過程の体験を整理して、 成功、失敗の何れの場合でもその原因を究明し、次なる取り組みへの教訓を導き出す事は重要です。体験を生かすような取り組み方が行われていない企業が開発に取り組むと、同じようなことを何回も繰り返す事が生じて、開発費用がかさみ、かつ、開発のスピ-ドが遅くなり市場の競争に勝ち残る確立が低くなります。次に、失敗、成功の原因究明のチェックポイントを示します。 
    
 ◆開発活動の成否究明のチェックポイント
 
  a)狙いとする客層の設定は明確になっていたか、
  b)その客層の消費態度を詳細に観察したか
  c)競合品、類似品の存在の有無を調べたか
  d)想定する客層に対してどのような利点を提供できる製品か
  e)それは競合品よりも優れた特性を持つ製品で想定価格は適正であったか
  f)狙いとする客層に適した販売ル-トを検討したか
  g)保有している技術が応用できる範囲を見定めたか
  h)技術提携先の信頼性を何らかの方法で確認したか
  i)開発計画を明確にし、類似品との比較検討を同時に行ったか
  j)研究開発の過程でのデ-タ採取の項目と方法を決めていたか
  k)開発担当者に開発以外の業務を多く与えて、開発の障害要因になっていないか
  l)開発過程で中間報告をさせるタイミングは適正か
  m)試作品のテスト方法、ユ-ザ-テストの方法は妥当であったか
  n)生産コスト、流通コスト、市販価格の相互関係を検討したか
  o)流通業者、消費者の両者に歓迎される価格対策を講じたか
  p)商品の特性に基づく直販か、代理店方式か検討したか
  q)代理店契約(消費者情報吸収の方法を考慮しての)は適正か
  r)販売区域の設定について検討したか
  s)試作品から本生産に移行する過程の検討をしたか
  t)生産技術の検討をしたか、
  u)運転資金の限界を見極めたか
  v)最悪の場合を想定して撤退の限界を過程別に決めたか
 

5.計画立案能力の自己啓発

  新しい問題に取り組む場合、どのような手順と方法で取り組み、目標を何処に置くべきか、そして、開発に要する予算は幾ら見込むのか、研究開発の活動に関する計画を立てる必要があります。きちっとした計画を立てると、計画に沿って活動する様になり、直面する問題点だけに集中して取り組む事が出来るから、あれも、これも、と考えることが少なくなり、心理的な負担が軽減されます。計画を軽視する技術者は開発行動に入ってから、行きつ、戻りつ、が多くなり、開発に伴うロスが増え、かつ、開発スピ-ドが遅くなりコストが必要以上に費やされます。
 
 計画を立てる事に習熟する必要があり、何回かの計画立案の経験を経て、良い計画を立てる技術が体得出来ます。最初の間は巧く立てられないため、計画を立てても効果がないというような考えを持つ場合があります。しかし、しっかりと練り上げた計画を立てると開発活動がやり易くなります。計画を立てることが開発行動そのものである事の理解が必要です。
 
 計画を立てる時に発想の上で障害になる事として、今までに経験した事がない問題に取り組む計画を立てることは出来ません。そのような場合は、次の事を考慮する必要があります。
 
 第一に、開発対象品は幾つの要素技術で構成されるのか、その検討から着手します。全ての要素技術が新規に開発が必要とされる場合は無く、一部に未知の技術が見られ、全ての要素技術が新規開発の対象になるような事は起こり得ません。経験した事がない新規開発の対象になる要素技術が特定されたら、その技術はどのようなところに類似性のあるものが存在するのか、それらの調査をして、開発への取り組み方を考えれば計画立案の手掛かりが得られます。
 
 第二に、開発品を何時までに開発しないと競合企業に勝ち残る事が出来ないのか、または、自企業の生き残り対策として、開発に支出される費用の回収は企業の体力から考えて何時頃から開始が必要なのか、その限界の見極めが必要です。
 
 これらの状況を総合して開発計画を立てる必要があります。計画を立てると、どのようなデ-タを何時、何処で取るべきか、開発活動の内容を充実させることに役立ち、技術が蓄積出来ます。技術開発のノウハウはこのような過程を経過して蓄積されます。
 
 ◆計画を立てる時に必要な事項
 
 ・目的とする成果物が得られる最終期限の設定(品質、性能、原価の目標)
 
 ・要素技術に分解してそれぞれの要素技術の完成期日の設定
           (要素技術を研究する優先順位を決めた上で期日設定)
 
 ・要素技術の研究が完了し、製品にまとめ上げるに必要な期間は余裕を持つようにする。
  まとめ上げる過程で要素技術の再検討が必要になる可能性が出てくる恐れがあるからです。
 
   ・開発活動計画の主要項目が決められたら、それぞれに開発予算の割付をする。
 
 開発に関する行動計画を立てて活動すると、集中的に研究に取り組むことが出来るようになり、その結果、深く掘り下げて観察する余裕が出来、目的にしていた事項以外の技術課題が捉えられ、それらが次の研究開発へと結び付いて行きます。
 

6.人のしないことをする

 他の企業の後追いをすることは、楽で簡単な道であるが、その代わり先発企業に叩かれ、過当競争の渦に巻き込まれることになり、苦しい経営から脱皮出来ません。開発が得意な企業は、人のまねをしないという考え方に徹しています。このことは、能力の問題でなく、考え方の差異で決まってくることです。そのつもりで企業内及び社会の観察を小さな市場を探す積もりで続けていると、観察力が自己啓発されていき、独自性のある開発の手掛かりは得られるようになります。    

 

                

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この記事の著者

新庄 秀光

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