‐設計の問題 第2回‐ 製品・技術開発力強化策の事例(その27)

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 inf342設計上の問題が品質に影響する事項としては、次の5点があります。
 
1.仕様変更
2.特注品
3.図面誤り
4.作業性困難
5.ITが活用される企業風土
 
これらについて、前回は、第1回として、1から2項を記述しました。今回は、第2回として、3から5項を記述します。
 

3.図面誤り

 図面誤りは特注品や新規製品の場合に発生しやすいことです。新規に作成した図面は生産工程のフィルタ-に掛かっていないので、図面誤りが発生することは避け得ないことです。図面誤りの発生を予防するには、構想図ができた段階で各工程の担当者を集めて図面会議を開催し、図面に反映させる必要のある構造上の問題点を指摘させます。設計者は彼らの意見を吸収して、加工に入った段階で問題発生が少なくなるように設計します。
 
 このようにしても図面誤りが時には発生しますが、図面に問題があると判った段階でその事を発見した作業者は担当の設計者を呼び、現場で問題点を説明し、図面修正依頼書を作業者が発行し、これを設計者に渡して、図面訂正の忘れが発生しないような仕組みにします。また、現場で判り難い図面はその都度指摘して製図法の標準を決めるようにします。
 

4.作業性困難

 手や工具が入らないのにその奥にネジを締めなければならない個所があるなど、設計図作成の段階では気がつかないことが現場で問題になります。問題を発見した作業者は直ちに担当した設計技術者を呼び、作業性を阻害しない構造に図面の訂正を行うようにします。仕様の面から図面の変更ができ難い時には、特殊な工具の開発に設計者も一緒になって考え、解決策を講じます。
 

5.ITが活用される企業風土

 CADを始めとして中小企業にもITが利用されて様々な情報処理が行われる様になりました。ところが、表面的な利用の域を出ず有効活用されている例は必ずしも多くありません。例えばCADには部品を登録し再利用する機能が備えられているが、それを使用せず図面を書く道具に過ぎないような利用ですまされている例があります。
 
 このような企業では経営者がITに無関心で従来の感覚から脱皮せず、ITは若いものが使うもの、年配者には馴染み難いと理由をつけて、どのような使用がなされているのか、関知していないことなどが影響しています。かつて、NC工作機械が普及し始めた頃、しぶる熟練技能者にNCへのプログラム入力の研修のため、メ-カに派遣して新しい時代に対応するように要求した経緯がありますが、ITは機械単体の自動化のような問題でなく、経営の全般に影響する情報処理の手段として普及してきているので、経営者がITに無関心であれば意思決定などの重要な段階で支障が生じて経営行動が遅滞することになります。
 
事例:CAD利用と現場との融合化
 
 K社で製図器による手書きの設計で今日に至った設計者は、図面を画きだすまでにかなりの時間をかけています。構想を練るのに時間を必要とするからです。ところが、CADを利用する設計で最初から育った技術者は、図面を仕上げるのは早いが、実際に試作に着手する段階になると、問題点が多く、手直しが頻発する場合も多く見られます。ところが、前者の手書きで完成させた設計図による試作では問題点が少なく、製品の内容に信頼が持てます。手書きで設計図を作成する技術者は自分の設計した製品が生産される過程では確認のために、主な加工に際しては現場で一緒に作業しています。ところが、CADで育った技術者は現場に出たがらないとの事でした。
 
  このような事例はK社の場合に限らず多く見られています。 この事実認識の下、CADで育った技術者に一定期間CADの使用をさせないで設計業務を行うように指導し、極力現場に出て自己の設計した図面が加工の過程でどのような問題に遭遇しているのか、理解を促すように指導する企業もあります。
 
  その意味は、熟練技術者は全体の構想を先に描きだし、問題となる機能を満たすため、構造は如何にあるべきか、構想を練り上げる事に力を注いでいます。ところが、CADで育った技術者は図面を部分から描き出そうとする傾向が強いため、総合的な視点に欠けることから視野の広い技術者を育成する必要性を認識しての処置です。
 
 類似した事として、現場経験の乏しい設計技術者が工作機械の設計を行うと、高い精度の加工が出来ない機械になります。現場経験の豊富な技術者がCADを使用すると、そのような問題が生じないことから、現場...
 inf342設計上の問題が品質に影響する事項としては、次の5点があります。
 
1.仕様変更
2.特注品
3.図面誤り
4.作業性困難
5.ITが活用される企業風土
 
これらについて、前回は、第1回として、1から2項を記述しました。今回は、第2回として、3から5項を記述します。
 

3.図面誤り

 図面誤りは特注品や新規製品の場合に発生しやすいことです。新規に作成した図面は生産工程のフィルタ-に掛かっていないので、図面誤りが発生することは避け得ないことです。図面誤りの発生を予防するには、構想図ができた段階で各工程の担当者を集めて図面会議を開催し、図面に反映させる必要のある構造上の問題点を指摘させます。設計者は彼らの意見を吸収して、加工に入った段階で問題発生が少なくなるように設計します。
 
 このようにしても図面誤りが時には発生しますが、図面に問題があると判った段階でその事を発見した作業者は担当の設計者を呼び、現場で問題点を説明し、図面修正依頼書を作業者が発行し、これを設計者に渡して、図面訂正の忘れが発生しないような仕組みにします。また、現場で判り難い図面はその都度指摘して製図法の標準を決めるようにします。
 

4.作業性困難

 手や工具が入らないのにその奥にネジを締めなければならない個所があるなど、設計図作成の段階では気がつかないことが現場で問題になります。問題を発見した作業者は直ちに担当した設計技術者を呼び、作業性を阻害しない構造に図面の訂正を行うようにします。仕様の面から図面の変更ができ難い時には、特殊な工具の開発に設計者も一緒になって考え、解決策を講じます。
 

5.ITが活用される企業風土

 CADを始めとして中小企業にもITが利用されて様々な情報処理が行われる様になりました。ところが、表面的な利用の域を出ず有効活用されている例は必ずしも多くありません。例えばCADには部品を登録し再利用する機能が備えられているが、それを使用せず図面を書く道具に過ぎないような利用ですまされている例があります。
 
 このような企業では経営者がITに無関心で従来の感覚から脱皮せず、ITは若いものが使うもの、年配者には馴染み難いと理由をつけて、どのような使用がなされているのか、関知していないことなどが影響しています。かつて、NC工作機械が普及し始めた頃、しぶる熟練技能者にNCへのプログラム入力の研修のため、メ-カに派遣して新しい時代に対応するように要求した経緯がありますが、ITは機械単体の自動化のような問題でなく、経営の全般に影響する情報処理の手段として普及してきているので、経営者がITに無関心であれば意思決定などの重要な段階で支障が生じて経営行動が遅滞することになります。
 
事例:CAD利用と現場との融合化
 
 K社で製図器による手書きの設計で今日に至った設計者は、図面を画きだすまでにかなりの時間をかけています。構想を練るのに時間を必要とするからです。ところが、CADを利用する設計で最初から育った技術者は、図面を仕上げるのは早いが、実際に試作に着手する段階になると、問題点が多く、手直しが頻発する場合も多く見られます。ところが、前者の手書きで完成させた設計図による試作では問題点が少なく、製品の内容に信頼が持てます。手書きで設計図を作成する技術者は自分の設計した製品が生産される過程では確認のために、主な加工に際しては現場で一緒に作業しています。ところが、CADで育った技術者は現場に出たがらないとの事でした。
 
  このような事例はK社の場合に限らず多く見られています。 この事実認識の下、CADで育った技術者に一定期間CADの使用をさせないで設計業務を行うように指導し、極力現場に出て自己の設計した図面が加工の過程でどのような問題に遭遇しているのか、理解を促すように指導する企業もあります。
 
  その意味は、熟練技術者は全体の構想を先に描きだし、問題となる機能を満たすため、構造は如何にあるべきか、構想を練り上げる事に力を注いでいます。ところが、CADで育った技術者は図面を部分から描き出そうとする傾向が強いため、総合的な視点に欠けることから視野の広い技術者を育成する必要性を認識しての処置です。
 
 類似した事として、現場経験の乏しい設計技術者が工作機械の設計を行うと、高い精度の加工が出来ない機械になります。現場経験の豊富な技術者がCADを使用すると、そのような問題が生じないことから、現場経験を一通りさせる必要性を重視する工作機械メ-カ-もあります。
 
 油圧機械のメ-カ-での体験では次のような事例があります。工場の隅に設計室があり現場作業者が必要の都度設計室に入ってきて、 忌憚のない意見交換が行われていた時には、 新製品開発に際しての事前調整が比較的に上手く行われていました。 したがって、 図面配布後に設計図の欠陥が判りやり直しをすることは、 少なかったのです。 ところが、 会社の業績が向上して工場の建替えを機会に、 設計室の環境を良くして仕事をやり易いように、 との配慮から土足禁止の設計室にしました。その後は、設計室と現場作業者の連携が悪くなり、 製作段階になって図面欠陥が多発するようになりました。 この企業ではその後、 設計と現場の事前検討会を定例化して問題発生の予防対策を講じています。 CADでデザインした技術者は、手作業でデザインした技術者に比べてデザインの創造性が劣る結果が得られています。CADの方が形状の表現を機械に頼るため、自由に発想して描き出す作業よりも出来栄えもよくない事が原因と推定されます。
 

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この記事の著者

新庄 秀光

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