進捗の見える化:第1回 プロジェクト管理の仕組み (その10)

 この数回はプロジェクト管理の仕組みについて解説していますが、表面的な仕組みではなく、本質的な課題に対応したより進化・深化した仕組みにするための考え方を解説しています。さて、前回までは計画作成について解説しましたので、今回からは計画作成と一対と言っても良い『進捗管理』について解説します。進捗管理は、図40のように次の2つのことを実施することです。
 
 
図40. 計画作成と進捗管理
 
(1) 計画に照らしてプロジェクトを監視する
(2) 計画との乖離に対する是正措置の実施を管理する
 

1. 計画に照らしてプロジェクトを監視する  

             
 「計画に照らしてプロジェクトを監視する」について考えてみます。「計画に照らして」というところが大切です。進捗把握は現状を計画と比較することからはじまるからです。つまり、計画できていないことを進捗管理することはできません。ときどき、計画はスケジュールを書くだけにもかかわらず、進捗がわからないという悩みを聞くことがあるのですが、本当に効果的な進捗管理をしたいのであれば、まずは計画に力を入れる必要があります。計画を作成してそれと比較できるように実績を記録すること、それによって、計画と実績との間の差分(乖離)を明らかにすること、それが、進捗管理の最初のステップです。
 

2. 進捗管理の最初のステップ

 
 それでは、進捗管理の最初のステップについて、もっと詳細に実施上のポイントを考えてみましょう。まず、進捗管理に使う項目を明らかにしたいと思います。プロジェクトの状況を把握するにはプロジェクトを測定する必要があります。プロジェクトの何を測定するのかということです。手間をかければ測定対象はいくらでも増やすことができますが、プロジェクトの効率を落としてしまっては元も子もありません。必要最小限の測定項目を決めなくてはなりません。
 
 図41 は、基本メトリクスセットと呼んでいる、進捗管理に最適な必要最小限の測定対象です。効率よく測定しようと考えると、観測したいものに対するインプットとアウトプットを測定することになります。また、ここにあげている項目はコスト(費用)や品質に関係しており、進捗管理が目的でなくても収集する必要があるものばかりですから、収集にかかるコスト(手間)は小さくなります。
 
図41. 基本メトリクスセット
       
 開発工数は、プロジェクト・メンバーがどのような作業に時間を使ったのかを測定したものです。製造業における製品開発プロジェクトでは、主要なリソースはプロジェクトメンバーです。ほとんどの製品開発プロジェクトで、メンバーがどのような時間の使い方をしているのかがプロジェクト活動に対する最も重要な入力になります。
 
 タスク(作業要素)は、必要となる開発作業の一つひとつで、開発スケジュールにおいて矢印などで表している作業です。作業成果物は、開発を通じて作成される文書や設計のアウトプット。そして、不具合・課題は開発中に発生した不具合や課題です。これらは、製品開発という活動の中で出力されるもので、タスクは、作業規模をあらわす指標であり、作業成果物は開発規模をあらわす指標、そして、不具合・課題は品質レベルを...
あらわす指標です。これらをセットとして考えると、全体としてバランスのとれた指標になっていることがわかると思います。
 
 時間や手間をかければもっとたくさんの指標を収集・管理することもできますが、開発そのものが高い効率性や生産性を求められているのですから、プロジェクト管理についても効率良く実施することが要求されます。基本メトリクスセットで示している4つの指標だけでもしっかりと収集できる仕組みを作ることができれば、効率のよい進捗管理が可能になります。
 
 次回は、可視化、見える化の方法を解説します。
 
 
◆関連解説『技術マネジメントとは』

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