『価値づくり』の研究開発マネジメント (その6)

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ステージゲート
 
前回は、「技術を目いっぱい拡大」に関する活動の中でコア技術について、議論しました。今回も引き続き、このテーマで議論したいと思います。
 

1.コア技術を継続して強化するという視点を持つ企業は少ない理由

 
 既存のコア技術は、前回議論したように、企業の成長の屋台骨ですので、常に強化し続けるという視点を持ち活動することが求められます。しかし、このような視点で自社技術を設定している企業は少ないものです。その理由には、長期的、広い視点で自社が強くすべき技術を設定できていない、言い換えると、「目先の事業展開→必要な技術」という一方通行の視点でしか技術を捉えていないということがあります。日本企業は確かに技術を重視しているとは思います。
 
 しかし、取り組み対象の技術を決定する判断は、あくまで既に明確に顕在化している市場ニーズに対応するものでしかありません。果敢に新たなコア技術を他社に先んじて戦略的に設定するとう姿勢において、日本企業は他の国の企業に後れを取っているように思えます。
 
 例えば、IoT技術を活用してビッグデータを収集し深層学習を使って分析し、サービスを提供するという流れが、産業用の装置メーカーの間で見られます。既にこの分野に10年近く前から目をつけ、GEは、自社はメーカーではなく、サービスカンパニーになるのだと宣言をし、この分野の先陣を切って、これら技術の確立に多くの経営資源を投入している企業にGEがあります。日本企業は、GEなどの動きを見て、この数年でやっと戦略的な取組をするようになりました。もちろんコア技術は、事業の展開の方向性を受けて設定するという部分があるのは事実です。しかし、コア技術が事業戦略の重要なインプットの一つであること、すなわち、「コア技術→事業戦略」という関係にもなければなりません。
 

2.コア技術設定は完全にCEOマター

 
 このように考えると、コア技術設定は完全にCEOマターです。CTOのみに任せておくようなものではありません。例えば、富士フイルムが、銀塩写真フイルムの市場が蒸発しつつある時にCEOに就任した古森氏は、日経ビジネスの記者との対談の中で「2002年頃から2年ほどかけて(コア技術設定を)技術部門のトップ数人とやりました。」(日経ビジネス、2012年7月23日号)と言っています。まさに、コア技術設定は、同社においては、最重要な経営課題であるということです。
 
 実はこのようにCEO自らの活動は、コア技術設定で有名な3Mは随分前から行っています(3Mではコア技術ではなくプラットフォーム技術という名前を使っている)3Mにおいては、このプラットフォーム技術設定は、最重要な経営上の判断の一つです。読者の方々の中には、「また3Mの話か。ウチの事業は3Mとは全然違う」と思われるかもしれません。
 
 しかし、3Mを研究すればするほど、イノベーション創出においては、良く考えられた仕組みを持つ企業であることがわかります。たぶん、3Mは日本の企業の10万倍ぐらい(大げさでもなんでもなく)の時間とエネルギーをイノベーション創出の仕組みを考えることに使ってきていますし、その結果が同社の現状...
 
ステージゲート
 
前回は、「技術を目いっぱい拡大」に関する活動の中でコア技術について、議論しました。今回も引き続き、このテーマで議論したいと思います。
 

1.コア技術を継続して強化するという視点を持つ企業は少ない理由

 
 既存のコア技術は、前回議論したように、企業の成長の屋台骨ですので、常に強化し続けるという視点を持ち活動することが求められます。しかし、このような視点で自社技術を設定している企業は少ないものです。その理由には、長期的、広い視点で自社が強くすべき技術を設定できていない、言い換えると、「目先の事業展開→必要な技術」という一方通行の視点でしか技術を捉えていないということがあります。日本企業は確かに技術を重視しているとは思います。
 
 しかし、取り組み対象の技術を決定する判断は、あくまで既に明確に顕在化している市場ニーズに対応するものでしかありません。果敢に新たなコア技術を他社に先んじて戦略的に設定するとう姿勢において、日本企業は他の国の企業に後れを取っているように思えます。
 
 例えば、IoT技術を活用してビッグデータを収集し深層学習を使って分析し、サービスを提供するという流れが、産業用の装置メーカーの間で見られます。既にこの分野に10年近く前から目をつけ、GEは、自社はメーカーではなく、サービスカンパニーになるのだと宣言をし、この分野の先陣を切って、これら技術の確立に多くの経営資源を投入している企業にGEがあります。日本企業は、GEなどの動きを見て、この数年でやっと戦略的な取組をするようになりました。もちろんコア技術は、事業の展開の方向性を受けて設定するという部分があるのは事実です。しかし、コア技術が事業戦略の重要なインプットの一つであること、すなわち、「コア技術→事業戦略」という関係にもなければなりません。
 

2.コア技術設定は完全にCEOマター

 
 このように考えると、コア技術設定は完全にCEOマターです。CTOのみに任せておくようなものではありません。例えば、富士フイルムが、銀塩写真フイルムの市場が蒸発しつつある時にCEOに就任した古森氏は、日経ビジネスの記者との対談の中で「2002年頃から2年ほどかけて(コア技術設定を)技術部門のトップ数人とやりました。」(日経ビジネス、2012年7月23日号)と言っています。まさに、コア技術設定は、同社においては、最重要な経営課題であるということです。
 
 実はこのようにCEO自らの活動は、コア技術設定で有名な3Mは随分前から行っています(3Mではコア技術ではなくプラットフォーム技術という名前を使っている)3Mにおいては、このプラットフォーム技術設定は、最重要な経営上の判断の一つです。読者の方々の中には、「また3Mの話か。ウチの事業は3Mとは全然違う」と思われるかもしれません。
 
 しかし、3Mを研究すればするほど、イノベーション創出においては、良く考えられた仕組みを持つ企業であることがわかります。たぶん、3Mは日本の企業の10万倍ぐらい(大げさでもなんでもなく)の時間とエネルギーをイノベーション創出の仕組みを考えることに使ってきていますし、その結果が同社の現状の様々なイノベーションの仕組みとなっている点を忘れてはなりません。
 

3.コア技術設定を戦略的に意思決定する

 
 私は多くの企業が「技術は自社の生命線」と言いながら、本当にそのような前提で技術に取り組んでいるかどうかに疑問を持っています。もちろん。日本企業が技術には多いに関心を持っていることは否定しません。しかし、コア技術を長期的に広い視点で戦略的に設定し、継続的に強化するという活動をしている企業は極一部にすぎません。日本企業が今後欧米やアジアの新興国との激烈な競争に勝つためには、コア技術の戦略的設定が欠かせません。
 
 

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この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

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