『価値づくり』の研究開発マネジメント (その15)

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オープンイノベーション
 
 今回も、前回から引き続きオープンイノベーションの経済学の6つ目、「オープンイノベーションによる不確実性への対処」です。
 

1.フランク・ナイト(米経済学者)の言葉

 
 米国の経済学者、フランク・ナイト(1885~1972年)の主張に、「企業は不確実に挑むからこそ、利益を得ることができる」があります。不確実性は悪いものというイメージがありますが、経営においては不確実性がないと、競合企業にも不確実性がなく、完全競争となり、完全競争下では、利益はゼロになってしまうという問題があります。
 
 したがって、経営とは、そもそも不確実性を創意と工夫により低減・対応していくことで、そのような企業の創意と工夫が、最終的な企業の収益の根源となると言えます。
 

2.不確実性への『対応』としてオープンイノベーションを活用

 
 経営において不確実性がある状況とは、事業を進める場合、最初からすべての課題が明確にはなっておらず、事業を進める中で、当初想定できていなかった課題の顕在化や環境の変化による新たな課題の発生、もしくは新たな機会への対応する必要性の発生と定義することができます。
 
 このような状況に、自社が一から対応していては、市場投入の時期がどんどん先に延び、収益創出期間が短くなり、また競争にさらされる期間の長期化や、もっと悪い場合には、自社ではその対応ができず、失敗するということが起こります。
 
 このような状況を避ける方法が、課題や機会に直面した場合に、既に世の中に存在している解決策として外部のアイデアや技術そして能力を活用することです。1項では「経営とは、不確実性を創意と工夫により低減・対応していくこと」と定義しましたが、この「創意と工夫」を外部から持ってきてしまおうというのが、オープンイノベーションです。
 

3.不確実性の『予見』にオープンイノベーションを活用

 
 しかし、このように課題や機会が発生してから『対応』するのでは、オープンイノベーションを活用しても、対応の時間は大きく短縮できる可能性があるものの、追加的時間が掛ることは避けられません。
 
 もう一つのオープンイノベーションの活用法が、そもそも、将来起こりそうなことを『予見』することに外部の能力を使うということです。事後に対処するよりも、当初から課題の存在を想定して事業を展開することができますの...
 
オープンイノベーション
 
 今回も、前回から引き続きオープンイノベーションの経済学の6つ目、「オープンイノベーションによる不確実性への対処」です。
 

1.フランク・ナイト(米経済学者)の言葉

 
 米国の経済学者、フランク・ナイト(1885~1972年)の主張に、「企業は不確実に挑むからこそ、利益を得ることができる」があります。不確実性は悪いものというイメージがありますが、経営においては不確実性がないと、競合企業にも不確実性がなく、完全競争となり、完全競争下では、利益はゼロになってしまうという問題があります。
 
 したがって、経営とは、そもそも不確実性を創意と工夫により低減・対応していくことで、そのような企業の創意と工夫が、最終的な企業の収益の根源となると言えます。
 

2.不確実性への『対応』としてオープンイノベーションを活用

 
 経営において不確実性がある状況とは、事業を進める場合、最初からすべての課題が明確にはなっておらず、事業を進める中で、当初想定できていなかった課題の顕在化や環境の変化による新たな課題の発生、もしくは新たな機会への対応する必要性の発生と定義することができます。
 
 このような状況に、自社が一から対応していては、市場投入の時期がどんどん先に延び、収益創出期間が短くなり、また競争にさらされる期間の長期化や、もっと悪い場合には、自社ではその対応ができず、失敗するということが起こります。
 
 このような状況を避ける方法が、課題や機会に直面した場合に、既に世の中に存在している解決策として外部のアイデアや技術そして能力を活用することです。1項では「経営とは、不確実性を創意と工夫により低減・対応していくこと」と定義しましたが、この「創意と工夫」を外部から持ってきてしまおうというのが、オープンイノベーションです。
 

3.不確実性の『予見』にオープンイノベーションを活用

 
 しかし、このように課題や機会が発生してから『対応』するのでは、オープンイノベーションを活用しても、対応の時間は大きく短縮できる可能性があるものの、追加的時間が掛ることは避けられません。
 
 もう一つのオープンイノベーションの活用法が、そもそも、将来起こりそうなことを『予見』することに外部の能力を使うということです。事後に対処するよりも、当初から課題の存在を想定して事業を展開することができますので(仮に解決策がこの時点でも存在していなくても)、市場への投入時期をより早くそしてより安く実現することができます。
 
 この場合、オープンイノベーション先としては、自社が展開しようとしている市場や技術分野の知見や経験を持つ大学やライトハウスカスタマー(先進的な顧客)、先進的な補完製品やサービスの企業、そして専門家などの水先案内人を活用するということになります。
 
 

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この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

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