ビジネスモデルの欠落 『価値づくり』の研究開発マネジメント (その22)

更新日

投稿日

 
innovation
 
オープンイノベーションに取り組む日本企業に欠けている重大な問題に、『ビジネスモデルの欠落』があります。今回はこのテーマについて解説したいと思います。
 

1. ヘンリー・チェスブローの言葉:ビジネスモデルの必要性

“How do you know what to look for outside, and what to let go to the outside? 
Your business model determines the answer to these questions. 
You look for ideas and technologies that fit with your business model. 
And your internal ideas and technologies that don’t fit are logical candidates to go to the outside. 
So the business model is another key element of the open innovation concept.”
出所:「Everything You Need to Know About Open Innovation」 ヘンリー・チェスブロー
   (Forbes、2011年3月21日)
 この言葉は、オープンイノベーションを世界で最初に提唱したヘンリー・チェスブローがForbes誌の中で語っているもので、同氏は、オープンイノベーションにおけるビジネスモデルの重要性を強調しています。同氏の主張のように、自社のビジネスモデル、すなわち事業展開の型がなければ、外部に何を求め、外部に何を出すかが決まらないということです。
 
 例えば、世界中でのオープンイノベーションのロールモデルとなっているP&Gの場合、同社の強みはその製品を市場に広く提供し浸透させるブランド力やマーケティング力にあり、これらの強みを拠り所として、市場にアピールする製品を早期に実現し市場に広く提供するのが、同社のビジネスモデルです。
 
 このビジネスモデルを使えば、そこにオープンイノベーションにより広く世界から集めてきた新しい技術や製品アイデアに基づき、自社のみでは実現できなかった製品を早期に実現し、それを市場に提供することにより、収益を大きく拡大することができます。
 

2. 日本企業に欠けているビジネスモデル

 
 ビジネスモデルという言葉が日本企業の間で使われるようになって随分経ちますが、未だ明確で有効なビジネスモデルに基づき事業展開をしている企業は少ないように思えます。なんでも欧米企業が良いというのはあまりにも単純過ぎかつ誤った議論ではありますが、ことビジネスモデルの重要性の認識は欧米企業の方が先行しているように思われます。そのため、オープンイノベーションにおいて、欧米企業が先行している一つの理由に、このビジネスモデルの有無や明確性があるのではないかと思います。
 

3. ビジネスモデルとは

 
 一方で、ビジネスモデルという言葉ほど曖昧な言葉はありません。ビジネスモデルという言葉を使って議論していても、その意味することは異なり、議論が噛み合わないということは良くあるものです。このことが示すように、一般的に共有されている明確なビジネスモデルの定義はありませんが、私は以下のようなことを、意味するところとするのが良いのではないかと思います。
 

【ビジネスモデルの定義】

 
(1) 自社の...
 
innovation
 
オープンイノベーションに取り組む日本企業に欠けている重大な問題に、『ビジネスモデルの欠落』があります。今回はこのテーマについて解説したいと思います。
 

1. ヘンリー・チェスブローの言葉:ビジネスモデルの必要性

“How do you know what to look for outside, and what to let go to the outside? 
Your business model determines the answer to these questions. 
You look for ideas and technologies that fit with your business model. 
And your internal ideas and technologies that don’t fit are logical candidates to go to the outside. 
So the business model is another key element of the open innovation concept.”
出所:「Everything You Need to Know About Open Innovation」 ヘンリー・チェスブロー
   (Forbes、2011年3月21日)
 この言葉は、オープンイノベーションを世界で最初に提唱したヘンリー・チェスブローがForbes誌の中で語っているもので、同氏は、オープンイノベーションにおけるビジネスモデルの重要性を強調しています。同氏の主張のように、自社のビジネスモデル、すなわち事業展開の型がなければ、外部に何を求め、外部に何を出すかが決まらないということです。
 
 例えば、世界中でのオープンイノベーションのロールモデルとなっているP&Gの場合、同社の強みはその製品を市場に広く提供し浸透させるブランド力やマーケティング力にあり、これらの強みを拠り所として、市場にアピールする製品を早期に実現し市場に広く提供するのが、同社のビジネスモデルです。
 
 このビジネスモデルを使えば、そこにオープンイノベーションにより広く世界から集めてきた新しい技術や製品アイデアに基づき、自社のみでは実現できなかった製品を早期に実現し、それを市場に提供することにより、収益を大きく拡大することができます。
 

2. 日本企業に欠けているビジネスモデル

 
 ビジネスモデルという言葉が日本企業の間で使われるようになって随分経ちますが、未だ明確で有効なビジネスモデルに基づき事業展開をしている企業は少ないように思えます。なんでも欧米企業が良いというのはあまりにも単純過ぎかつ誤った議論ではありますが、ことビジネスモデルの重要性の認識は欧米企業の方が先行しているように思われます。そのため、オープンイノベーションにおいて、欧米企業が先行している一つの理由に、このビジネスモデルの有無や明確性があるのではないかと思います。
 

3. ビジネスモデルとは

 
 一方で、ビジネスモデルという言葉ほど曖昧な言葉はありません。ビジネスモデルという言葉を使って議論していても、その意味することは異なり、議論が噛み合わないということは良くあるものです。このことが示すように、一般的に共有されている明確なビジネスモデルの定義はありませんが、私は以下のようなことを、意味するところとするのが良いのではないかと思います。
 

【ビジネスモデルの定義】

 
(1) 自社の強みを明確にし、その強みを活用したバリューチェーンおよびサプライチェーンを構築し、そのプラットフォーム上で様々な工夫を行い、事業展開を行うことで高収益を実現する。
 
(2) 同時に、その強みを常に強化し続け、同時に強みでない経営資源は外部を有効に活用する。
 

4. ビジネスモデルとオープンイノベーションは鋳型と鋳物製品の関係

 
 上の定義を見ると、まさにビジネスモデルとオープンイノベーションは表裏を成すもので、オープンイノベーションが鋳物製品とすると、ビジネスモデルはその鋳型(モデル)であることが分かります。
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
研究開発で行うBCPとは 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その66)

1. 企業におけるBCP  2020年3月11日、WHO(世界保健機関)が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的感染爆発)宣言をしました。  同...

1. 企業におけるBCP  2020年3月11日、WHO(世界保健機関)が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的感染爆発)宣言をしました。  同...


MVPの活用 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その82)

  ◆ 研究開発にMVPを活用する  今回は「研究開発にMVPを活用する」をテーマに解説します。  MVPとは、Minimum Via...

  ◆ 研究開発にMVPを活用する  今回は「研究開発にMVPを活用する」をテーマに解説します。  MVPとは、Minimum Via...


1400件の顧客特許を読んだらどうなるか~技術企業の高収益化:実践的な技術戦略の立て方(その17)

【目次】 今回は、ある技術者の変身のお話です。半年前まで営業の下請け的に開発するのが仕事だと思っていた技術者が、顧客の潜在ニーズを先...

【目次】 今回は、ある技術者の変身のお話です。半年前まで営業の下請け的に開発するのが仕事だと思っていた技術者が、顧客の潜在ニーズを先...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
設計部門とリスク管理(その2)

【設計部門とリスク管理 連載目次】 1. リスク管理とは目標達成までのシナリオ作成 2. コンティンジェンシープランの注意事項 3. リスク管理...

【設計部門とリスク管理 連載目次】 1. リスク管理とは目標達成までのシナリオ作成 2. コンティンジェンシープランの注意事項 3. リスク管理...


進捗の可視化は必要最小限にするのがポイント(その1)

  1. メトリクスによる進捗管理サイクル    進捗管理とは、作成した計画にもとづいて現在の状況を把握することと、計画と実績に...

  1. メトリクスによる進捗管理サイクル    進捗管理とは、作成した計画にもとづいて現在の状況を把握することと、計画と実績に...


技術資源の有効活用: 事例紹介 (その1)

 今回から2回に分けて、TRMによる活動の事例紹介をいたします。TRM(Technical Resource Management)は自社が保有する潜在的...

 今回から2回に分けて、TRMによる活動の事例紹介をいたします。TRM(Technical Resource Management)は自社が保有する潜在的...