設計者の流出防止策は 中国企業の壁(その21)

投稿日

 
  技術マネジメント
 
 前回、中国企業の設計者には、設計者としての考え方、知識、経験、どれもが不足している。そのために設計に起因する不良が発生し大きな問題になった事例を紹介しました。
 
 こうした問題を起こさないためには、設計者のレベルを上げることが重要で、そのためには設計者に対して設計の基礎部分から教育していくことが必要となるとも書きました。
 
 ある中国企業では、日本の代理店からの提案で日本の品質管理を取り入れるため、専門家の指導を仰いでいます。設計に関しても、日本の代理店がその道のプロに指導させることを考え、専門家を探していました。
 
 ところが、設計を指導する専門家を中国工場に送り込むのは、中止するという判断が下されました。
 
 設計者を基礎的なところから教育をして育成し、レベルを上げることが問題を解決するためのあるべき姿だというのは、間違いありません。日本の代理店も十分理解しています。
 
 ではなぜ育成する、レベルを高めることを止める判断をしたのでしょうか?
 
 それは、設計者を育成することによるリスクを避けることを優先したのでした。ここで言うリスクとは、育てた設計者が競合他社に自分の技術を売り込み転職してしまうことです。中国人設計者にすれば、より高い給料を払ってくれるところに行く、ごく自然な行動と言えるのでしょう。
 
 この中国企業がある地域には、同じ製品を作っている競合企業が何社もありますが、代理店が日本的思想や技術を持ち込んだこともあり、技術的には他社を常にリードしていました。ところが皮肉にも技術力の高さが故に、この企業が競合企業への人材の供給源になっていたのです。
 
 設計者もそうですが、品質管理、生産技術者なども知識を得ると競合に移っていく人が一定の割合でいるのです。日本でその製品の展示会があったときに、競合企業のブースについ最近まで在籍していた設計者が説明員としていたという話もありました。
 
 このような...
 
  技術マネジメント
 
 前回、中国企業の設計者には、設計者としての考え方、知識、経験、どれもが不足している。そのために設計に起因する不良が発生し大きな問題になった事例を紹介しました。
 
 こうした問題を起こさないためには、設計者のレベルを上げることが重要で、そのためには設計者に対して設計の基礎部分から教育していくことが必要となるとも書きました。
 
 ある中国企業では、日本の代理店からの提案で日本の品質管理を取り入れるため、専門家の指導を仰いでいます。設計に関しても、日本の代理店がその道のプロに指導させることを考え、専門家を探していました。
 
 ところが、設計を指導する専門家を中国工場に送り込むのは、中止するという判断が下されました。
 
 設計者を基礎的なところから教育をして育成し、レベルを上げることが問題を解決するためのあるべき姿だというのは、間違いありません。日本の代理店も十分理解しています。
 
 ではなぜ育成する、レベルを高めることを止める判断をしたのでしょうか?
 
 それは、設計者を育成することによるリスクを避けることを優先したのでした。ここで言うリスクとは、育てた設計者が競合他社に自分の技術を売り込み転職してしまうことです。中国人設計者にすれば、より高い給料を払ってくれるところに行く、ごく自然な行動と言えるのでしょう。
 
 この中国企業がある地域には、同じ製品を作っている競合企業が何社もありますが、代理店が日本的思想や技術を持ち込んだこともあり、技術的には他社を常にリードしていました。ところが皮肉にも技術力の高さが故に、この企業が競合企業への人材の供給源になっていたのです。
 
 設計者もそうですが、品質管理、生産技術者なども知識を得ると競合に移っていく人が一定の割合でいるのです。日本でその製品の展示会があったときに、競合企業のブースについ最近まで在籍していた設計者が説明員としていたという話もありました。
 
 このような事情から教育しないで、そこそこのレベルの設計者に設計をさせることにしました。それは競合への技術流出(漏洩)を防ぐことが目的です。仮に設計に問題点があった場合は、日本側で可能な限りチェックして事前に押える仕組みとしました。
 
 あるべき姿と現実の問題をどのように埋めていくか、考えされられる事例だと思います。読者の方でも同じような状況になっている会社もあることでしょう。そうした場合、どのような対策を取っているのでしょうか。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
味覚 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その154)

  現在、イノベーション実現に向けての「思考の頻度を高める方法」を解説していますが、そのための2つ目の要素「同じ一つの行動をするにしても思...

  現在、イノベーション実現に向けての「思考の頻度を高める方法」を解説していますが、そのための2つ目の要素「同じ一つの行動をするにしても思...


知識・経験を整理するフレームワーク 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その61)

   前回から「思い付く」ための「知識・経験を整理するフレームワーク」の解説をしています。今回も引き続きこの解説をします。 ◆関連解説記...

   前回から「思い付く」ための「知識・経験を整理するフレームワーク」の解説をしています。今回も引き続きこの解説をします。 ◆関連解説記...


取り組みへの意思決定 普通の組織をイノベーティブにする処方箋(その90)

   今回も引き続き、エドワード・デシが内発的動機付けに必要と主張している2つの要素「自律性」と「有能感」の内、後者の「有能感獲得に向けて...

   今回も引き続き、エドワード・デシが内発的動機付けに必要と主張している2つの要素「自律性」と「有能感」の内、後者の「有能感獲得に向けて...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
システム設計8 プロジェクト管理の仕組み (その40)

 前回のシステム設計7に続いて解説します。    システム要件の一つひとつについて、サブシステム構成における振る舞いを記述し、各々のサブシス...

 前回のシステム設計7に続いて解説します。    システム要件の一つひとつについて、サブシステム構成における振る舞いを記述し、各々のサブシス...


価値創造の鍵を握るアナログ知

1.アナログ知を高めるとは    最近公文式教室のCMをテレビで見かけます。公文式教室は50年以上の歴史があり、現在は日本にとどまらず48の...

1.アナログ知を高めるとは    最近公文式教室のCMをテレビで見かけます。公文式教室は50年以上の歴史があり、現在は日本にとどまらず48の...


設計改善研究会の成果 伸びる金型メーカーの秘訣 (その39)

        今回、紹介する機械装置メーカーは、株式会社 K製作所です。同社は、自動車メーカーや工作機械メ...

        今回、紹介する機械装置メーカーは、株式会社 K製作所です。同社は、自動車メーカーや工作機械メ...