【この連載の前回:内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その6)へのリンク】
「内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その4)から(その6)」で、具体的な事例を使って「第1原則:書き手と読み手の違いを認識する」に関することを解説しました。書き手と読み手の違いを認識して書くことが、内容が明確に伝わる技術文書を書くうえでのスタートだからです。
今回は、過去3回とは違った視点で書き方の第1原則について解説します。“ことわざ”という視点です。書き方の第1原則を理解するうえで参考になる“ことわざ”があります。そこで、“ことわざ”と書き方の第1原則との関係を解説します。
1.我が身をつねって人の痛さを知れ
「内容が明確に伝わる技術文書の書き方の3原則」での第1原則は、「書き手と読み手の違いを認識する」です。
これは、「書き手と読み手の違いを認識したうえで、読み手のことを考えて技術文書を書く」、すなわち、「読み手の立場に立って技術文書を書く」という考え方です。
ここで参考になるのが、「我が身をつねって人の痛さを知れ」という“ことわざ”です。「我が身をつねって人の痛さを知れ」とは、自分の身をつねったその痛みから、人の痛みを知るということで、他人の痛みや苦しみを自分自身の痛みに置き換え相手を思いやることが大事だという教えです。
これを、技術文書を書く場合に当てはめると、「自分が書いた技術文書を読み手の立場に立って読んでみると、わかりにくい(内容が明確に伝わらない)と思う書き方がわかる。自分が読み手だったらこのような書き方をしないでほしいと思う。読み手のことを思いやり、わかりやすい(内容が明確に伝わる)書き方で書くことが大事」という解釈になります。
自分が書いた技術文書を、「書いた内容を確認する」のような書き手の立場に立って読んでいると、わかりにくい(内容が明確に伝わらない)と思う書き方を見つけることはできません。「自分が読み手だったら、この書き方で内容が明確に伝わるか」という読み手の立場に立って読むことでわかりにくい(内容が明確に伝わらない)と思う書き方を見つけることができます。
次回に続きます。
【参考文献】
森谷仁著、「マンガでわかる技術文書の書き方」、オーム社、令和4年3月25日