前回のその49に続いて解説します。
【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方
【3.14 中国工場での従業員教育の進め方】
(3)その教育項目を繰り返し教育する
部門や工程ごとに決めた教育項目が仮に10項目あったとしましょう。教育効果を上げるには1番から始め、10番まで教えるといった作業を何度も繰り返し行います。
教育というと、常に新しいこと、違うことを教えなくてはいけないと考えている人がいますが、決してそのような必要はなく、同じ項目・内容を繰り返し教えることで問題ありませんし、教育効果も上がります。
この繰り返し教育を行う理由は、次の二つの理由からです。
- 一つは、1度教えただけでは身に付かないからです。中国人作業者や検査員が1度で覚えてくれるなら、こんなに楽なことはありません。簡単に覚えてくれない、身に付かないから同じことを何度も教育するのです。
- もう一つは、中国工場には常に新人がいるためです。新人も同様に教育し、仕事に必要なことを身に付けてもらわなくてはなりません。繰り返し教育を続けていれば、新人がどのタイミングで入ってきてもどこから始めるかの違いだけで問題なく対応できます。
◆ 繰り返し教育の大切さを感じた出来事
繰り返し教育の大切さを身を持って感じた出来事がありました。筆者が中国駐在員の時に教育係として、中国人スタッフ30名くらいに対して勉強会を開いた時のことです。教育内容や目的は中国人スタッフの仕事と会社での役割を認識して、自分の仕事の大切さや重要性を理解してもらうことでした。
この勉強会の後、ある女性スタッフから「毎回教育をしてもらっているが、私には今回、先生の質問や問題の答えが全部分かりました。お陰でとても自信になりました」と言われたのです。彼女にとってその内容の勉強会は3回目であったと思い...
正直この言葉で、同じ内容のことを繰り返し教育することでいいんだ、大切なんだと実感した上、何回か聞いて覚えることで、中国人スタッフの自信にもつながるのだと気付かされました。
次回は、中国人が中国人に教える仕組みを作ることのメリットから解説を続けます。
【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行、筆者のご承諾により抜粋を連載