【第2章 中国工場の実状を知る】
【日本工場と中国工場の違い】
前回のその26に続いて解説します。
(3) 部品・材料
中国メーカーから調達している部材の品質レベルが低いことで起きる品質問題で多くの日系企業が困っています。一方、中国企業も中国メーカーから自社工場で使う部材を調達していますが、実は、中国企業も調達先中国メーカーの品質問題で困っているのです。ですから、この点に関して言えば、日本工場(日系企業)と中国工場(中国企業)とで違いはなく、同じ状況にあると言えるのです。
中国企業も自社製品の品質をよくするためには、使用する部材の品質が重要だということは理解しています。しかし、納入される部材に不良品が多く、その対応に苦慮しています。多くの中国企業が顧客の要求に応えられていないように、調達先中国メーカーも顧客である中国企業の要求に応えられないということなのです。
(4) その他
もうひとつ日本工場と中国工場とで大きな違いがあります。それは「安全意識」です。日本の工場では労働災害や事故は、ゼロを目指しています。工場の中に「無事故日数○○日一継続中」というような看板をよく見かけ、工場での安全意識は高いと言えます。
一方、中国では、鉄材の機械加工をしている工場でも安全靴を履いていないとか、保護メガネをしていない、機械騒音の大きいところでも耳栓をしていないなど安全意識は十分ではなく、まだまだ低いと言わざるを得ません。
事例ですが、クレーン吊り具のフックに付いているはずの「外れ止め金具」が、すべて外してあった中国の工場がありました。これなどは、作業の際に邪魔になるということで外されていたのですが、万が一、事故が起きたときのことを考えれば、外すことなど日本の工場ではあり得ないことです。
【中国異文化コミュニケーション】
1. 中国の政治制度
(1) 民主集中制と中国共産党による指導
民主集中制とは、三権分立という考え方ではなく、すべての権力は人民にあるという考え方であり、憲法でも規定されています。実際には人民が国家政治に参加することは不可能なので、全国人民代表大会(いわゆる全人代と呼ばれているもの)が人民を代表して権力を行使して、人民がそれを監視するという制度としています。
一方で、憲法では、中国共産党を中国における「指導政党」として位置付けています。中国共産党が全人代を含め国家を指導することになっています。
(2) 全人代の役割と行政機関
全人代は、集中民主制により、立法権・行政権・司法権を持っています。これらの象徴として、次のよう権限を持っています。
- 国家主席、副主席の指名
- 国務院総理(首相)の任命
- 中国軍事委...