中国工場の実状を知る 中国工場の品質改善(その45)

更新日

投稿日

中国工場

 前回のその44に続いて解説します。

【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方

【3.12 中国要因事例】

 中国工場で改善フローを進める時、中国独特の要因を見逃さないことが大事だと話しました。ここでは、その中国独特の要因について3Mに方法と測定を加えた5Mを切り口として、それぞれについて起こり得る問題を取り上げます。

(1)人

 人、ここでは作業者としましょう。作業者に関してスキルが向上しないという現象があります。その要因を見ていくと、作業者の流動性(離職率)が高く定着しないので、スキルがなかなか向上しないということになります。さらに探っていくと、離職に関しては季節性があることが分かります。

 中国の離職率は、年間を通して一定ではありません。2月の春節(旧正月)、5月の労働節、そして10月の国慶節という三つの大きな休みがあり、その前後で離職率が高くなります。特に春節の時が人の流動が一番高くなります。中国の会社は春節の時にボーナスを出すので、それをもらって会社を辞める作業者が多くいます。

 この季節性がどのような影響を与えるかというと離職者が増えることでその補充をすることになりますから春節後の工場には新人作業者が大勢集まることになります。慣れない新人が作業に当たるため当然、品質に影響が出ます。ある日系工場が不良率のデータを見たところ、やはり春節後の不良率が高くなっていたそうです。

 自社工場でこのようなことにならないよう十分注意してほしいと思います。また取引先においても同じことがいえるので、購入している部材についても、春節後の生産品の品質には十分注意が必要です。

 次に、5Mの現象と原因を整理して示します。

  • Man(人):スキルが向上しない。原因:従業員が定着しない。さらに季節性も影響する。
  • Machine(機械、設備):機械の調子が悪い。チョコ停が多い。原因:メンテナンスをしない⇒重要性を理解していない。
  • Material(材料、部品):勝手な変更。原因:単純ミス、仕様取り交わし不備。部材がない(発注ミス、納期遅れ)。コストが合わない。
  • ...

中国工場

 前回のその44に続いて解説します。

【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方

【3.12 中国要因事例】

 中国工場で改善フローを進める時、中国独特の要因を見逃さないことが大事だと話しました。ここでは、その中国独特の要因について3Mに方法と測定を加えた5Mを切り口として、それぞれについて起こり得る問題を取り上げます。

(1)人

 人、ここでは作業者としましょう。作業者に関してスキルが向上しないという現象があります。その要因を見ていくと、作業者の流動性(離職率)が高く定着しないので、スキルがなかなか向上しないということになります。さらに探っていくと、離職に関しては季節性があることが分かります。

 中国の離職率は、年間を通して一定ではありません。2月の春節(旧正月)、5月の労働節、そして10月の国慶節という三つの大きな休みがあり、その前後で離職率が高くなります。特に春節の時が人の流動が一番高くなります。中国の会社は春節の時にボーナスを出すので、それをもらって会社を辞める作業者が多くいます。

 この季節性がどのような影響を与えるかというと離職者が増えることでその補充をすることになりますから春節後の工場には新人作業者が大勢集まることになります。慣れない新人が作業に当たるため当然、品質に影響が出ます。ある日系工場が不良率のデータを見たところ、やはり春節後の不良率が高くなっていたそうです。

 自社工場でこのようなことにならないよう十分注意してほしいと思います。また取引先においても同じことがいえるので、購入している部材についても、春節後の生産品の品質には十分注意が必要です。

 次に、5Mの現象と原因を整理して示します。

  • Man(人):スキルが向上しない。原因:従業員が定着しない。さらに季節性も影響する。
  • Machine(機械、設備):機械の調子が悪い。チョコ停が多い。原因:メンテナンスをしない⇒重要性を理解していない。
  • Material(材料、部品):勝手な変更。原因:単純ミス、仕様取り交わし不備。部材がない(発注ミス、納期遅れ)。コストが合わない。
  • Method(方法):手順書(ルール)を守らない。原因:存在自体を知らない。守れない(不可抗力)。守る意思がない。
  • MeaSurement(測定、検査):検査が甘くなる。原因:不良率が高い。納期が間に合わない。数量が足りなくなる。

 次回は、(2) Machine(機械、設備)から解説を続けます。 

 【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行、筆者のご承諾により抜粋を連載 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
新規開拓のどこを見ればよいか 中国工場の品質改善(その65)

 前回のその64に続いて解説します。 【第4章】中国新規取引先選定のポイント ◆ 新規開拓・工場のどこを見ればよいか  ここでは新規開拓で工場を...

 前回のその64に続いて解説します。 【第4章】中国新規取引先選定のポイント ◆ 新規開拓・工場のどこを見ればよいか  ここでは新規開拓で工場を...


金型とは、金型産業を深く知る(その2)

    造形の要である金型は「製品の産みの親」ともいわれています。工法はプレス、鍛造、鋳造、射出工程などがあり、素材である金属...

    造形の要である金型は「製品の産みの親」ともいわれています。工法はプレス、鍛造、鋳造、射出工程などがあり、素材である金属...


コスト削減案の5ステップ育成法

 コスト削減案は柔らかい段階(煮詰まっていない、思いつきレベル)から実施可能レベルまで段階を踏んで育てることで、実現に結び付く可能性が高まると考えています...

 コスト削減案は柔らかい段階(煮詰まっていない、思いつきレベル)から実施可能レベルまで段階を踏んで育てることで、実現に結び付く可能性が高まると考えています...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
工場での色管理・その他の注意点 中国企業の壁(その43)

        工場の識別表示の手段として色を使うこと。色の持っている意味を信号を例として説明すると理解が深まるというこれまでの連載記事に対して、読...

        工場の識別表示の手段として色を使うこと。色の持っている意味を信号を例として説明すると理解が深まるというこれまでの連載記事に対して、読...


製造工場における、効果的な朝礼の実施について

        今回は、一般的な製造業の工場での、効果的な朝礼の実施について、どのような情報発信・取り組みを行っていて、朝礼の場を有効活用しているの...

        今回は、一般的な製造業の工場での、効果的な朝礼の実施について、どのような情報発信・取り組みを行っていて、朝礼の場を有効活用しているの...


業務効率化による生産性革命の危険性

 政府は「生産性革命」と称して労働生産性(一人当たり付加価値額)向上を図ろうといています。生産性が改善しなければ日本の経済成長性を示すGDP(国内の付加価...

 政府は「生産性革命」と称して労働生産性(一人当たり付加価値額)向上を図ろうといています。生産性が改善しなければ日本の経済成長性を示すGDP(国内の付加価...