【実践編 第4章目次】
第4章 標準作業で作業のムダを取る
1. 標準作業で作業のスタンダードを設定する←今回の記事
2. 動作分析で作業のムダを取る
3. 自働化と人離しで作業者の負担を減らす
4. 生産を守る保全・安全の取り組みを進める
5. 「目で見る管理」で現状をオモテ化する
【この連載の前回:流れ生産:ジャスト・イン・タイム生産(その62)へのリンク】
1. 標準作業で作業のスタンダードを設定する
生産基準に必要な要素と、現状分析をもとにした標準作業の設定手順を説明します。
(1)標準作業とは何か?
◆標準作業とは生産の基準
製造現場では、人・モノ・機械などを重要な要素として生産活動を行なっています。標準作業は、これらを効率よく組み合わせた作業の基準を定めたもので、いわば、その仕事のスタンダードを示すもの。生産の基準といえるでしょう。
生産活動を行なうには、以下の4つの基準を定めることが必要です。これにより生産計画が立てられるので、顧客の注文に合わせて計画通りに納品するために、欠かせないのです。それだけではなく「基準なきところに改革なし」といわれるように、基準があるから、それをもとに改革点・改善点を見出すことができます。改革のためにも標準作業はなくてはならないのです。
●4つの基準
- 品質(Quality)・・どんな品質基準のモノをつくるのか?
- コスト (Cost)・・どのくらいのコストでつくるのか?
- 納期(Delivery)・ いつまでに、いくつつくるのか?
- 安全(Safety)・・ 安全につくれるのか?
◆作業標準との違い
標準作業とよく似た言葉に「作業標準」があります。
「作業標準」が単位作業の標準であるのに対して「標準作業」は、製品完成までの工程全体の標準を定めたもので、範囲はずっと広くなります。「作業標準」の目的は作業手順と品質確認であり、一定の条件下で、所定の品質の製品を、所定の工数(標準時間)、所定の時間(リードタイム)で生産するために基準となる作業方法を示したものです。一定の作業条件・作業方法・管理方法・使用材料・使用設備・その他の注意事項などを規定します。
一方 「標準作業」は、 タクトタイム作業順序・標準手持ちが重要な課題となります。また、作業標準は、主に、生産技術部門が中心になって作成し、標準作業は、現場の第一線の監督者が、このようにしたいという意志を反映したものという違いもあります。
◆標準作業の3要素
標準作業には、最低限、盛り込まれなければならない3つの要素があります。①どのくらいのテンポ(タクトタイム)で、②どのような手順(作業順序)で、③全体のバランスをどのようにとって生産するのか(標準手持ち)です。これを、 「標準作業の3要素」と呼びます。
要素① タクトタイム
タクトタイムとは、ひとつの製品をつくるのにかかる時間のことで、顧客が要求する生産ピッチをいいます。顧客の要求数をもとにした生産数量と稼働時間によって決まります。したがって、これはすべての生産活動の基準となるものです。
要素② 作業順序
製品をつくる際に、作業者が行なう作業の順序を示すものです。一般に 「工順」と呼ばれる工程順序や製品の流れではなく、あくまでも、作業者...
要素③ 標準手持ち
作業を進めるうえで、人が離れている間に機械の送りをかけたり、工程や作業のバランスを整えるために、最低限、必要となる仕掛り品の個数を「標準手持ち」といいます。これには、ラインの前後に樋いてある材料と完成品は含みません。
次回は、(2)標準作業の設定手順から、解説を続けます。
【出典】古谷誠 著 『会社を強くする ジャスト・イン・タイム生産の実行手順』中経出版発行(筆者のご承諾により連載)