MVPの活用 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その82)

更新日

投稿日

技術マネジメント

 

◆ 研究開発にMVPを活用する

 今回は「研究開発にMVPを活用する」をテーマに解説します。

 MVPとは、Minimum Viable Productの略で「顧客に提供する価値を表す最も小さな製品」を示します。書籍『リーン・スタートアップ』では「実用最小限の製品」として解説され、皆さまも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。有名な成功事例としてFacebookやAirbnbなどがあります。

 MVPは市場における具体的な潜在ニーズを発掘する手法として、VUCAの時代[1]におけるイノベーティブ商品開発には欠かせないものとなっています。潜在ニーズの仮説検証を進める上で、次の3つの条件があります。

  • (1) 最短:MVP開発期間は最短である必要があります。これは市場機会を逃さないための鉄則です。
  • (2) 最小:MVPは市場価値に絞った最小構成とします。これは顧客にとっての最重要の課題とその解決策を絞り込み、売れる商品を企画するための近道となります。
  • (3) 最近:MVPは最も近くでニーズを引き出すものです。市場を単に想像するのではなく、実際に市場の最も近く、つまりリアルな声を収集することで、潜在ニーズを明確で確実なものにします。

 既存商品とは異なる、自社にとってのイノベーティブ商品は(1)最短、(2)最小、(3)最近、を条件に開発を進めていきましょう。

 

 次に研究開発で取り組むと効果的なMVP形式をいくつか紹介します。

 市場ニーズの不確実性が低い場合は、完成品に近いプロトタイピングやモックアップ、ワイヤーフレームなどがよいでしょう。数万円から多くても100万円程度の投資をかけるもので、当然ながらいくつかの見込み客がいることが前提です。

 反対に市場ニーズが不確実な場合は、ランディングページやコンセプトムービー、手書きのスケッチといった完成をイメージさせるMVPを用意します。また外観モデルやハリボテ、シミュレーションデータといった実現方法もあり、これは狙う商品の顧客接点に応じて方式を選定します。

 投資ですが、市場があるのか不明・不確定な状態であるため、投資額はゼロから高くても数万円程度が妥当でしょう。実際にいくつかのサービスやアプリケーション商品開発で、顧客の利用シーンや活用方法を静止画や動画で表現したMVPは効果的でした。

 技術のみにフォーカスして表現するMVPもありますが、さきほどのように顧客にとってのメリットに重点をおくMVPは、具体的な反応が得られるよい方法といえます。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 この...

技術マネジメント

 

◆ 研究開発にMVPを活用する

 今回は「研究開発にMVPを活用する」をテーマに解説します。

 MVPとは、Minimum Viable Productの略で「顧客に提供する価値を表す最も小さな製品」を示します。書籍『リーン・スタートアップ』では「実用最小限の製品」として解説され、皆さまも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。有名な成功事例としてFacebookやAirbnbなどがあります。

 MVPは市場における具体的な潜在ニーズを発掘する手法として、VUCAの時代[1]におけるイノベーティブ商品開発には欠かせないものとなっています。潜在ニーズの仮説検証を進める上で、次の3つの条件があります。

  • (1) 最短:MVP開発期間は最短である必要があります。これは市場機会を逃さないための鉄則です。
  • (2) 最小:MVPは市場価値に絞った最小構成とします。これは顧客にとっての最重要の課題とその解決策を絞り込み、売れる商品を企画するための近道となります。
  • (3) 最近:MVPは最も近くでニーズを引き出すものです。市場を単に想像するのではなく、実際に市場の最も近く、つまりリアルな声を収集することで、潜在ニーズを明確で確実なものにします。

 既存商品とは異なる、自社にとってのイノベーティブ商品は(1)最短、(2)最小、(3)最近、を条件に開発を進めていきましょう。

 

 次に研究開発で取り組むと効果的なMVP形式をいくつか紹介します。

 市場ニーズの不確実性が低い場合は、完成品に近いプロトタイピングやモックアップ、ワイヤーフレームなどがよいでしょう。数万円から多くても100万円程度の投資をかけるもので、当然ながらいくつかの見込み客がいることが前提です。

 反対に市場ニーズが不確実な場合は、ランディングページやコンセプトムービー、手書きのスケッチといった完成をイメージさせるMVPを用意します。また外観モデルやハリボテ、シミュレーションデータといった実現方法もあり、これは狙う商品の顧客接点に応じて方式を選定します。

 投資ですが、市場があるのか不明・不確定な状態であるため、投資額はゼロから高くても数万円程度が妥当でしょう。実際にいくつかのサービスやアプリケーション商品開発で、顧客の利用シーンや活用方法を静止画や動画で表現したMVPは効果的でした。

 技術のみにフォーカスして表現するMVPもありますが、さきほどのように顧客にとってのメリットに重点をおくMVPは、具体的な反応が得られるよい方法といえます。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 このようにMVPの方式は数多くありますが、大切なことは市場ニーズを獲得するための仮説検証ツールであること、リアルな市場の声に基づき、軌道修正をかけながら商品開発することが重要です。不確定な世の中において、イノベーティブ商品を生み出すためには、MVPを活用しリアルな市場の声を収集することが重要です。


 [1]VUCAの時代:「Volatility(激動)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(不透明性)」という予測困難な時代

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

川崎 響子

革新的なテクノロジー事業を最速&確実に量産まで立ち上げます。 世界No.1商品を創る企業を世の中に送り出し続けることが私の使命です。

革新的なテクノロジー事業を最速&確実に量産まで立ち上げます。 世界No.1商品を創る企業を世の中に送り出し続けることが私の使命です。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
アイディアの深掘りとは 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その41)

        新規事業・新商品の開発アイディアを出すために発想ノウハウを質問する方が多いのですが、アイディ...

        新規事業・新商品の開発アイディアを出すために発想ノウハウを質問する方が多いのですが、アイディ...


味覚 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その154)

  現在、イノベーション実現に向けての「思考の頻度を高める方法」を解説していますが、そのための2つ目の要素「同じ一つの行動をするにしても思...

  現在、イノベーション実現に向けての「思考の頻度を高める方法」を解説していますが、そのための2つ目の要素「同じ一つの行動をするにしても思...


イノベーションの発想 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その121)

  前回から、「発想のフレームワークを使ってイノベーティブなアイデアを発想する手順」の次のステップで、かつ最後のステップである「切り取った...

  前回から、「発想のフレームワークを使ってイノベーティブなアイデアを発想する手順」の次のステップで、かつ最後のステップである「切り取った...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
開発者が意識したい1日のスケジューリング(午後~夜編)

  前回の記事では一日の業務を有意義なものにするため、就業前の朝の時間と午前中の脳がフレッシュなうちにアイデア創出やメンバーとのコミュニケ...

  前回の記事では一日の業務を有意義なものにするため、就業前の朝の時間と午前中の脳がフレッシュなうちにアイデア創出やメンバーとのコミュニケ...


技術経営を考える

【ものづくり企業のR&Dと経営機能 記事目次】 管理力より技術力を磨け 技術プラットフォームの重要性 手段としてのオープンイノベーション...

【ものづくり企業のR&Dと経営機能 記事目次】 管理力より技術力を磨け 技術プラットフォームの重要性 手段としてのオープンイノベーション...


システム設計6 プロジェクト管理の仕組み (その38)

◆システム設計は仮説と検証の繰り返し     前回は、システム(ここでは製品も含めてシステムと呼ぶことにします)に必要とされる要件を漏れなく...

◆システム設計は仮説と検証の繰り返し     前回は、システム(ここでは製品も含めてシステムと呼ぶことにします)に必要とされる要件を漏れなく...