合金状態図-2 共晶・包晶・偏晶反応 金属材料基礎講座(その18)

更新日

投稿日

 

 全率固溶型以外の状態図のタイプとして共晶反応型、包晶反応型、偏晶反応型の3種類があります。これらの典型的な状態図を下図に示します。これらの状態図は実用合金において頻繁に見られます。そのため、合金設計をする時にとても重要になります。

金属材料

 図.状態図のパターン2

 一つ目は共晶反応です。状態図では2つの液相線が下がり、横方向の直線と交わります。この交点を共晶組織、共晶点、共晶組成などと呼びます。そして、この時の温度を共晶温度と呼びます。共晶反応では一つの液相から2種類の固溶体が共晶反応組織として晶出します。この反応式を下に示します。

  L⇌α+β

 なお、共晶組成以外の組成だけれども、共晶反応の直線を通過する時は、あらかじめ初晶としてαあるいはβが存在...

 

 全率固溶型以外の状態図のタイプとして共晶反応型、包晶反応型、偏晶反応型の3種類があります。これらの典型的な状態図を下図に示します。これらの状態図は実用合金において頻繁に見られます。そのため、合金設計をする時にとても重要になります。

金属材料

 図.状態図のパターン2

 一つ目は共晶反応です。状態図では2つの液相線が下がり、横方向の直線と交わります。この交点を共晶組織、共晶点、共晶組成などと呼びます。そして、この時の温度を共晶温度と呼びます。共晶反応では一つの液相から2種類の固溶体が共晶反応組織として晶出します。この反応式を下に示します。

  L⇌α+β

 なお、共晶組成以外の組成だけれども、共晶反応の直線を通過する時は、あらかじめ初晶としてαあるいはβが存在しています。そして、共晶温度において残った液相が共晶反応を起こします。共晶反応のあとはα相、β相それぞれ溶解度の変化に伴って濃度が変わり、微細な析出を起こしながら室温まで冷却されます。

 2つ目は包晶反応です。状態図では包晶反応の直線の上側は一つの液相線ですが、下側に固相線と液相線が現れます。これはあらかじめ晶出した初晶αと液相が反応して、新しいβ相が晶出します。この時、β相がα相を包み込むように成長するので包晶反応と呼ばれています。この反応式を下に示します。

  L+α⇌β

 包晶組成においてはβ単相組織となります。包晶反応で固相が多い時はα相が残り、液相が多い時はLが残ります。これらは温度が下がると溶解度を変えながら、濃度変化や析出を起こして室温まで冷却します。

 3つ目は偏晶反応です。これはAlやPbなどのように合金の密度差が大きい時などに現れる状態図です。温度が高い時は液相のL単相ですが、温度が低下すると液相でもL1とL2という2相に分かれます。偏晶反応ではこのうち、片方の液相L1からもう片方の液相L2とα相の晶出が起こります。このL2もさらに温度が低下すると、L2からα相とβ相に共晶反応のような反応が起こります。これらの反応式を下に示します。

  L1⇌L2+α     L2⇌α+β

 偏晶反応の後は、これまでと同様に溶解度の変化に伴って濃度変化や析出が起きますが、偏晶反応型の状態図は固溶限が限りなくゼロに近いものが多いため、室温になるとほとんど、元のA金属とB金属になってしまうこともあります。

 

◆ 関連解説記事『金属材料基礎講座(その1)』

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

   続きを読むには・・・


この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
砂型鋳造とは

  金属材料は身近な材料であり、自動車、鉄道、建設など高い強度が求められる機械や構造物には欠かせない材料です。金属材料の種類は鉄鋼、ステン...

  金属材料は身近な材料であり、自動車、鉄道、建設など高い強度が求められる機械や構造物には欠かせない材料です。金属材料の種類は鉄鋼、ステン...


標準添加法、分光システム:金属材料基礎講座(その152)

【目次】 1. 標準添加法 標準添加法とは試料溶液を複数種類に分けて、そこに標準溶液をそれぞれ濃度を変えて添加します。この発光強度...

【目次】 1. 標準添加法 標準添加法とは試料溶液を複数種類に分けて、そこに標準溶液をそれぞれ濃度を変えて添加します。この発光強度...


析出強化 金属材料基礎講座(その12)

  ◆ 析出強化:金属の強化方法のその2 2つ目の強化方法は析出強化です。粒子分散強化という時もあります。これは材料中に硬い粒子を微細分...

  ◆ 析出強化:金属の強化方法のその2 2つ目の強化方法は析出強化です。粒子分散強化という時もあります。これは材料中に硬い粒子を微細分...


「金属・無機材料技術」の活用事例

もっと見る
金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

 私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...


ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

 15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...