現代社会において、金属材料は自動車や航空機からエレクトロニクス、医療機器に至るまで、あらゆる産業の基盤を支えています。特定の用途に最適な強度や耐食性、機能性を実現するためには、複数の金属を組み合わせた「合金」の開発が不可欠です。しかし、2種類以上の金属を溶解し凝固させるプロセスは、単純に配合比通りの結果が得られるとは限りません。異なる金属原子同士がどのような割合で混ざり合い、どのような結晶構造(組織)を形成するかは、温度や組成によって複雑に変化します。
この複雑な金属の挙動を体系的に理解し、特定の組成でどのような組織の材料が得られるかを図示したものが「合金状態図」です。これは、材料の特性を予測し、合金を設計するための羅針盤として機能します。特に、2種類の金属を扱う「2元合金状態図」は、金属学の基本中の基本となります。本稿では、数ある状態図のパターンの中でも、最も基礎的で重要な概念である「全率固溶体」に焦点を当てます。全率固溶体とは何か、なぜ重要なのかを定義し、その具体的な状態図パターンを通じて、金属材料の組織形成メカニズムを深く掘り下げて解説します。
2種類以上の金属を溶解して凝固する時に、例え...









