応力腐食割れとは:金属材料基礎講座(その71)

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◆ 応力腐食割れの発生と対策

 応力腐食割れは「環境、材料、応力」という、3つの要因が重なった時に発生する割れを伴う腐食です。英語の表記からSCC(Stress Corrosion Cracking)と略されることもあります。

 応力腐食割れを起こしやすい材料として、オーステナイト系ステンレス鋼、黄銅、アルミニウム合金などがあります。環境要因としては溶存酸素量、塩化物イオン(ステンレス鋼などに影響)、アンモニア(黄銅などに影響)などです。材料要因としてはステンレス鋼の鋭敏化、粒界腐食、孔食(こうしょく)などです。応力要因としては加工時の引張残留応力や溶接時の引張残留応力です。応力腐食割れに影響するのは引張残留応力であり、圧縮残留応力ではありません。応力腐食割れの例を表1に示します。

表1.応力腐食割れの例

金属

 ステンレス鋼は塩化物イオンの多い環境では孔食やすき間腐食を起こし、不適切な熱処理や溶接によって鋭敏化が起こり粒界腐食を引き起こします。このような局部腐食は応力集中となります。そこに引張残留応力が加わると、応力腐食割れが起こります。鋭敏化による粒界腐食から応力腐食割れが発生すると、その破面は粒界破壊となります。応力腐食割れはオーステナイト系ステンレス鋼に起こりやすいです。ステンレス鋼のニッケル量によって、応力腐食割れの起こりやすさは変わり、フェライト系ステンレス鋼や二相系ステンレス鋼などは起きづらくなります。

 黄銅はアンモニアの多い環境では応力腐食割れが起きやすくなります。黄銅における引張残留応力は主に製造加工によるものです。かつて黄銅の割れは、ある季節になると割れが生じたり保管時に割れたことから「季節割れ」、「置き割れ」などと呼ばれた時もありました。黄銅にとってアンモニアはとても有害です。応力腐食...

 

 

◆ 応力腐食割れの発生と対策

 応力腐食割れは「環境、材料、応力」という、3つの要因が重なった時に発生する割れを伴う腐食です。英語の表記からSCC(Stress Corrosion Cracking)と略されることもあります。

 応力腐食割れを起こしやすい材料として、オーステナイト系ステンレス鋼、黄銅、アルミニウム合金などがあります。環境要因としては溶存酸素量、塩化物イオン(ステンレス鋼などに影響)、アンモニア(黄銅などに影響)などです。材料要因としてはステンレス鋼の鋭敏化、粒界腐食、孔食(こうしょく)などです。応力要因としては加工時の引張残留応力や溶接時の引張残留応力です。応力腐食割れに影響するのは引張残留応力であり、圧縮残留応力ではありません。応力腐食割れの例を表1に示します。

表1.応力腐食割れの例

金属

 ステンレス鋼は塩化物イオンの多い環境では孔食やすき間腐食を起こし、不適切な熱処理や溶接によって鋭敏化が起こり粒界腐食を引き起こします。このような局部腐食は応力集中となります。そこに引張残留応力が加わると、応力腐食割れが起こります。鋭敏化による粒界腐食から応力腐食割れが発生すると、その破面は粒界破壊となります。応力腐食割れはオーステナイト系ステンレス鋼に起こりやすいです。ステンレス鋼のニッケル量によって、応力腐食割れの起こりやすさは変わり、フェライト系ステンレス鋼や二相系ステンレス鋼などは起きづらくなります。

 黄銅はアンモニアの多い環境では応力腐食割れが起きやすくなります。黄銅における引張残留応力は主に製造加工によるものです。かつて黄銅の割れは、ある季節になると割れが生じたり保管時に割れたことから「季節割れ」、「置き割れ」などと呼ばれた時もありました。黄銅にとってアンモニアはとても有害です。応力腐食割れを防止するためには、アンモニア環境を防ぐことと引張残留応力を熱処理によって除去することです。

 

 応力腐食割れは環境、材料、応力の3要因のうち、一つでも改善すれば防げます。残留応力であれば熱処理による焼なましなどです。環境要因では塩化物イオンやアンモニアを防ぐことなどが大切です。

 

 次回に続きます。

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

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この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

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