構造 金属材料基礎講座(その1)

 

1.金属結合

 金属を構成する物質の最小単位は原子です。例えば鉄原子やアルミニウム原子などです。原子の結合には主に金属結合、イオン結合、共有結合があります。そして金属はこの金属結合という結合方式をとります。

 金属原子が近づき一定の距離になると、それぞれの原子がもつ電子軌道が重なります。そして、お互いに電子を出しあい、原子自身は陽イオンとなり、それぞれの電子が、それぞれの金属イオンの周りを自由に動くようになります。この電子は自由電子と呼ばれ、金属結合はこの金属陽イオンと自由電子の電気的な力によって結合しています。

 金属結合は金属の特徴と大きくかかわっています。金属結合では金属イオンや電子の並びに限定はなく、たとえ金属イオンの位置がずれても、すぐに他の金属イオンと再結合します。これによって金属は曲げや、変形(塑性加工)が出来るのです。また、自由電子は熱や電気をよく通す働きがあります。そのため、金属は電気伝導や熱伝導に優れているのです。あるいは金属には金属光沢と呼れる特有の光沢があります。これは自由電子が光などの電磁波を全反射するために起きています。

2. 結晶構造

 

 金属原子は規則的に並んでいます。その最小単位を結晶構造と呼びます。金属の結晶構造としては主に以下の3種類に分けられます。(1)体心立方格子(BCC)、(2)面心立方格子(FCC)、(3)六方最密格子(稠密六方格子ともいうHCP)です。主な金属の結晶構造は以下のとおりです。BCC:鉄(常温)、クロム、モリブデン、バナジウム、タングステンなど。FCC:アルミニウム、銅、銀、金、ニッケルなど。HCP:マグネシウム、チタン、亜鉛、コバルト、ジルコニウムなどです。

 原子を球体と考えた場合、一つの原子の周りに接する他の原子の数(配位数)が最も多くなると12個の原子を周りに置くことが出来ます。この状態を最密構造と呼びます。そしてFCCおよびHCPはこの最密構造をとります。両者の違いは最密原子面の並び方によるものです。結晶構造に占める原子の体積(充填率)はFCCおよびHCPはともに74%です。一方BCCは68%です。この違いが金属の特徴に大きく影響しています。

3. 最密充填構造

 結晶構造の最密充填構造について考えましょう。最密充填構造とは原子(ここでは原子を球として扱う)をすき間なく3次元的に配置した構造です。球を平面にすき間なく並べると図1のように、1個の球の周りに6個の球が配置できます。この置き方を最密充填面と呼びます。そして説明のため、この面を1段目と呼びます。この上の2段目に同じように最密充填面を並べる場合、図2のAの3箇所、またはBの3箇所のどちらかに配置されます。2段目にA、Bそれぞれ配置した様子を図3、4に示す。最密充填面では2段目は2パタ...

ーンの配置が存在するのです。

 

 

 同じように3段目について考えましょう。ここでも、2段目から3段目の配置では2通り考えられます。この時、3段目の配置が1段目と異なる配置と1段目と同じになる配置の2通りの配置があります。1段目と3段目が異なる場合、1段目から3段目まで全て配置が異なることになります。この球の並び方が面心立方格子です。一方、1段目と3段目が同じになる配置が六方最密格子です。その様子を図5から図8に示します。面心立方格子と六方最密格子はどちらも最密充填構造です。その違いは最密充填面の並び方です。

 次回のその2に続きます。

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

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