◆ マルテンサイトの特徴
鋼を焼入れる時に亜共析鋼はA3線上30~50℃のオーステナイト単相から、過共析鋼はA1変態点上30~50℃のオーステナイト+セメンタイト組織から焼入れを行います。そのため過共析鋼のマルテンサイトは共析鋼と同じ炭素量のマルテンサイトとなります。そこにセメンタイトが追加した組織となります。
マルテンサイトの硬さは主に炭素量によって決まります。これは炭素鋼も合金鋼も同じ傾向です。マルテンサイトの硬さと炭素量の関係を図1に示します。
図1.マルテンサイトの硬と炭素量の関係
約0.6~0.7%炭素量の時に硬さのピークとなり、それ以降はあまり変わりません。これは過共析鋼でもマルテンサイトの炭素量が共析鋼と同じであること、軟らかい残留オーステナイトが表れることなどが理由です。
マルテンサイト組織は炭素量によって...
マルテンサイト変態のしやすさを「焼入れ性」として表します。マルテンサイト変態することを「焼が入る」と表すこともあります。焼入れ性のよい鋼ほど、冷却速度を遅くしてもマルテンサイト変態が起きやすくなります。また鋼の形状が大きくなるほど、焼入れした時に内部が冷却されにくくなります。そのため、焼入れしても表面は硬いマルテンサイトになっても、内部は焼入れされていないパーライト組織となることがあります。形状やサイズによって焼入れ[1]しやすさが変化することを質量効果と言います。
次回に続きます。
【用語解説】
[1]焼入れ(やきいれ、英語: quenching)とは、金属を所定の高温状態から急冷させる熱処理である。焼き入れとも表記する。広義には、金属全般を所定の高温状態から急冷させる操作を行う処理を指し、狭義には、鉄鋼材料(特に鋼)を金属組織がオーステナイト組織になるまで加熱した後、急冷してマルテンサイト組織を得る熱処理を指す。本記事では、狭義の方の鋼の焼入れについて主に説明する。焼入れを行うことにより、鉄鋼材を硬くして、耐摩耗性や引張強さ、疲労強度などの強度を向上させることができる。焼入れ性がよい材料ほど、材料内部深くまで焼きを入れる(マルテンサイト化させる)ことができる。焼入れしたままでは硬いが脆くなるため、靭性を回復させて粘り強い材料にするために焼戻しを焼入れ後に行うのが一般的である。焼入れ処理にともなって割れやひずみなどの欠陥が起きる可能性があり、冷却方法などに工夫が行われる(引用:Wikipediaから、https://ja.wikipedia.org/、最終更新 最終更新 2020年10月24日 (土))。