「社員満足」の展開―その1
1.はじめに
これ以降は、図13-2における二次展開項目5つそれぞれについて最終迄の展開についてのご説明に入るのですが、理念経営基本体系に入れ切れない詳細をご説明しますので、理念経営基本体系ご理解の参考にして頂ければと思います。
【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その13)理念経営基本体系の設計(3)へのリンク】
2.マズローの欲求段階説
突然「マズローの欲求段階説」と言う耳慣れないものが出てきて戸惑われた方もおられたかと思いますが、実は、社員満足を語る上で根本的な考えとして採用するのがこの「マズローの欲求段階説」なのです。
どういうことかと言いますと、基本体系における社員満足の逐次二項目展開の一次項目は、「人間性の尊重」と「適正な報酬」となるのですが、「人間性尊重」に対する基本的な考えのベースにしようと言うわけで、簡単に説明しますと下記の通りです。
マズローの欲求段階説とは、アメリカの心理学者アブラハム・マズローによって提唱された、人間のモチベーション理論の一つで、人間の持つ内面的欲求は、下記に示す5段階の階層に分かれていて、低次の欲求が満たされると順次より高次の欲求を求めるようになる、という仮説で、マクレガーのX理論Y理論もこの説を元に構築されており、非常に有名なモチベーション理論です。
- 第1段階: 生理的欲求(食欲、排泄欲、睡眠の欲求など生命維持活動と直結した欲求)
- 第2段階: 安全・安定の欲求(危険や脅威、不安から逃れようとする欲求)
- 第3段階: 所属・愛情欲求(集団への帰属や愛情を求める欲求)
- 第4段階: 尊敬欲求(他人から尊敬されたいとか、人の注目を得たいという欲求)
- 第5段階: 自己実現の欲求(自分の信じる目標に向かって自分を高めていこうとする欲求)
人間性の尊重ということになると第5段階がメーンになりますのでもう少し詳しくご説明しますと、これには、潜在的な自分の可能性の探求や自己啓発、創造性へのチャレンジなども含まれるのです。
3.マズローの5段階欲求の社員の立場に翻訳
上述の5段階欲求は、人間全般に対するものなんですが、この考えを理念経営基本体系に取り入れようとしますと、この“5段階欲求”を、社員の立場への“翻訳”が必要で、翻訳結果を双方対比した形でまとめたのが、表15-1です。
表15-1 マズローの欲求の社員の立場への翻訳
表の内容だけでは分からないBの“社員としての欲求”と“欲求充足手段”に込めた思いを以下にご説明しますのでご理解の参考にして頂ければと思います。
3-1 第1段階の欲求:雇用の安定
経営の目的「企業の永続性」の1次展開項目の一つである「企業の存在価値」の3要因のトップに“社員満足”を置いた理念経営体系図を内外に明示することにより、社員は、示された経営方針から、雇用の安定を読み取ることが出来、第一段階の欲求「雇用の安定」が満たされると思います。
ただ、雇用の安定は、企業の存続があって初めて成り立つものですので、その点を支えるもう一つの一次展開項目である「継続安定した利益」も理念経営体系図上に同時に展開されているのですが、その展開内容を見れば、自分たちの日常の仕事が、雇用の安定に必須である「継続安定した利益」に直結していることが社員にもよく分かり、仕事に対する取り組み姿勢が違ってくることが期待できます。
実際に、導入会社の従業員、と言っても話を聞けたのは係長以上ですが、今まで押し付けられていると感じていた仕事が、経営理念とどう関わっ...
仕事の“見える化”は有名ですが、“経営理念の見える化”こそが、重要極まりないと思って設計した理念経営体系ですが、この感想は、その考えの正しかったことを示していると思います。第2段階以降の欲求は、次弾以降になります。
次回に続きます。