「社員満足」の展開―その3
4 社員満足(ES)充足体系図
第016弾、第017弾の説明をベースに、第013弾の図13-2理念経営基本体系(2次迄)の中の「社員満足」の展開、即ち、「社員満足(ES:Employee Satisfaction)」をどのようにして充足するかの部分「社員満足(ES)充足体系図」を下記します。
【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その17)ポールスターへのリンク】
図19-1 社員満足(ES)充足体系図
この体系図の基本は、社員満足は、「適正な報酬」と「人間性の尊重」がなされることにより達成されるという考えで、前者は、図13-2(第013弾)理念経営基本体系(2次迄)の一次展開項目の一つ「継続安定した利益」によりなされるもので明快ですが、後者は、前者に増して重要なことは自明であるにも関わらず、具体的な内容の把握が難しく、具体的展開がきちんとなされていないのが現状ではないかと思われます。
その点に対するこの体系図の対応は、「人間性の尊重」の基本方針を“マズローの5段階欲求の充足”に置き、マズローの5段階欲求を社員の立場に翻訳したものを展開項目にすると言うものです。
この基本方針は、部下を持つ立場になった時、部下にどう接するべきかに思いあぐねた結果行き着いた結論で、どこまでやれたかは別にして、現役時代36年間の検証において裏切られることの無かったことから体系に採用した次第です。
この体系図のポイントは、右端にある8項目で、これらは、それぞれの前にある、5段階欲求を充足する上での課題に対する解決策で、いずれも、中小企業の17の課題解決策として、後ほど詳しくご説明するものばかりです。
その内容は、表2-1で“基本的な考え方”としてご説明しているのですが、以下に注記解説として、もう少し詳しくご説明致しますので、体系図ご理解の一助にして頂ければと思います。
--- 記 ---
(注1) 適材適所配属法
リクルート社のSPI(Synthetic Personality Inventory)総合検査結果16項目をマトリックス・データ解析法(MD解析法)により解析し、主成分得点の座標における位置で把握した適性を参考に配属する方法。
(注2) デュアルシステム(邦訳:二元制学習過程)
ドイツを発祥とする、学術的教育と職業教育を3年間同時に進めるシステムです。元は、義務教育を修了した若者が対象で大学教育とは別コースという位置づけであったのが、政府主導のデジタル化計画「インダストリー4・0」に対応した人材育成ニーズから、総合大学や高等教育機関がこぞって導入し始めているとのことです。この制度のいいところは、長期間の実務を伴った職業体験を通じた訓練により、仕事への適正だけでなく企業体質との相性も分かる点で、適正人材採用に有効な制度と言えます。日本でも2004年に専門高校生を対象にした日本版デュアルシステムをスタートさせていて、導入企業、特に中小企業には好評なのですが、使い難いのかあまり普及していませんので、所属自治体と専門学校と検討の上、使い易いデュアルシステムを確立する必要がありそうです。
(注3) OJCC(On the Job Cultivating Core‐competence)法
企業が求める10の能力を挙げ、それぞれに成長ステップを設け、本人が最も高い評価を受けた項目(本人の強み:Core‐competence、略称CC)を、仕事の中で優先して育成することにより、全体の水準向上を目指す、「本人のCCに着眼するポジティブ思考のOJT」です。
(注4) 職場×業務内容
適材適所の適所を、職場だけでなく、各職場毎に、挑戦的か現状維持かの二面性と、企画、実務、管理のマトリックス内の6つの仕事内容を念頭に、その職場のニーズに合った仕事に配属することにより適材を生かす考え方。
(注5) サークル活動スパイラルアップ戦略
サークル活動のテーマを、職場目標に直結する、しかも、当該サークルの能力に見合ったものにして、職制の全面的支援で達成の喜びを実感させるところを起点に3段階のスパイラルアップを経て、最終的に自主自立活動に導く戦略。
(注6) QF(Quick Feedback)シート法
第017弾でも少し触れましたが、その日の作業実績を表などに書いたものを終礼時に一言添えて作業者に手渡す方法です。これは組み立て不良対策の一環として実施したもので、狙いの一番は、不良を出した時のみの作業者との対峙を、黙々とゼロ不良を続ける作業者にも感謝と激励をもってデイリーに対峙する点にあり、劇的な効果がありました。
(注7) 理念経営基本体...
これは今解説中の理念経営基本体系そのもので、“基本”が入っているのは、中小企業共通のものだからです。この体系図(図19-1)もそうですが、経営理念推進上の課題に対する推進手段が一目瞭然なので、推進手段に関わる日常業務を、経営理念の具現に沿った形で行われることが期待できるので、理念経営推進上必須と言えます。
(注8) FSF(Fellow, Supporter, Friend)制度
これは、定年を迎えた社員が持つ貴重な技術やノウハウを、社員として残る人も含めて、下表の通り、本人の希望する形で企業経営に参加出来る制度で、部外者の専門家の参画も含みます。制度設計時、各立場の処遇がポイントです。
表19-1 FSF制度の概要
次回に続きます。