1. 一般常識(会社全般)
今回は、今まで育成してきた内容の発信源としての企業人が備えておいてほしい「一般常識」特に、所属企業に関する知識に焦点を当てて、育成ステップをご紹介します。一般的にこういった内容は、入社したときの集合教育で資料と共に提供されるものですが、企業人としての自覚のない時ですので身に付くわけがなく、殆ど役に立たないのが実情です。その点、OJCCでは、文字通り「On The Job」、仕事を通じての育成ですから、入社時受けた集合教育内容の内、必要な部分を、その都度、身につまされる形で理解することになりますので、あらゆる企業活動のベースとして有効に働くことが期待できます。
2.「一般常識(会社全般)(J)」の育成ステップ
企業人は、所属する企業組織の一員として、与えられた仕事の遂行を通じて企業に貢献し、その代償として給料を受け取りますが、その仕事遂行の質を左右するのがこの「一般常識(会社全般)」ですので、表94-1の育成ステップ例を参考にして的確な育成を心掛けて頂ければと思います。
育成ステップは、あくまで仕事に必要もしくは、仕事のレベルアップにつながる内容に応じた育成ステップですが、最終的に対外業務者や管理職候補者を対象にしていることから、非常に高度な内容になっていますので、育成に際しては、対象者に応じて臨機応変に対処して頂ければと思います。
詳細は注記に譲るとして、備考欄の包括的レベルについて下記しますので、ご理解の参考にして頂ければと思います。
1)企業生活上の基礎知識
所属する企業組織の一員として仕事をして行く上で欠かせないのが会社の規則や慣習を知り従うことです。特に規則は大切で、入社時の教育で説明されるのですが、あらゆるケースを念頭に作られているだけに、かなりのボリュームがあり、中々理解されにくいものです。その点、OJCCでは、担当業務遂行上必須の内容を、必要に応じて順次反復しますので、身に付き易いですが、諸規則の必要性を理解して、与えられた資料を基に自主的に勉強するように誘導する育成がお勧めです。
2)会社についての知識
会社の諸情報を単に知るだけでなく、自職場の会社における立場を理解する中で、自職場、自社を、誇りをもって、家族、友人、仕事上の関係者などに的確に説明できるように育成することは、本人だけでなく、会社関係者に、自社に対する理解を深めてもらうことにつながるので重要です。
3)会社の社会的存在価値の理解と知識
ステップ6迄は、自職場、自社を中心とした知識でしたが、ステップ7からは、企業が存在する社会から見た企業の存在価値という観点からの諸知識が対象になります。中でも、労働組合に関する知識は、日ごろ話題になりにくいので、その点を念頭に積極的に機会を作って育成する必要があります。
4)会社の現状と将来
このステップは、内容がハイレベルなので管理職候補対象になりがちですが、育成対象者の理解力によっては、早い段階からの育成を心掛ける配慮も必要です。
表94-1 「一般常識(会社全般)(I)」の育成ステップ例
(注1)本人も自覚している問題点なので、育成効果が高いと思われます。
(注2)このように言えるための項目を抽出して、順次育成していく必要があります。
(注3)これらは、日常業務と関連付けての育成で始めて身に付き、いろんな面での波及効果が期待できますので、そのような育成の心がけが大切です。
(注4)昇格、昇給の機会に、関連制度を、仕事に対するやる気につながるように説明するのが効果的です。
(注5)こう言った知識を知ることにより、日常業務の背景が分かり、仕事のやりがいにつながりますので重要です。
(注6)単なる概要ではなく、他社より優れた点を説明することにより、自社に誇りをもって人に話せることが大切です。
(注7)ここで言う社会は、企業の属する地域社会を起点に育成することが大切です。
(注8)内容的にハイレベルですが、この認識は、仕事の質を高めますので、早くから機会を見つけて育成することが大切です。
(注9)日常業務での具体的な事例を基にした説明は、理解が深まり、企業活動にも好影響を及ぼしますので、お勧めです。
(注10)4つの種類(企業別組合、産業別組合、職業別組合、合同労組・ユニオン)、3つの形態(職能組合、産業別組合、企業別組合)の説明の中で、自社の組合の位置づけを認識してもらえる育成が大切です。
(注11)コロナ禍の下、資本主義と社会主義が議論されるようになっただけに結構必要なテーマとして育成がお勧めです。
(注12)最近は若者のSNS発言が企業の存在を揺るがす事例もありますので、重要項目としての育成がお勧めです。
(注13)この場合、育成対象者に、会社のコア・コンピタンスの説明を起点する育成がお勧めです。
(注14)最近はSDGsの議論が盛んですので、その点に絡めた社会的責任の説明をされることが必要です。
(注15)最近、こ...
(注16)若者の早期退職理由の1つに、企業の将来性に対する悲観がありますので、明るい未来を伝えることは重要です。
(注17)所属業界の将来性に絡めた自社独自の戦略を、育成対象者が参画したくなるような形での育成がお勧めです。
3. 企業活動のベース
この項目の場合、若者に愛社精神を醸成する絶好の内容なだけに、企業の将来を考えた場合、非常に重要ですので、育成計画をしっかり立てて、適切にして十分な育成をされることが必要です。ただ、注記でも触れましたが、企業を取り巻く環境の激変の最中にありますので、企業としても、経営理念、ビジョンの再構築、そして、それらの展開を踏まえた、育成対象者にとって身近な方針や戦略の提示が可能なように、会社としての真剣な取り組みとともに、育成者自身の十分な自己研鑽が必要です。
次回に続きます。