◆各構成因子に対する係数値の求め方(その3)
9.客先における検出難易度係数“β”の 求め方
この保証度係数“β”は、客先の保証度、即ち、自社の不具合の客先での検出可能度を加味したエンドユーザーに対する品質保証の話ですので、通常は除外されます。そのベースになる、客先における不具合検出の難易度を3ランクに評価して表36-1から選びます。
【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その34)へのリンク】
表36-1 客先における検出難易度係数“β”の求め方
要するに、この係数に関する考え方は、客先での不具合検出可能度を考慮することにより、費用対効果が著しく高まるケースを念頭に、エンドユーザーに対するQAを最も経済的に具現しようと言うものです。この考えをどのように活用するのかと言いますと、No1の項目については、自社における完全保証に挑戦する優先度は低くてもいいのではないかと言うことです。ただ、そのためには、客先との合意が必要ですので、そんなことはできないのではないかとのお考えの方に次の事例をご紹介します。
部品納入実績しかない客先(商用車メーカー)に、開発部門がイギリスの技術提携先の技術をベースにした新製品を客先のメーン車種への装着を提案したところ、採用されたときのことです。製品そのものが魅力的なことから客先開発部門が採用の意向を示したのに対し、製造並びに品質保証部門から、完成品の納入実績のないメーカーであることを理由に猛反対が起こったのです。
この状況に対して、客先トップの下した結論は、品証担当の専務をリーダーとし、全部門の課長または係長10人で結成するプロジェクトチームがその懸念に対応することを条件に採用すると言うものでした。そのプロジェクトチームへの最初の説明会議での説明を命じられて準備した資料は、達成すべき最終機能を、系統図法で展開した256の末端要因と9つの保証方法とのマトリックス上で、各末端要因をどのように保証するかを明示するものだったのですが、その9つの保証方法の最後に“客先保証”を入れたのです。
社内からは、客先の不評を買うのではないかと心配されたのですが、説明を終えて見渡したところ、品証課長の強い不満の顔が見え、まさにその不満を発言されようとしたとき、リーダーの専務から「自分は、このような資料が欲しかった。特に、我々と一体となってエンドユーザーに対する品質保証を達成しようとする姿勢が気に入った。この資料を基に、当プロジェクトの品質保証の万全を期すように。」との指示が出たのです。
この鶴の一声のお陰で、当社の品質保証計画が全面的に採用され、資料を関係者に配布されたのですが、それをご覧になった方から、過去の経験から2点の展開漏れ指摘を受けるという余禄がありました。この係数“β”は、この経験をもとに、採用したものですので、目的に即して活用して頂ければと思います。
10.致命度係数“G”の 求め方
この致命度係数“G”は、QA活動の重点を不具合発生時の対外的責任問題、特に、製造物責任(PL)問題に関する致命度を念頭に置いたときに使用するものですので、通常は、全てに最大致命度係数10をかけて、結果的に除外した形にして使用します。この係数をどのように使うかですが、製造物責任予防(PLP)問題を検討する際の、重要度査定に使います。
係数は、表36-2で決めた致命度と発生頻度を使って、表36-3で求めます。
表36-2 致命度と発生頻度の決め方
表36-3 致命度係数の求め方
以上で、各保証項目に対する品質保証度の値(QAL値)の求め方の説明を終わり、次弾以降で、活用の仕方をご説明しますので、採用して頂いた後のご検討の参考にして頂ければと思います。
次回に続きます。
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