ユーザー・カルテ法 【快年童子の豆鉄砲】(その51)

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夢商品

 

◆ユーザー・カルテ法

1.特定商品について仕様を変化させて設計生産

前回の「GTE法」は、特定顧客が直面する特定引き合い物件に対する顧客の潜在ニーズの発掘に極めて有用な方法でしたが、この「ユーザー・カルテ法」は、特定商品について、各社ごとに多少仕様を変化させつつ、設計・生産し、数10から最大100社にも及ぶ顧客に納入している場合で、活動対象が全く違いますので要注意です。

【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その50)へのリンク】

 

2.「ユーザー・カルテ法」とは

1)仕様の統合に止まらず潜在ニーズの把握

上述の“特定商品”をロール状で納入する「包装用フィルム」を例にとりますと、材質、厚さ、幅、長さ、ロールの芯の仕様など顧客の要求内容が顧客ごとに微妙に違いますので、開発にしても製造にしても非常に煩雑にならざるを得ないのが実情です。

 

そのような状況が生じているのは、顧客の要求をそのまま受け入れているからなんですが、全受注品の仕様を統一的に把握すれば、仕様の統合に止まらず、潜在ニーズの把握が出来、それをベースにした魅力的商品開発や魅力的品質改善が可能ではないかとの発想で生まれたのが「ユーザー・カルテ法」ですので、これからの説明をそのような観点から受け取って頂ければと思います。

 

2)ユーザー・カルテ

上述の“全受注品の仕様を統一的に把握”をする手段が「ユーザー・カルテ」で、包装用PSフィルムの事例が下図(図124-1)です。

 

技術マネジメント

図124-1 ユーザー・カルテの事例(部分表示)

 

上図で「ユーザー・カルテ」の概要を理解して頂けると思いますが、寸法に限らず製品に関する諸情報を一枚のシート(カルテ)に記載されており、全製品についてこういった「ユーザー・カルテ」を作成することにより、“全受注品の仕様を統一的に把握”することが出来るわけです。

 

3)「ユーザー・カルテ法」の活動ステップとポイント

Step 1:「ユーザー・カルテ」の設計と全製品について記入・作成
図124-1を参考に、製品の仕様が一枚のシートで全貌できる、自社製品に相応しい「ユーザー・カルテ」を設計し、全製品について記入作成します。

 

Step 2:各仕様内容の背景を確認し、不明点を顧客に確認
何故その仕様になったのかを、受注時の打ち合わせ議事録などで確認し、変更可能な自由度を、必要な場合は、顧客に問い合わせて把握します。

 

Step 3:上記情報を基にした、新製品戦略を含んだ製品仕様統合計画を立案
統合計画立案に際しては、当該製品に関する最新製品技術の採用とともに、最新製造技術の採用も念頭に検討し、顧客の承認が必要な仕様変更リストを作成し、それらが採用された場合の価格を試算します。

 

Step 4:重要仕様変更については試作品を準備して新製品の顧客向けプレゼンテーションの実施
新製品の提案に対し顧客が前向きで価格を質問されたときのために、推定した状況に応じた価格を準備しておき、答えることが出来るようにしておきます。

 

Step 5:全顧客へのプレゼン結果を踏まえた新製品の設変結果の提案を実施
顧客が多いので、その都度微調整が必要ですが、統合計画を崩さなくてもよいよう調整を重ねます。

 

Step 6:全顧客との調整と承認を得た新製品の最終仕様決定
最終的に最小限の種類に統合した最終仕様に対し、それぞれの顧客からの承認を得て終了となります。

 

3.「ユーザー・カルテ法」の真髄は「ユーザー・カルテ」

以上で、「ユーザー・カルテ法」の真髄は、その名の通り「ユーザー・カルテ」であることをお分かり頂けたと思いますが、「ユーザー・カルテ(UC)」を使うメリットを過去の成功事例を基に下記に取りまとめましたので参考にして頂ければと思います。

 

1)顧客情報の共有化が生む「先手必勝戦略」
UC作成のための製品仕様に的を絞った情報交換を通じた情報の共有化の中で、顧客の潜在ニーズを入手することが出来、他社に先駆けての対応により受注につながった。

 

2)顧客の工程概要情報が引き出す「製造現場の提案力」
UCの顧客工程概要図の細部に関心を持った製造技術者の工場見学が許された際の自社製品の改良につながる顧客工程の変更提案内容が、顧客製造技術者の好評を博して転注に繋がりシェアアップした。

 

3)顧客の希望要求品質に現場が応えて「画期的工程能力向上達成」
UCが切っ掛けで生じた製造技術者同士の交流が、製造技術者の顧客の要求品質希望に真剣に取り組む姿勢を生み、結果として、工程能力を現規格の半分...

夢商品

 

◆ユーザー・カルテ法

1.特定商品について仕様を変化させて設計生産

前回の「GTE法」は、特定顧客が直面する特定引き合い物件に対する顧客の潜在ニーズの発掘に極めて有用な方法でしたが、この「ユーザー・カルテ法」は、特定商品について、各社ごとに多少仕様を変化させつつ、設計・生産し、数10から最大100社にも及ぶ顧客に納入している場合で、活動対象が全く違いますので要注意です。

【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その50)へのリンク】

 

2.「ユーザー・カルテ法」とは

1)仕様の統合に止まらず潜在ニーズの把握

上述の“特定商品”をロール状で納入する「包装用フィルム」を例にとりますと、材質、厚さ、幅、長さ、ロールの芯の仕様など顧客の要求内容が顧客ごとに微妙に違いますので、開発にしても製造にしても非常に煩雑にならざるを得ないのが実情です。

 

そのような状況が生じているのは、顧客の要求をそのまま受け入れているからなんですが、全受注品の仕様を統一的に把握すれば、仕様の統合に止まらず、潜在ニーズの把握が出来、それをベースにした魅力的商品開発や魅力的品質改善が可能ではないかとの発想で生まれたのが「ユーザー・カルテ法」ですので、これからの説明をそのような観点から受け取って頂ければと思います。

 

2)ユーザー・カルテ

上述の“全受注品の仕様を統一的に把握”をする手段が「ユーザー・カルテ」で、包装用PSフィルムの事例が下図(図124-1)です。

 

技術マネジメント

図124-1 ユーザー・カルテの事例(部分表示)

 

上図で「ユーザー・カルテ」の概要を理解して頂けると思いますが、寸法に限らず製品に関する諸情報を一枚のシート(カルテ)に記載されており、全製品についてこういった「ユーザー・カルテ」を作成することにより、“全受注品の仕様を統一的に把握”することが出来るわけです。

 

3)「ユーザー・カルテ法」の活動ステップとポイント

Step 1:「ユーザー・カルテ」の設計と全製品について記入・作成
図124-1を参考に、製品の仕様が一枚のシートで全貌できる、自社製品に相応しい「ユーザー・カルテ」を設計し、全製品について記入作成します。

 

Step 2:各仕様内容の背景を確認し、不明点を顧客に確認
何故その仕様になったのかを、受注時の打ち合わせ議事録などで確認し、変更可能な自由度を、必要な場合は、顧客に問い合わせて把握します。

 

Step 3:上記情報を基にした、新製品戦略を含んだ製品仕様統合計画を立案
統合計画立案に際しては、当該製品に関する最新製品技術の採用とともに、最新製造技術の採用も念頭に検討し、顧客の承認が必要な仕様変更リストを作成し、それらが採用された場合の価格を試算します。

 

Step 4:重要仕様変更については試作品を準備して新製品の顧客向けプレゼンテーションの実施
新製品の提案に対し顧客が前向きで価格を質問されたときのために、推定した状況に応じた価格を準備しておき、答えることが出来るようにしておきます。

 

Step 5:全顧客へのプレゼン結果を踏まえた新製品の設変結果の提案を実施
顧客が多いので、その都度微調整が必要ですが、統合計画を崩さなくてもよいよう調整を重ねます。

 

Step 6:全顧客との調整と承認を得た新製品の最終仕様決定
最終的に最小限の種類に統合した最終仕様に対し、それぞれの顧客からの承認を得て終了となります。

 

3.「ユーザー・カルテ法」の真髄は「ユーザー・カルテ」

以上で、「ユーザー・カルテ法」の真髄は、その名の通り「ユーザー・カルテ」であることをお分かり頂けたと思いますが、「ユーザー・カルテ(UC)」を使うメリットを過去の成功事例を基に下記に取りまとめましたので参考にして頂ければと思います。

 

1)顧客情報の共有化が生む「先手必勝戦略」
UC作成のための製品仕様に的を絞った情報交換を通じた情報の共有化の中で、顧客の潜在ニーズを入手することが出来、他社に先駆けての対応により受注につながった。

 

2)顧客の工程概要情報が引き出す「製造現場の提案力」
UCの顧客工程概要図の細部に関心を持った製造技術者の工場見学が許された際の自社製品の改良につながる顧客工程の変更提案内容が、顧客製造技術者の好評を博して転注に繋がりシェアアップした。

 

3)顧客の希望要求品質に現場が応えて「画期的工程能力向上達成」
UCが切っ掛けで生じた製造技術者同士の交流が、製造技術者の顧客の要求品質希望に真剣に取り組む姿勢を生み、結果として、工程能力を現規格の半分にすることが出来た。

 

4)製品リストが契機となった「製品品番の大幅削減とコストダウンの実現」
顧客ラインの事情を知った製造係長が、顧客の受け入れが可能で、自社製造部門にとって大幅コストダウンできる製品リストを作成して提案したところ、殆ど受け入れられ大幅なコストダウンが具現した。

 

5)情報収集能力と活用力の向上による「開発効率の劇的改善」
UCを通じた顧客との情報共有と社内関係部署間の意思疎通と協力体制の向上により、受注に至るまでの試作回数1回の割合が20数%だったのが60数%になるなど開発効率の劇的向上につながった。

 

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この記事の著者

浅田 潔

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。


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