【快年童子の豆鉄砲】(その124)QFシートとは(2)QFシートが生んだ真の効果

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【快年童子の豆鉄砲】(その124)QFシートとは(2)QFシートが生んだ真の効果

【目次】

    1. マズローの5段階欲求

    前回の【快年童子の豆鉄砲】(その123)QFシートとは(1)社員に達成感をでご説明した「QF(Quick Feedback)シート」(作業結果票)は、顧客が、何があったのか調査に来るくらいの劇的な効果を上げたのですが、これはあくまで、毎日所定の数量の作業を実施する作業者に対するもので、それ以外の場合は使うことが出来ません。

     

    ただ、この事例の劇的効果の背景から感じ取った、燃え上がるような職場の雰囲気と作業者のかってない前向きな仕事に対する取り組み姿勢を見るにつけ、この事例の場合、重要なのは、QFシートやポカヨケと言った具体的な実施事項もさることながら、それらが触れた作業者たちの“琴線”を知ることではないかと言うことです。

     

    そういった発想で色々調査したところ、前回の冒頭でご説明しました通り、作業者にとって、「マズローの5段階欲求」の内の「第4段階:尊敬(承認)欲求」に対する充足手段としての機能が大きく、それがきっかけとなり「第3段階: 所属・愛情欲求」更に「第5段階: 自己実現の欲求」の充足につながったことによる作業者の高いモチベーションが大きかったことが分かったのです。

     

    従って、今回は、実施した内容が「マズローの5段階欲求」にどのようにつながったのかという観点からご説明いたしますので、本事例とは違った作業に対しても、この説明内容を参考に、対象業務にふさわしい手段を準備して頂き、同様の効果を生んで頂ければと思います。

     

    2. 実施事項と「マズローの5段階欲求」とのつながり

    1)マズローの欲求段階説

    この事例は作業者のモチベーションに深く関わったものですので、実施した対策事項を、筆者が採用しているモチベーション理論「マズローの欲求段階説」の「5段階欲求」とどのように関わり作業者のモチベーション高揚に効果があったのかをご説明させて頂きます。

     

    先ず、「マズローの5段階欲求」とは下記の通りです。

    • 第1段階: 生理的欲求(食欲、排泄欲、睡眠の欲求など生命維持活動と直結した欲求)
    • 第2段階: 安全・安定の欲求(危険や脅威、不安から逃れようとする欲求)
    • 第3段階: 所属・愛情欲求(集団への帰属や愛情を求める欲求)
    • 第4段階: 尊敬(承認)欲求(他人から尊敬されたいとか、認めてもらいたいという欲求)
    • 第5段階: 自己実現の欲求(自分の信じる目標に向かって自分を高めていこうとする欲求)

     

    次項以降、実施事項が上記のどの段階とどのように関わったかをご説明させて頂きます。

     

    2)QFシート(作業結果票) → 第4段階: 尊敬(承認)欲求

    この事例でご説明しますと、作業者は、一日10000個のブレーキを一生懸命組み立てるのですが、職制が注目するのは、検査員が発見する200個の不良と、クレームになった1個で、不良原因について調査して、対策の指示、時には叱責を受けるのですが、残りの良品9800個については一顧だにされないのがそれまでの職制だったのです。

     

    そんな中「作業結果票」は、良品9800個にも光を当て、良品製作努力を認め、よく頑張ってくれたと評価することにより「尊敬(承認)欲求」を満たしたわけで、作業者の目の色が変わるくらいモチベーションが上がり、作業の質が向上した結果不良が激減したのです。

     

    要するに「作業は正しくなされて良品が出来て当たり前」ではなく、良品が出来た背景にある「良品作成努力」に光を当てて評価することが大切ということで、たとえ「作業結果票」を作っても、そのような趣旨で使われなければ逆効果もあり得るという認識が必要と言うことです。

     

    3)検査項目のポカヨケ化 → 検査精度の向上+第3段階: 所属・愛情欲求

    かなりの検査項目のポカヨケ化による検査項目の削減により、残った検査項目に対する検査精度がアップしたことが直接的な効果なのですが、それまでは、職場は同じでも、指示され、ミスすると叱責されるという立場だった「職制」が、自分たちの立場に立って検査項目の削減に努力してくれたことにより、職制を含んだ職場の一体感が生まれ「第3段階: 所属・愛情欲求」が満たされ、モチベーションアップに繋がったことが、検査項目の削減以上の効果を生んだと言えます。

     

    これは、今までは言われたことをその通りすればよいという受け身の立場意識だった作業者が、提案という形で検査精度向上に参加しようという意識になったことが大きかったのですが、このような意識の変化を生んだのが「第3段階: 所属・愛情欲求」が満たされたことによるモチベーションアップだと言えます。

     

    要するに、職制と作業者の立場意識の違いが取り除かれ、一体感を持って取り組むようになったことが重要であり、職制の態度が「ポカヨケで検査項目を減らしてやったから後はしっかり検査しろよ」と言った上から目線であってはダメということです。

     

    4)検査員、作業者の改善提案内容の採用 → 第5段階: 自己実現の欲求

    ポカヨケによる検査項目の削減、QFシートによる良品製作努力に対する評価、による検査員、作業者のモチベーションの向上は、それぞれの立場からの不良低減に関する改善提案に繋がり、結果として不良低減に効果があったのです。

     

    ただ、自分たちが提案した内容が採用され実現するのを目の当たりにすることにより「第5段階: 自己実現の欲求」が満たされることによって生じたモチベーションアップは、更なる改善提案意欲に止まらず、あらゆる面に対していい影響をもたらし、予想以上の成果に繋がったと言えます。

     

    3.仕事の成果と作業者のモチベーション

    この事例で強く認識させられたのは、仕事の成果は、作業に関わる人のモチベーションによるところが想像以上に大きいということです。そして、モチベーションには段階があり、それぞれの段階を意識して取り組む必要があるということです。そういった意味で「マズローの欲求段階説」は、分かりやすく取...

    【快年童子の豆鉄砲】(その124)QFシートとは(2)QFシートが生んだ真の効果

    【目次】

      1. マズローの5段階欲求

      前回の【快年童子の豆鉄砲】(その123)QFシートとは(1)社員に達成感をでご説明した「QF(Quick Feedback)シート」(作業結果票)は、顧客が、何があったのか調査に来るくらいの劇的な効果を上げたのですが、これはあくまで、毎日所定の数量の作業を実施する作業者に対するもので、それ以外の場合は使うことが出来ません。

       

      ただ、この事例の劇的効果の背景から感じ取った、燃え上がるような職場の雰囲気と作業者のかってない前向きな仕事に対する取り組み姿勢を見るにつけ、この事例の場合、重要なのは、QFシートやポカヨケと言った具体的な実施事項もさることながら、それらが触れた作業者たちの“琴線”を知ることではないかと言うことです。

       

      そういった発想で色々調査したところ、前回の冒頭でご説明しました通り、作業者にとって、「マズローの5段階欲求」の内の「第4段階:尊敬(承認)欲求」に対する充足手段としての機能が大きく、それがきっかけとなり「第3段階: 所属・愛情欲求」更に「第5段階: 自己実現の欲求」の充足につながったことによる作業者の高いモチベーションが大きかったことが分かったのです。

       

      従って、今回は、実施した内容が「マズローの5段階欲求」にどのようにつながったのかという観点からご説明いたしますので、本事例とは違った作業に対しても、この説明内容を参考に、対象業務にふさわしい手段を準備して頂き、同様の効果を生んで頂ければと思います。

       

      2. 実施事項と「マズローの5段階欲求」とのつながり

      1)マズローの欲求段階説

      この事例は作業者のモチベーションに深く関わったものですので、実施した対策事項を、筆者が採用しているモチベーション理論「マズローの欲求段階説」の「5段階欲求」とどのように関わり作業者のモチベーション高揚に効果があったのかをご説明させて頂きます。

       

      先ず、「マズローの5段階欲求」とは下記の通りです。

      • 第1段階: 生理的欲求(食欲、排泄欲、睡眠の欲求など生命維持活動と直結した欲求)
      • 第2段階: 安全・安定の欲求(危険や脅威、不安から逃れようとする欲求)
      • 第3段階: 所属・愛情欲求(集団への帰属や愛情を求める欲求)
      • 第4段階: 尊敬(承認)欲求(他人から尊敬されたいとか、認めてもらいたいという欲求)
      • 第5段階: 自己実現の欲求(自分の信じる目標に向かって自分を高めていこうとする欲求)

       

      次項以降、実施事項が上記のどの段階とどのように関わったかをご説明させて頂きます。

       

      2)QFシート(作業結果票) → 第4段階: 尊敬(承認)欲求

      この事例でご説明しますと、作業者は、一日10000個のブレーキを一生懸命組み立てるのですが、職制が注目するのは、検査員が発見する200個の不良と、クレームになった1個で、不良原因について調査して、対策の指示、時には叱責を受けるのですが、残りの良品9800個については一顧だにされないのがそれまでの職制だったのです。

       

      そんな中「作業結果票」は、良品9800個にも光を当て、良品製作努力を認め、よく頑張ってくれたと評価することにより「尊敬(承認)欲求」を満たしたわけで、作業者の目の色が変わるくらいモチベーションが上がり、作業の質が向上した結果不良が激減したのです。

       

      要するに「作業は正しくなされて良品が出来て当たり前」ではなく、良品が出来た背景にある「良品作成努力」に光を当てて評価することが大切ということで、たとえ「作業結果票」を作っても、そのような趣旨で使われなければ逆効果もあり得るという認識が必要と言うことです。

       

      3)検査項目のポカヨケ化 → 検査精度の向上+第3段階: 所属・愛情欲求

      かなりの検査項目のポカヨケ化による検査項目の削減により、残った検査項目に対する検査精度がアップしたことが直接的な効果なのですが、それまでは、職場は同じでも、指示され、ミスすると叱責されるという立場だった「職制」が、自分たちの立場に立って検査項目の削減に努力してくれたことにより、職制を含んだ職場の一体感が生まれ「第3段階: 所属・愛情欲求」が満たされ、モチベーションアップに繋がったことが、検査項目の削減以上の効果を生んだと言えます。

       

      これは、今までは言われたことをその通りすればよいという受け身の立場意識だった作業者が、提案という形で検査精度向上に参加しようという意識になったことが大きかったのですが、このような意識の変化を生んだのが「第3段階: 所属・愛情欲求」が満たされたことによるモチベーションアップだと言えます。

       

      要するに、職制と作業者の立場意識の違いが取り除かれ、一体感を持って取り組むようになったことが重要であり、職制の態度が「ポカヨケで検査項目を減らしてやったから後はしっかり検査しろよ」と言った上から目線であってはダメということです。

       

      4)検査員、作業者の改善提案内容の採用 → 第5段階: 自己実現の欲求

      ポカヨケによる検査項目の削減、QFシートによる良品製作努力に対する評価、による検査員、作業者のモチベーションの向上は、それぞれの立場からの不良低減に関する改善提案に繋がり、結果として不良低減に効果があったのです。

       

      ただ、自分たちが提案した内容が採用され実現するのを目の当たりにすることにより「第5段階: 自己実現の欲求」が満たされることによって生じたモチベーションアップは、更なる改善提案意欲に止まらず、あらゆる面に対していい影響をもたらし、予想以上の成果に繋がったと言えます。

       

      3.仕事の成果と作業者のモチベーション

      この事例で強く認識させられたのは、仕事の成果は、作業に関わる人のモチベーションによるところが想像以上に大きいということです。そして、モチベーションには段階があり、それぞれの段階を意識して取り組む必要があるということです。そういった意味で「マズローの欲求段階説」は、分かりやすく取り組みやすいモチベーション理論と言えますので、この事例説明を参考にされ、効果的に活用されるといいと思います。

       

       

       

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      この記事の著者

      浅田 潔

      100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。

      100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。


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