3. 伊奈製陶(現INAX)におけるタイル製造の焼付工程の改善事例
1)はじめに
前回の【快年童子の豆鉄砲】(その125)タグチメソッドとは(1)「3-2)タグチメソッドの原点」で言及した事例について、田口氏ご自身が、品質工学Vol 12 No.4に詳しく説明しておられますので、その内容のポイントをご紹介いたします。
2)不具合発生状況
1953年、伊奈製陶(現INAX)がタイル製造の焼付工程をイタリア製の『トンネル式連続式炉』を導入したところ、炉内温度のバラツキ(ノイズ)が原因で20%の不良が発生したのですが、炉内温度を均一にするための追加投資が出来ないという事態に対する改善事例です。
3)タイル工程の概要
不良が発生した原因工程は、最後の”焼成”です。
図108-1 タイル工程の概要
4)対策工程
不具合発生原因工程は、最終工程「焼成」(図108-1)で、本来の対策である炉内温度を均一にするのが費用の面で出来ない状況を踏まえ、不均一な炉内温度、即ちノイズに頑健(ロバスト)な「原料調合」をタグチメソッドで求めるのを対策にする戦略、即ち、対策工程を、最初の工程である「原料調合」にしています。
5)原料調合の因子と水準
最適調合原料を手に入れるための解析対象として7因子、2水準を採用しています。
表108-1 因子と水準
6)直行表 L8 による割...
表109-1の7因子2水準をL8(27)に割り付けて実施した実験の結果は表108-2の通りです。
この割り付け実験の目的は、炉内温度のバラツキに尤も頑健(ロバスト)な原料を得るための調合を、7つの調合因子に対する2水準の中から選ぶことなんですが、もし、しらみつぶしに全ての組み合わせの実験をする場合は、7×2×2=28通りの実験が必要になるんですが、実験計画法の直行表を使うことにより、8通りの実験で済むということです。
7)水準別の不良率とオメガ変換
上記割り付けをベースに計算した水準別不良率を表108-3に、因子の交互作用の効果をなくすようにオメガ変換たした結果を表108-4に示します。
この結果を使った最適条件による不良率予測計算は次回でご説明します。