GTE法 【快年童子の豆鉄砲】(その50)

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夢商品

 

1.GTE法

夢商品の開発・商品化で、受注側にとって最も難しいケースが「夢」の所在が顧客にある場合です。しかも、その夢は、商品化できれば素晴らしい「夢商品」になるのに、顧客側には製品化する技術を持っていないために単なる夢としてくすぶっているケースです。

 

他製品で縁のある顧客ですから、受注側には何らかの形で製品化技術がありますので、その夢情報が手に入れば大きな商機に繋がるのですが、夢、即ち、ニーズが顧客側にあり、詳細の開示がなされないだけに製品化が非常に難しいのですが、そういった状況下での開発手法が「GTE法」です。

【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その49)へのリンク】

 

2.GTE法とは

1)GTE法の活用対象

GTE法の活用対象は「顧客の夢段階ニーズの商品化」ですので、その活動は、名前の通り、顧客のニーズを推定(Guess)し、そのニーズの商品化のための試行錯誤(Try and Error)を重ねることになります。ただ、夢段階のニーズが対象なだけに、活動対象が漠然としている上活動範囲が広くなりますので、いろんなケースが想定されるだけに、通常の手法のような、画一的な手順のご提示は出来ません。

 

そこで、活動対象を最も難しいケースにして、活動のステップごとにポイントを説明しますので、実際の活動ケースの場合、事情に合わせてステップを省略するなどして頂ければと思います。

 

2)GTE法の活動ステップとポイント

【活動対象】

顧客が極秘に進める新規性の高い製品開発プロジェクトの夢段階ニーズ

 

【活動ステップとポイント】

Step 1:顧客ニーズ推定のための情報収集

営業マンが、本来の業務の後「ところで…」と話題を顧客の開発が現在取り組んでいるテーマについて、雑談的に話しかける中で情報を手に入れるわけですが、顧客側も同様のニーズがあるはずですので、次の点が重要になります。

  • ①営業業務に「顧客の開発に関する最新情報入手」を入れる。
  • ②顧客の関心を引くことが出来る程度の自社の開発情報を理解しておく
  • ③開発部門と直接会話できるよう努力する

 

Step 2:顧客ニーズの推定と要求品質への展開

入手情報を基に開発と共同で顧客の「夢段階ニーズ」を推定し、その具現に寄与する自社独自の技術で実現可能な要求品質への展開を実施します。

 

Step 3:顧客ニーズに応える魅力ある新製品のコンセプト立案

推定した顧客ニーズに寄与する要求品質への展開結果をベースにした新製品のコンセプトを立案します。

 

Step 4:品質表第0版の作成

一般的には、上記新製品コンセプトを提案し、顧客がニーズに対する寄与度を評価した上で提示される改善要求項目への対応、と言ったサイクルを繰り返しながら、受注活動を続けるのですが、新規性が高ければ高いだけ開発要因が増え、収拾がつかなくなる懸念があるのです。その懸念に対する対策として下図(図123-1)のような「品質表」を使うのがGTE法の真髄です。

 

品質

図123-1 品質表(イメージ図)

【品質表の説明】
顧客製品の要求品質を縦軸に、顧客製品関連で受注しようとする自社製品の設計品質を横軸に配し、顧客の要求品質と設計品質との関係を双方が交差するマスの中のマークで表示してある。イメージ図の場合、設計品質aとfは、顧客の要求品質pに対して必須要因であることを◎で示している。また、設計品質bとdは、必須要因ではないが強い相関があるので設計時配慮が必要であることを○で示している。要求品質、設計品質ともに1次、2次、3次とあるのは、抽出に漏れが出ないよう、新QC七つ道具の系統図法を用いた要因展開をした結果を示している。

 

この第0版は、社内検討用で、プロジェクトの起点になります。

 

Step 5:新製品のコンセプト確立

第0版での検討を重ねた結果、顧客ニーズのレベルを格段に上げることにつながる“新製品のコンセプト”を確立します。

 

Step 6:顧客への提出用品質表第1版の作成

提案する新製品の開発背景説明資料としての品質表第1版を作成します。

 

Step 7:模擬プレゼンテーションの実施と資料の修正

上記品質表第1版を使った模擬プレゼンテーションをトップを交えた幹部対象に実施し、出された意見を反映してプレゼンテーション資料を完成させます。

 

Step 8:品質表第1版による新製品の顧客へのプレゼンテーションの実施

Step 9:プレゼンテーションを通じて得た追加ニーズの品質表第2版への反映

Step 10:品質表第2版によるプレゼンテーションの実施

Step 11:品質表第3版とともに試作品を提供する

上記プレゼンテーションで出された意見を反映した品質表第3版をベースにした試作品を作製して提供します。

 

Step 12:最終品質表が完成するまで、Step 7~10のサイクルをn回繰り返す

最終品質表が完成するまで、即ち、受注が確定するまで上記Step 7~10のサイクルを繰り返します。

 

3.品質表を使うメリット

以上で、GTE法の真髄は品質表であることをお分かり頂けたと思いますが、品質表を使うメリットを過去の成功事例を基に下記に取りまとめましたので参考にして頂ければと思います。

 

1)要求品質、設計品質、双方のレベルアップに繋がる

入手情報を要求品質欄に、それに関係する自社技術を設計品質欄に、双方の関連を検討しつつ記入することにより、双方の内容のレベルアップを図ることが出来る。

 

2)提案内容の客観的評価が可能

顧客に対する提...

夢商品

 

1.GTE法

夢商品の開発・商品化で、受注側にとって最も難しいケースが「夢」の所在が顧客にある場合です。しかも、その夢は、商品化できれば素晴らしい「夢商品」になるのに、顧客側には製品化する技術を持っていないために単なる夢としてくすぶっているケースです。

 

他製品で縁のある顧客ですから、受注側には何らかの形で製品化技術がありますので、その夢情報が手に入れば大きな商機に繋がるのですが、夢、即ち、ニーズが顧客側にあり、詳細の開示がなされないだけに製品化が非常に難しいのですが、そういった状況下での開発手法が「GTE法」です。

【この連載の前回:【快年童子の豆鉄砲】(その49)へのリンク】

 

2.GTE法とは

1)GTE法の活用対象

GTE法の活用対象は「顧客の夢段階ニーズの商品化」ですので、その活動は、名前の通り、顧客のニーズを推定(Guess)し、そのニーズの商品化のための試行錯誤(Try and Error)を重ねることになります。ただ、夢段階のニーズが対象なだけに、活動対象が漠然としている上活動範囲が広くなりますので、いろんなケースが想定されるだけに、通常の手法のような、画一的な手順のご提示は出来ません。

 

そこで、活動対象を最も難しいケースにして、活動のステップごとにポイントを説明しますので、実際の活動ケースの場合、事情に合わせてステップを省略するなどして頂ければと思います。

 

2)GTE法の活動ステップとポイント

【活動対象】

顧客が極秘に進める新規性の高い製品開発プロジェクトの夢段階ニーズ

 

【活動ステップとポイント】

Step 1:顧客ニーズ推定のための情報収集

営業マンが、本来の業務の後「ところで…」と話題を顧客の開発が現在取り組んでいるテーマについて、雑談的に話しかける中で情報を手に入れるわけですが、顧客側も同様のニーズがあるはずですので、次の点が重要になります。

  • ①営業業務に「顧客の開発に関する最新情報入手」を入れる。
  • ②顧客の関心を引くことが出来る程度の自社の開発情報を理解しておく
  • ③開発部門と直接会話できるよう努力する

 

Step 2:顧客ニーズの推定と要求品質への展開

入手情報を基に開発と共同で顧客の「夢段階ニーズ」を推定し、その具現に寄与する自社独自の技術で実現可能な要求品質への展開を実施します。

 

Step 3:顧客ニーズに応える魅力ある新製品のコンセプト立案

推定した顧客ニーズに寄与する要求品質への展開結果をベースにした新製品のコンセプトを立案します。

 

Step 4:品質表第0版の作成

一般的には、上記新製品コンセプトを提案し、顧客がニーズに対する寄与度を評価した上で提示される改善要求項目への対応、と言ったサイクルを繰り返しながら、受注活動を続けるのですが、新規性が高ければ高いだけ開発要因が増え、収拾がつかなくなる懸念があるのです。その懸念に対する対策として下図(図123-1)のような「品質表」を使うのがGTE法の真髄です。

 

品質

図123-1 品質表(イメージ図)

【品質表の説明】
顧客製品の要求品質を縦軸に、顧客製品関連で受注しようとする自社製品の設計品質を横軸に配し、顧客の要求品質と設計品質との関係を双方が交差するマスの中のマークで表示してある。イメージ図の場合、設計品質aとfは、顧客の要求品質pに対して必須要因であることを◎で示している。また、設計品質bとdは、必須要因ではないが強い相関があるので設計時配慮が必要であることを○で示している。要求品質、設計品質ともに1次、2次、3次とあるのは、抽出に漏れが出ないよう、新QC七つ道具の系統図法を用いた要因展開をした結果を示している。

 

この第0版は、社内検討用で、プロジェクトの起点になります。

 

Step 5:新製品のコンセプト確立

第0版での検討を重ねた結果、顧客ニーズのレベルを格段に上げることにつながる“新製品のコンセプト”を確立します。

 

Step 6:顧客への提出用品質表第1版の作成

提案する新製品の開発背景説明資料としての品質表第1版を作成します。

 

Step 7:模擬プレゼンテーションの実施と資料の修正

上記品質表第1版を使った模擬プレゼンテーションをトップを交えた幹部対象に実施し、出された意見を反映してプレゼンテーション資料を完成させます。

 

Step 8:品質表第1版による新製品の顧客へのプレゼンテーションの実施

Step 9:プレゼンテーションを通じて得た追加ニーズの品質表第2版への反映

Step 10:品質表第2版によるプレゼンテーションの実施

Step 11:品質表第3版とともに試作品を提供する

上記プレゼンテーションで出された意見を反映した品質表第3版をベースにした試作品を作製して提供します。

 

Step 12:最終品質表が完成するまで、Step 7~10のサイクルをn回繰り返す

最終品質表が完成するまで、即ち、受注が確定するまで上記Step 7~10のサイクルを繰り返します。

 

3.品質表を使うメリット

以上で、GTE法の真髄は品質表であることをお分かり頂けたと思いますが、品質表を使うメリットを過去の成功事例を基に下記に取りまとめましたので参考にして頂ければと思います。

 

1)要求品質、設計品質、双方のレベルアップに繋がる

入手情報を要求品質欄に、それに関係する自社技術を設計品質欄に、双方の関連を検討しつつ記入することにより、双方の内容のレベルアップを図ることが出来る。

 

2)提案内容の客観的評価が可能

顧客に対する提案を品質表という形にすることにより、提案内容の客観的評価をベースにした効率的な検討が可能になる。

 

3)推定要求品質を基に具体的なニーズ情報を入手できる

推定要求品質を系統図法による要因展開で示しているので、展開漏れを補足する形での具体的な追加ニーズを手に入れることが出来る。

 

4)設計品質を要求品質との関連で把握できるので、新たなニーズ情報を入手できる

明示してある自社の関連設計品質を起点とした新たな要求品質情報を入手することが出来る。

 

5)双方のやり取りが具体的な形で蓄積でき、顧客の製品のレベルアップにつなげることが出来る

 

顧客に提示する第1版を皮切りに、品質表をベースにした検討を重ねることにより、検討結果が品質表に蓄積され、結果的に、顧客の製品のレベルアップにつながり高い評価を得ることが出来る。

 

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この記事の著者

浅田 潔

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。

100年企業を目指す中小企業のため独自に開発した高効率な理念経営体系を柱に経営者と伴走します。


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