求められる人材と組織 儲かるメーカー改善の急所101項(その87)

更新日

投稿日

モノづくり経営

 

7、これからのモノづくり経営

 前回の儲かるメーカー改善の急所101項(その86)QCDの意義と限界に続いて、解説します。

◆ 求められる目標の共有化と多能工化

 少品種大量生産の時代では、作業を細かく分割して、それぞれを個々の作業者に割り当て、全員が与えられた作業を繰り返す方が効率も上がりました。品種が少なければ、同じモノを作り続けるので、一度ラインを設定したら当分変更がありません。各作業ごとに慣れた人を揃(そろ)えた方が生産スピードも品質も上がりやすいし、短く分割された仕事を一つ覚えればラインに入れるので習熟が早くなり、訓練も容易です。

 もしこの仕事のやり方をスポーツに例えるなら、チームプレーではありますが、各ポジションごとに専門家がいる「野球」が最も近いと思います。

 しかし、多品種少量生産、あるいは多品種変量生産の時代のいま、以前のように同じモノを大量に作り続けるといったスタイルは激減しました。一品種あたりの生産量は少なく、使う設備も部品もそのたびに変わります。それぞれの作業や工程で機敏に動けないと、小回りが利かないので、注文に全く対応できなくなってしまいます。そのためにはそれぞれの人が仕事の一部のみを知っているということではなく、仕事全体を知っていて、こなすことができる能力が必要になります。

 例えば、少品種大量生産時代での組み立ては、1本の大型コンベアラインにたくさんの人が配置され、同じものを大量に生産することができました。しかし多品種変量時代の今の組み立ては、一人がセルラインで一つの品種を丸ごと完成させるようになっています。求められるのは、スポーツに例えれば、ほぼ全員がすべてのポジションをカバーすることができて、状況に応じてお互いが協力し合える「バレーボール」型なのではないでしょうか。全員がネットの向こうの相手の動きを見ながら役割に応じて反応します。これは目標の共有化と多能工化が見事に行われているということです。

 いずれはサッカーのよ...

モノづくり経営

 

7、これからのモノづくり経営

 前回の儲かるメーカー改善の急所101項(その86)QCDの意義と限界に続いて、解説します。

◆ 求められる目標の共有化と多能工化

 少品種大量生産の時代では、作業を細かく分割して、それぞれを個々の作業者に割り当て、全員が与えられた作業を繰り返す方が効率も上がりました。品種が少なければ、同じモノを作り続けるので、一度ラインを設定したら当分変更がありません。各作業ごとに慣れた人を揃(そろ)えた方が生産スピードも品質も上がりやすいし、短く分割された仕事を一つ覚えればラインに入れるので習熟が早くなり、訓練も容易です。

 もしこの仕事のやり方をスポーツに例えるなら、チームプレーではありますが、各ポジションごとに専門家がいる「野球」が最も近いと思います。

 しかし、多品種少量生産、あるいは多品種変量生産の時代のいま、以前のように同じモノを大量に作り続けるといったスタイルは激減しました。一品種あたりの生産量は少なく、使う設備も部品もそのたびに変わります。それぞれの作業や工程で機敏に動けないと、小回りが利かないので、注文に全く対応できなくなってしまいます。そのためにはそれぞれの人が仕事の一部のみを知っているということではなく、仕事全体を知っていて、こなすことができる能力が必要になります。

 例えば、少品種大量生産時代での組み立ては、1本の大型コンベアラインにたくさんの人が配置され、同じものを大量に生産することができました。しかし多品種変量時代の今の組み立ては、一人がセルラインで一つの品種を丸ごと完成させるようになっています。求められるのは、スポーツに例えれば、ほぼ全員がすべてのポジションをカバーすることができて、状況に応じてお互いが協力し合える「バレーボール」型なのではないでしょうか。全員がネットの向こうの相手の動きを見ながら役割に応じて反応します。これは目標の共有化と多能工化が見事に行われているということです。

 いずれはサッカーのように、敵味方が直接ぶつかり合う激しいモノづくりの時代がやってくるかもしれません。

今回の言葉   

***************************

モノづくりの体制を、野球型からバレーボール型に変えよ。

***************************

「儲かるメーカー改善の急所<101項> 」 

日本経営合理化協会出版局 柿内 幸夫 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

柿内 幸夫

現場で全員で『知のすり合わせ』を実行して経営改革

現場で全員で『知のすり合わせ』を実行して経営改革


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
電子デバイス製造工程設計の留意点

1. 製造現場の自工程完結に求められる条件  新製品を競合に先んじて市場に出荷するための重要要素の一つに、量産の垂直立ち上げがあります。しかし稀に、量産...

1. 製造現場の自工程完結に求められる条件  新製品を競合に先んじて市場に出荷するための重要要素の一つに、量産の垂直立ち上げがあります。しかし稀に、量産...


中国企業改善指導のポイント 中国工場の品質改善(その76)

 前回のその75に続いて解説します。 【第5章】中国企業改善指導のポイント 1、取引先に動いてもらうには  (1)(2)は、その75に記載してい...

 前回のその75に続いて解説します。 【第5章】中国企業改善指導のポイント 1、取引先に動いてもらうには  (1)(2)は、その75に記載してい...


外部の刺激を利用する 現場改善:発想の転換(その8)

   工場の経営者から現場の従業員の方を対象として、現場改善:発想の転換をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善に留(...

   工場の経営者から現場の従業員の方を対象として、現場改善:発想の転換をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善に留(...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
副資材管理システム構築の事例

1.副資材をどう捉え、改善に繋げればいいのか   工場の規模の大小を問わず副資材は種類が多くかつ現場に散在してあり、システム化は困難をきわめます。ま...

1.副資材をどう捉え、改善に繋げればいいのか   工場の規模の大小を問わず副資材は種類が多くかつ現場に散在してあり、システム化は困難をきわめます。ま...


工場改善事例:工程改善・作業指導書

1. 工程改善:時には必要な上からの無茶な要求  これは、日本国内の金属加工をしている中小製造業の工場の事例です。この工場のある加工工程では、昼班が...

1. 工程改善:時には必要な上からの無茶な要求  これは、日本国内の金属加工をしている中小製造業の工場の事例です。この工場のある加工工程では、昼班が...


理由教育とは(その1) 中国企業の壁(その45)

        以前訪問した日系中国工場では、工程で定期的にチェックしなければならない項目のチェックが出来ていないという問題がありました。   ...

        以前訪問した日系中国工場では、工程で定期的にチェックしなければならない項目のチェックが出来ていないという問題がありました。   ...