イノベーションの発想 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その123)

更新日

投稿日

技術マネジメント

 

前回、前々回に引き続き、今回も「切り取った知識の重要部分を発想するフレームワークを使って、イノベーションを発想する」にもとづき、日々の活動の中でどうイノベーションを創出するかについて解説します。

 

1.固定観念に縛られものごとを決めつけない

小イノベーションを日々沢山量産する上で重要な点として、すでに創出した小イノベーションに、こだわらないということがあると思います。もちろんこだわりのないような小イノベーションでは、早晩忘れ去られてしまい、後の他の小イノベーションに結び付きにくいというリスクがあります。

 

しかし、数多くの小イノベーションを創出するには、常に自分がすでに創出した小イノベーションについても疑問を持ち続け、そこに関連する他のバージョンの小イノベーションを創出し続けようとする姿勢が大事です。また疑問を持ち続けることで、過去の小イノベーションを頭の「最前列」に置き続けることもできます。

 

(1)自分の小イノベーションにこだわる心理:IH(Invented-Here)症候群

NIH症候群という言葉があります。

 

NIHとはnot-invented-here(「ここで発明されたものではない」)の頭文字をとったもので、自分もしくは自分達が生み出したものには強い愛着・執着を感じるが、外部で生み出されたものには逆に拒否反応をするものであるという人間の心理をあらわした言葉です。

 

NIH症候群は、この文章の後ろ半分「外部で生み出されたものには逆に拒否反応をする」に目を向けた言葉です。しかし、前半「自分もしくは自分達が生み出したものには強い愛着・執着を感じる」に目を向けると、IH(invented-here 「ここで発明されたもの」)症候群という言葉が新に浮かびあがります。つまり人間は自分が考えたアイデアには「過度」に愛着・執着を感じるということです。

 

したがって、自分が創出した小イノベーションへのIH症候群には、中止しなければなりません。

 

(2)自分の小イノベーションは常に仮説である

なぜ自分が創出した小イノベーションを問い続ける必要があるかというと、他にも理由があります。それは、実際にその小イノベーションは未だ仮説である可能性が極めて高いからということもあります。未だそれが仮説であれば、真実に迫るためにはその仮説には進化が必要であり、そのために新な小イノベーションを生み出さなければなりません。

 

また、それは真実ではなく未だ仮説であるときちんと認識しているのであれば、真実とは何かを問い直すモチベーションにもなります。

 

2.人間の営みの中では100%正しいことはほとんどの場合ありえない

常に物事はある前提に基づき決まるもので、その前提が変われば、結論も変わります。

 

つまりAという前提から、Xという結論が得られた場合、確かに前提をAのみと考えれば、決定論的にXという結論しか考えられないかもしれません。しかし、結論に至るには前提をAのみを考えれば良いという確信を100%得ることは、現実には困難な場合が多いと思います。ある結論に至る前提として、未知の前提BやCもあるか...

技術マネジメント

 

前回、前々回に引き続き、今回も「切り取った知識の重要部分を発想するフレームワークを使って、イノベーションを発想する」にもとづき、日々の活動の中でどうイノベーションを創出するかについて解説します。

 

1.固定観念に縛られものごとを決めつけない

小イノベーションを日々沢山量産する上で重要な点として、すでに創出した小イノベーションに、こだわらないということがあると思います。もちろんこだわりのないような小イノベーションでは、早晩忘れ去られてしまい、後の他の小イノベーションに結び付きにくいというリスクがあります。

 

しかし、数多くの小イノベーションを創出するには、常に自分がすでに創出した小イノベーションについても疑問を持ち続け、そこに関連する他のバージョンの小イノベーションを創出し続けようとする姿勢が大事です。また疑問を持ち続けることで、過去の小イノベーションを頭の「最前列」に置き続けることもできます。

 

(1)自分の小イノベーションにこだわる心理:IH(Invented-Here)症候群

NIH症候群という言葉があります。

 

NIHとはnot-invented-here(「ここで発明されたものではない」)の頭文字をとったもので、自分もしくは自分達が生み出したものには強い愛着・執着を感じるが、外部で生み出されたものには逆に拒否反応をするものであるという人間の心理をあらわした言葉です。

 

NIH症候群は、この文章の後ろ半分「外部で生み出されたものには逆に拒否反応をする」に目を向けた言葉です。しかし、前半「自分もしくは自分達が生み出したものには強い愛着・執着を感じる」に目を向けると、IH(invented-here 「ここで発明されたもの」)症候群という言葉が新に浮かびあがります。つまり人間は自分が考えたアイデアには「過度」に愛着・執着を感じるということです。

 

したがって、自分が創出した小イノベーションへのIH症候群には、中止しなければなりません。

 

(2)自分の小イノベーションは常に仮説である

なぜ自分が創出した小イノベーションを問い続ける必要があるかというと、他にも理由があります。それは、実際にその小イノベーションは未だ仮説である可能性が極めて高いからということもあります。未だそれが仮説であれば、真実に迫るためにはその仮説には進化が必要であり、そのために新な小イノベーションを生み出さなければなりません。

 

また、それは真実ではなく未だ仮説であるときちんと認識しているのであれば、真実とは何かを問い直すモチベーションにもなります。

 

2.人間の営みの中では100%正しいことはほとんどの場合ありえない

常に物事はある前提に基づき決まるもので、その前提が変われば、結論も変わります。

 

つまりAという前提から、Xという結論が得られた場合、確かに前提をAのみと考えれば、決定論的にXという結論しか考えられないかもしれません。しかし、結論に至るには前提をAのみを考えれば良いという確信を100%得ることは、現実には困難な場合が多いと思います。ある結論に至る前提として、未知の前提BやCもあるかもしれません。

 

確かに1と2を足せば3になるということは100%正しいのですが、この場合1と2だけを足すという前提を固定した上で、3という結論を得ています。しかし現実の人間の営みの中では、ある状況下で3かどうかわかりませんがある結論を得ようとした場合、前提は1と2だけなのかを確定できることは稀です。自分が認識していない前提4もあれば、1+2+4は7となり、3とは異なる結論となるのです。

 

このように、自分の小イノベーションは常に仮説であると考えることには、妥当性があるのです。

 

次回に続きます。

 

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
法律 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その43)

        現在、この連載ではマクロ環境分析の解説をしていますが、今回は、PESTEL(Politica...

        現在、この連載ではマクロ環境分析の解説をしていますが、今回は、PESTEL(Politica...


新規事業を作りたいならそれなりの変革をしてからにせよ~技術企業の高収益化:実践的な技術戦略の立て方(その19)

【目次】 前回に続き今回も新規事業の開発に悩む経営者のお話です。「なぜ新規事業が立ち上がらないのか?」とは誰しも悩むものですが、その...

【目次】 前回に続き今回も新規事業の開発に悩む経営者のお話です。「なぜ新規事業が立ち上がらないのか?」とは誰しも悩むものですが、その...


潜在ニーズをとらえる仮説検証の3ステップ、新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その99)

【この連載の前回、継続的に保有技術の用途探索をする理由とポイント、新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その98)へのリンク】 【目次】 ...

【この連載の前回、継続的に保有技術の用途探索をする理由とポイント、新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その98)へのリンク】 【目次】 ...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
開発者が意識したい1日のスケジューリング(午後~夜編)

  前回の記事では一日の業務を有意義なものにするため、就業前の朝の時間と午前中の脳がフレッシュなうちにアイデア創出やメンバーとのコミュニケ...

  前回の記事では一日の業務を有意義なものにするため、就業前の朝の時間と午前中の脳がフレッシュなうちにアイデア創出やメンバーとのコミュニケ...


高齢化社会の「アンメットニーズ」ー米国3M社の事例

 技術から事業価値への転換こそが、成長戦略成功の鍵と言われて久しい。しかし今年に入っても設備投資に踏み切る企業が多いとは言えないのは、稼げる事業テーマや新...

 技術から事業価値への転換こそが、成長戦略成功の鍵と言われて久しい。しかし今年に入っても設備投資に踏み切る企業が多いとは言えないのは、稼げる事業テーマや新...


‐技能と技術の融合化によるITを応用した技術開発‐  製品・技術開発力強化策の事例(その4)

 前回の事例その3に続いて解説します。ITの普及と共に技術者や技能者の質的内容が大きく変化しつつあります。今まで何回もの練習と経験を積む必要性が高かった業...

 前回の事例その3に続いて解説します。ITの普及と共に技術者や技能者の質的内容が大きく変化しつつあります。今まで何回もの練習と経験を積む必要性が高かった業...