連載その16で『クリーン化4原則+監視の重要性』についてお話しました。ここでは、図1のクリーン化4原則について個別に解説しておりますが今回は、クリーン化4原則-5 「発生させない」について前回に続いてお話します。
図1. クリーン化4原則
1. たとえ防塵紙でも切らない、丸めない
クリーンルーム内で使用する紙類は、発塵(はつじん)の少ないものを使います。メーカーによって防塵紙、無塵紙と呼ばれていますが私は、まったくゴミが出ないことはないので、防塵紙という表現を使っています。
防塵紙は製品流動表や各種記録、点検記録、現場内への連絡事項、さらにはノートなど多様な使い方があります。色は白、水色、黄色、ピンク、グレーなどがあり、使い分けしているところもあるでしょう。例えば、製品流動表などは水色、品質問題などの記録、報告はピンク、設備の問題、報告等保全関係は黄色というような使い分けです。
この使い分けは、次のような「見える化」のためです。それは、製造ラインは交代制で24時間、しかも毎日稼働しているところが多く、管理職や技術、品質部門は平日のみの勤務です。休日明けに報告書などを確認する場合、防塵紙の色により品質問題が多いのか、設備起因の問題かを一見して把握することができます。また品質や保全などの担当部署へ振り分け、即報告できるのです。自分たちが休んでいる間に溜まったトラブルの件数は多いと推測します。それらを迅速に把握し、優先順位をつけて、早急な対応を取るための一つの策です。
最近は紙類の電子化が進み、生産、品質、保全、あるいは現場への連絡など様々なものがPCで管理されていて、クリーンルームへの紙類の持ち込みはかなり減っていると推測します。ただ、清浄度の低い乱流式クリーンルームでは、まだまだ防塵紙は使われているでしょう。現場の改善が進んでいないか、あるいは普通紙よりやや高額であるため、導入を見送っている、または防塵紙を使う必要がないなどの理由です。
防塵紙の特徴を生かし、クリーンルームの環境向上に役立てましょう。
【防塵紙からの発塵】
普通紙の原料はパルプです。パルプから作った製品は身近に沢山(たくさん)あります。例えば新聞紙、ボール紙や段ボール、ノートなどです。紺、黒など暗い色の背広を着て、電車の中で新聞や週刊誌を読んだりすると、細かなゴミが沢山出ます。それを払ったりする経験をしたことがある方は多いでしょう。
パルプは元々木材から作られます。構成されている繊維の長さは短い(短繊維)のです。従って繊維同士の絡みが少なく、この繊維が抜け落ちます。このゴミの多くは紙の端面(周囲)から発生します。端面からの発塵を抑えるために、各メーカーが様々な工夫をしています。
図2.防塵紙について
周囲に熱を加え裁断(溶断)するとか、長繊維を混ぜるなどです。ただし、これらは紙を破ると、その繊維が飛び出しゴミになります(図2.参照)。破る、カッターやハサミで切る、穴をあけることでも発塵します。クリーンルーム内でそのような作業、行為をしないよう、刃物類や穴あけパンチなどの持ち込みを禁止する標準やルールを...